小売り分析会社エディテッド(Edited)の調査によると、2017年の上半期、高級ハンドバッグの定価販売は22%増加。その一方、洋服の定価販売は34.5%減少した。識者によると、こうした動きは、ミレニアル世代の興味がアクセサリーにシフトしているのは、ファストファッションの流行が続いている結果だという。
ラグジュアリー商品のショッピングスペースではいま、ミレニアル世代が洋服より最新の高級ブランドバッグに熱い視線を送っている。
服よりアクセサリー
小売り(リテール)分析会社エディテッド(Edited)が、5000以上のブランドを扱う米国の大手リテールサイト30を対象に行った調査によると、2017年の上半期、高級ハンドバッグの定価販売は22%増加している。スカーフと帽子の販売もそれぞれ20%と83%ずつ増加したという。一方で、洋服の定価販売は34.5%減少した。eコマースサイト「ステイプル・デザイン(Staple Design)」の創設者であるジェフ・ステイプル氏は、ミレニアル世代の興味がアクセサリーにシフトしているのは、ファストファッションの流行が続いている結果だと述べる。
「ユニクロやZARAのような世界的ブランドは、ファッションを綿棒やコピー用紙のような日用品にした。首から下、足首まで、身につけるものはすべて一般的なものでいい。ブランド名が付いている必要はない。自分が買った品がランウェイに登場したセリーヌ(Céline)の服であろうと、その数日後にザラの店に並んだ模倣品であろうと関係ない。パッと見ただけで区別がつくわけはないのだから」とステイプル氏は言う。
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リテールブランドが高級品を真似た商品を作り続けるなかで、ミレニアル世代の消費者は、同じようなスタイルが安く手に入るときに、デザイナーによるブラウスに数百ドル払う必要性を感じなくなってしまった。その一方で彼らは、カジュアルなファストファッションと厳選された贅沢品を組み合わせて、自分自身のスタイルを作り出している。このときによく使われるのがアクセサリー類だ。
より良い価値の象徴
エディテッドのリテール部門担当シニア・アナリスト、ケイティー・スミス氏は、調査報告のなかでこう書いている、「低価格で、トレンドをすぐに採り入れられるファストファッションは、常に違う洋服を着ていたいというミレニアル世代の願いをかなえた。だがそれは、この世代がより洗練された品に関心がないということではない。ここで、ラグジュアリーなアクセサリー類が重要な役割を果たす。ミレニアル世代にとってこうしたアイテムは、より良い価値を象徴している。なぜならそれらは、ブランドやライフスタイルに結びつく方法でありながら、さまざまな見た目や異なるスタイルを通じて身につけられるからだ」。
数ある高級ブランド品のうち、ミレニアル世代がもっとも多く購入しているのはグッチ(Gucci)のハンドバッグで、2017年上半期には595%という途方もない伸びを記録した。エディテッドの報告によると、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、ヴァレンティノ(Valentino)、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce and Gabbana)も人気ブランドだという。ミレニアル世代がこうしたアイテムに費やすお金も増えている。ハンドバッグの定価販売で使った額は、2016年には1414ドルだったのに対し、2017年は1465ドルになった。同時期に、割引のない販売は22%増加した。
ハイ・スノバイエティ(Highsnobiety)の編集責任者ジアン・デ・レオン氏は、高級アクセサリーは、ミレニアル世代やZ世代の消費者が、仲間の面前でひけらかすことなくステータスを示す方法として、ラグジュアリー市場に参加する入り口になると語る。
デ・レオン氏は以前「グロッシー(Glossy)」とのインタビューで次のように話していた。「こうしたブランドが特に人気を集めている理由は、彼らがたくさんのアクセサリーを売っていることにある。王国内にある品のほんの一部を販売し、エントリーレベルの何かを入手させる。それによってブランドに目を向けさせ、関係を築いていくのだ」。
お金をかけずに目立つ
エディテッドの調査報告は、リテール内でのより大きなサイクルを指し示していると、ステイプル氏は言う。ラグジュアリーな衣料品が大胆かつ派手なブランディングから離れていくなかで、高級衣料品の魅力も減ってきている。とりわけソーシャルメディアの時代においては、高級ドレス姿のファッションを共有してもアピール力は弱い、とステイプル氏は指摘する。見た目が同じようなスタイルを、フォーエバー21(Forever 21)でもっと安い価格で実現できるのだから。
「ラグ・アンド・ボーン(Rag and Bone)やジェームス・パース(James Perse)のようなブランドが絶頂だった頃は、シンプルさがテーマになっていた。それから、名前のない、ノーブランドの、一般的なものがクールとされる時代があった。いまは、もっとオシャレで目立つものを欲しがる時代がやってきている。ほんのちょっと見せびらかしたい気持ちはあるが、それでも予算は意識している。だから、どこでお金を使うかをよく考えている」。
Bethany Biron(原文 / 訳:ガリレオ)