収益多様化を超えた、日本のパブリッシャーの課題とは?:「DPS 2020 KYOTO」チャレンジボードより

日本のパブリッシャーにおいて、マネタイズの多様化は進んでいるようだ。しかし、そのバランスの最適解は、まだ見つかっていない。

国内有数のパブリッシャーのエグゼクティブが参加した「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2020 KYOTO」が、2月12・13日に京都で開催された。5回目となる今回は、「OMO時代のメディアブランディング」をテーマに議論が繰り広げられた。本イベントにおけるインタラクティブなコンテンツのひとつ「The Digiday Challenge Board」では、パブリッシャーが現在抱えている課題を参加者全員にポストイットへ記入してもらい、ボードに添付して、共有してもらった。

本記事では、セッション後に実施した個別取材で語ってもらった、それぞれが抱える課題の背景を紹介する。なお、読みやすさを重視し、少し編集を加えている。

B2BとB2Cの収益バランス

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コンテンツに対するコストのかけ方と運用型広告で得られる収益とのバランスの取り方

「B2B収益のメインである広告だけではなく、ユーザーファースト、コンテンツファーストの取り組みも模索している。たとえば動画コンテンツやサブスクリプションなどの新たなプロダクト開発に注力しており、PVに頼らないマネタイズの確立を目指している。そのなかで、コストと収益のバランスをいかにとっていくかが課題であり、求められていると考えている」(パブリッシャー 経営層・役員クラス)

新たなマネタイズ手法の模索

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紙のコンテンツを紙以外の様々な方法でいかにマネタイズしていくか(広告以外で)

「広告掲載をもともと取り入れていないため、Web動画、EC、リアル店舗とのリレーションなど紙媒体以外でのコンテンツをいかに増やしていくかが課題である。読者とのエンゲージメントをどのように構築し、マネタイズを実現していくか、現在模索している段階だ」(パブリッシャー 部長クラス)

コンテンツの内製化でライターのインフルエンサー化を狙う

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コンテンツフォーマットの多様化とリソースの配分

「従来より実施している紙面での定期購読に加えて、デジタルを通じて読者にどのような付加価値を提供できるのか、日々試行錯誤している。たとえばライターは外注を一切利用せず、すべて採用をかけており、コンテンツの内製化を徹底している。さらにライター自身がインフルエンサーになってもらえるように、記事カテゴリーごとに知見の深いライターをアサインしている。そうすることでライター自身にファンが定着してくれることを狙っており、そのなかでどのように最適なリソースを分配していけばいいのかが課題である」(パブリッシャー 部長クラス)

コンテンツの再定義

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有料会員モデルの拡大と広告ビジネスの両立

「PVによる収益モデルとサブスクリプションのバランスを取りつつ双方をいかに成長させて行くべきなのかという課題がある。双方の事業グロースにおいて良いコンテンツは必須ではあるが、そもそも良いコンテンツの定義とはなんなのか、コンテンツのあり方を再度見直している。今後はファーストパーティデータを活用した、新たな取り組みにもチャレンジして行きたいが、データを戦略に生かす難しさも感じている」(パブリッシャー 部長クラス)

データ戦略に適した人材の欠如

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1st Party Dataの精度

「組織として、コンテンツ制作サイドとストラテジー策定サイドのあいだに距離があることが、まず課題である。正しい戦略のもとにコンテンツ制作を行うためにもファーストパーティデータは必須であり、正確なユーザー像を把握するためにもデータの精度が特に重要になる。そのため、データを保有していることと同時に、精度は欠かせない。しかし、実務のなかでデータを戦略に活かせる人材が足りていないことは、組織的な課題である」(パブリッシャー 課長・マネージャークラス)

読者とのつながりの深化

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読者とどのようにつながりを持つか?

「読者とのつながりは常に考慮しており、エンゲージメントを深めつつもどういったコンテンツ、タッチポイントを新たに構築するべきなのか、読者との関係性の深化のためにできることを日々模索しており、それ自体が課題であると同時にチャレンジでもある」(パブリッシャー 部長クラス)

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その他の意見として、「良いプロダクト、良いコンテンツを制作するのは人であり、人材に求めるスキルの定義化と、その組織の在り方を課題に感じている」と語ったパブリッシャーも存在した。

なお、DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2020 KYOTOのラップアップ記事も公開している。そちらも合わせてご一読いただきたい。

Written by 吉田 圭二