「完全に凍りついている」:コロナショックで厳しくなる、 D2C 企業の資金調達

D2C(消費者ダイレクト販売)企業たちは2020年に入り、ベンチャーキャピタルからの資金調達に、すでに苦しんでいた状態だった。テック企業のような価値をD2C企業が見出されていた時代は、もう終わったように思われる。高い価値を付けられていたキャスパー(Casper)は、そのプライベートでの価値の半分以下で株式公開となった。アウトドア・ボイシス(Outdoor Voices)は、続く資金調達ラウンドにおいて価値を半分以下に減らしている。

これらすべてが、新型コロナウイルスの感染拡大より前の話だ。

消費者向きのスタートアップが資金調達をする能力に対して、コロナウイルスがどれほど大きな影響を与えるか、投資家たちのあいだでは意見が分かれている。今後数カ月に投資を行う投資家たちの意識は減るだろうという意見もあるが、判断するには時期尚早だという投資家がほとんどだ。しかし、トラベルのような一部のカテゴリーは、ほかよりも比較的大きく悪影響を受けるかもしれない。とはいえ、ほぼすべてが2020年の成長予測を再検討するように企業たちへ促している。また、最悪のシナリオに備えてコストを絞ることについて考えはじめるべきだ、と。

スローダウンを引き起こしているのが感染拡大自体なのか、それともそれを見ている観衆によるものなのかを見極めるのは難しいが、ある種、すでに起きている流れを加速させている。

「D2C企業への弱気な視線」

コロナウイルスが勃発する前に、業界関係者たちは米DIGIDAYの兄弟サイト、モダンリテール(Modern Retail)の取材に対して、2020年には「VC(ベンチャーキャピタル)の冷え込み」が起きるだろうと語っていた。ワービーパーカー(Warby Parker)やキャスパーのようなD2Cスタートアップの第一世代のなかには、リテーラーではなくテック企業に与えられるようなレベルの収益の何倍にもなる企業価値を受けていた。そして、投資家たちに有意義な利益を与えるのに十分な価値を実現することに苦しんでいる。

コロナウイルスによって引き起こされる景気悪化は、これらのD2Cスタートアップにとって、企業価値を高めるのに必要な資金を獲得するのをさらに困難にする可能性がある。すでに資金調達で何千万ドルも調達した企業は特にだ。

「コンシューマー系やD2Cチャンネルのスタートアップに対して、(ほかの投資家たちからの)冷ややかで弱気な視線を昨秋から感じている。いまでは完璧に凍りついているようだ」と、VCファンドとアクセレレーター・エージェンシーのハイブリッドであるブリッシュ(Bullish)のマネージングパートナー、マイク・ドゥーダ氏は語る。ブリッシュはハリーズ(Harry’s)やペロトン(Peloton)に投資している。彼の体験から、ここ数年においては、ブリッシュがパートナーを組んでいる企業のなかには、コンシューマー系のスタートアップに完全にフォーカスしないところでは、SaaSやB2Bへの投資を好んでいるようだ。

消費者の新しい購買習慣にどうやって適応するか、見極めることができればスタートアップのなかには、そこから利益を得るところも出てくるかもしれない。たとえば、JD.comは2003年にSARSが発生したときに、当時の家電小売業者がオンライン販売を拡大するきっかけとなって誕生した。

コロナの直接影響はない

モダンリテールが取材した3つのVCのうち、彼らが支援するビジネスの種類に、ただちにコロナウイルスが影響を与えたと回答したところはひとつもなかった。また、ここ数日で多くのVCが彼らのポートフォリオ企業に、連絡を送っている。リモートワークのポリシーやビジネスが潜在的に負う影響について、従業員へいかにコミュニケーションするかについてだ。

オールバーズ(Allbirds)、ドールズ・キル(Dolls Kill)、エヴァーレーン(Everlane)といった企業に投資しているマヴェロン(Maveron)のゼネラル・パートナーであるジェイソン・ストッファー氏は、4日前に、ポートフォリオ企業たちのCEOたちに「冷静かつ自信がある態度」を従業員たちに対して示すように助言の連絡を行ったという。

「マヴェロンの22年の歴史においては、ほかにふたつのマクロな災難が存在したと思う。飛行機がワールドトレードセンターに突撃した2001年、そして金融市場がメルトダウンを起こした2008年だ。どちらにおいても、短期的には個人的に、感情的に、ビジネス的に影響は大きかった。しかし、それが薄れたとき、パニックを起こすことは、どちらにおいても誤った反応だった」。

同じ連絡において、マヴェロンは複数のシナリオを想定して、ビジネスに対するリスクとチャンスの評価をするようにCEOに助言している。不景気が起きた場合、もしくは人々が病気にかかることを避けるために自宅にこもった場合、といった具合だ。

D2Cだからこその可能性

コンシューマー系のスタートアップが今後数カ月のあいだ、資金調達に問題を抱えるかどうか尋ねたところ、「コンシューマー系の企業はカテゴリー別に見て、それぞれのカテゴリーが景気悪化したときに何が起きるかを分析する必要がある。ランジェリーやおもちゃは、不景気でも成績は良い」と、彼は語った。

レアラー・ヒプー(Lerer Hippeau)のプリンシパルであるアンドレア・ヒプー氏は、人々が自宅に閉じこもり、実店舗ではなくオンラインで買い物をすることでD2C企業は利益を得るかもしれないと考えている。初期の、そしてシード段階の投資家として、彼女のポートフォリオ企業はコロナウイルス関連の株価下落から「ある程度守られている」と語った。リアラー・ヒプーは最近、ランジェリーブランドのカップ(Cuup)とピアススタジオのスタッズ(Studs)に投資している。

「彼らのほとんどは少なくとも買収とIPOまで5年はかかるだろう。不景気に突入したとしたら、それはまた別の問題として対処しなくてはいけない」と、ヒプー氏は言う。

「必要なければ待つべき」

コロナウイルスの勃発から、資金調達が目立って難しくなっているような企業はマヴェロンのポートフォリオのなかにはないと、ストッファー氏は語る。しかし、ここ数週間において、ポートフォリオのうちのひとつの企業が終わらせたラウンドから退いた小規模な投資家は存在しており、そういったことが今後増えるかもしれない、という。不景気が今後起きると投資家たちが感じているとすると、その仮説が正しいかどうかは関係なく、彼らの投資の態度を厳しくしてしまうことが課題だ。

「もし(人々が)マーケットが激しく変動すると感じていれば、すぐに起きる反応は動かなくなることだ。資金調達をする必要がなければ、企業は待つべきだと私は思う」と、ストッファー氏は言う。

Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)