このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。今回は、昨年データの齟齬が指摘されたFacebookの動画広告にかみつく。
このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。
「Facebook広告は時間の無駄だ」ーForrester, 2013
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「人々は(そう、ミレニアル世代ですら)商品を買う判断を下すときにブランドのソーシャルメディアページよりもTVスポットや雑誌をより重視する傾向にある」ーGallup, 2014
「消費者の有意義な興味をオンラインで生み出したブランドは数少ない。それよりもソーシャルメディアはブランドの意味を減少させたように思える」ーHarvard Business Review, 2016
これはまさに狂気だ!
ここ10年間の間、多くのブランドがソーシャルメディア上でブランデッドコンテンツを展開したが、その99%は(もしかしたらもっと多いかもしれない)5歳児が金属バットをもってバッティングセンターに立ってホームランだけを狙うようなものだった。
これにはふたつの理由がある。ひとつはコンテンツの質が悪すぎること。もうひとつはプラットフォームの質が悪いこと。
何十億円というお金がサイバースペースに投げ込まれた結果、まったく購買に結びついていない。それでもまた、同じ役に立たない戦略をブランドは繰り返し、プロダクションの深みが増しているわけでもない。それどころか、毎年デジタルに費やされるお金は増える一方だ。これはまさに狂気としか言いようがない! もちろん、「デジタルマーケティングの神様」でも名乗るような輩の話を少しでも聞いたら、まったく逆の話をされるんだろうけれど。
唯一事実を知ってる者
それでも、だ。果たして「いいね!」や「シェア」が売上の急増につながったのか? 急増とはいかなくても、多少は増加しているのか?
独立した信頼できるリサーチ結果はどこで見られるんだ? あ、ないの? そうですか。
Facebook広告が機能していないことを誰よりも分かっているのは誰か、正解はFacebook自体だ! 当然の話だ。18億人のデータをすべてもっており、ブランド、消費者、二者間のやり取りすべてを知っているのがFacebookなんだから。まったく、嘘だらけの広告業界でもとびっきりの嘘だ。と、こんな話をしてたら「陰謀論者」だと思われるかもしれないな。
データに踊らされる現在
インターネットが現れる前、我々はクライアントに広告をプレゼンするときはもちろん、「私たちのケーススタディによると、この広告は売上を伸ばすと考えられます」と言ったものだ。じゃあ、本当に売上が伸びるって知ってたかというと、もちろん知らなかったさ。ただ売上が伸びることはないと知ってたわけでもないんだ。そして、我々の狙いというのは、少なくともある程度は正直なものだった。
けれどいまじゃ、マーク・ザッカーバーグに金をまず渡してしまう。というのもFacebookがすぐにフィードバックデータをくれるからだ。そのすぐ出た数字を上司に見せ、その上司がまた上司に見せて、だから誰もクビにならなくて、だから皆の子どもが大学に進学できて、と続くわけだ。
だが、こういったビデオ再生回数や、エンゲージメントの数値は一体何なんだ? Facebookはずっとそれに関して不透明で、どのような手法、アルゴリズムなのかシェアすることはない。そのためこういった数値に関して客観的なレポート、もしくは規制を作ることが不可能になっている。
2016年の9月、Fcaebookが第1〜3四半期の利益が2015年の36.9億ドル(約4200億円)から60億ドル(約6800億円)に増加していると発表するのと時期を同じくして、大事実もレポートされた。ビデオ再生回数が60%から80%も実際よりも多くカウントされていたことが分かったのだ(オーストラリアでは94%も)。

ニールセンの「再計算」の前後でのFacebookオーストラリアのビデオ・ストリーミング回数の変化。 Image via Nielsen, via The Ad Contrarian.
マーケティングの本質って?
Facebookはこの「発見」を公開するまでに1カ月待った。お金を集めるだけ集めてから、ようやく第三者団体による数値の確認を認めるようになったのだ。しかし、ニールセンのスタッフはFacebookが抱えるデータの天才たちに敵わないだろう。そして、お願いだから、いまから言うことを自分自身に何度も言い聞かせて欲しい(上司にじゃない)。こんな歪められた再生「回数」が売上をちょっとでも伸ばしたと証明した人は誰もいないんだ。
マーケティングについては何も分かっていない私だが、マーケティングのゴールは(2017年になっても)製品・サービスの売上を伸ばすこと……だったような? 違う?
とすると、Facebookやほかのデジタルテクノロジーが広告のクリエイティビティを殺してしまっただけじゃなくて、広告としての効果まで殺してしまったわけだ。
Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)