D2Cスタートアップの創業者たちは、Twitterのスレッドに夢中だ。マーケティングノウハウからデザイン、企業家がすべきこと・学ぶべきことなどその内容は多様だが、いわゆる「教訓」的ツイートに満ちている。なぜ彼らは「ツイ廃」のようにTwitterに入れ込んでいるのか。当事者たちにその意図や思いを聞いてみよう。
D2Cスタートアップにとって、Twitterはブランディングのレッスン場だ。
Twitterでは新進のeコマース起業家にとって重要な教訓が、15~30の一連のツイートで説明されている。たとえば、任天堂、オートリー(Oatly)、新進の料理研究家、ウェブサイト上の「今すぐ購入」ボタンの場所、靴下スタートアップが送る電子メールの量、トイレットペーパー市場といったスレッドがそうだ。
D2CスタートアップはTwitterのスレッドに取りつかれている。少なくとも彼らが投稿したスレッドはしばしば、2PMやリーン・ラクス(Lean Luxe)などのスタートアップ業界専門ニュースレターで必読として取り上げられ、クラブハウス(Clubhouse)やSlack(スラック)といったコミュニケーションツールやバーチャルイベントで話題になっている。
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つながりを見つけるため
8月だけでも、飲料ブランド、リセス(Recess)のサイトデザインを批評するスレッド、D2Cスタートアップが高級ブランドとしてマーケティングすべき理由を説くスレッド、J.クルー(J. Crew)が(当然)若いデジタルネイティブスタートアップから学ぶべきことを説明するスレッドなどが投稿されている。
1/ Fine-tuning site conversion is an art, not a science
I spent years figuring out how to improve CR while balancing other biz priorities
This thread should give you insight into how I think about CR so you can apply to your own biz
Let's look at @takearecess
plz dnt kill me pic.twitter.com/UTQFTqfn5U— Tayler Carraway (@roost91) August 5, 2020
1/ サイトコンバージョンの微調整は芸術であり、科学ではない
私は何年もかけて、ビジネス上の優先事項のバランスを取りながら、CRを改善する方法を見つけ出した
このスレッドを読めば、私がCRについてどう考えているかがわかり、あなた自身のビジネスに応用できるはずだ
詳細は@takearecessにて
お手柔らかに
Twitterを多用しているのはD2Cスタートアップだけではないが、ディスラプション(disruption:創造的破壊)を追い求める人々の多くが、ディスラプションについてツイートすることに途方もない時間を投じているように見える。しかし、これらのスレッドはD2Cスタートアップとそこにいる人々が得意なこと(マーケティング)をよく表し、一貫して苦しんでいること(ユニットエコノミクスや事業の収益性)をうまく隠している。D2Cのソートリーダーたちのスレッドは、最高の場合だと人々の助けになる。同じ分野のeコマースの話題に関心を持つ仲間、よく似たビジネス上の課題に直面している仲間を見つけることができるためだ。一方、最悪の場合はeコマースビジネスの成功とは何かを過度に単純化している。
ショッピファイ(Shopify)のシニアコンテンツマーケターで、「D2C Twitterの市長」を自称するクリステン・ラフランス氏は「D2Cの『大物』の多くがこの媒体で情報を共有していることに気付いた」と話す。「業界が即座の成果につながるコンテンツに興奮していることは明らかだった。すぐに実行可能な助言を提供しながら、深いところまで踏み込むことができるコンテンツだ」。ラフランス氏は2019年、キャスパー(Casper)やボンバス(Bombas)といったスタートアップの電子メール、SMSマーケティング戦略を批評するスレッドの投稿を開始した。「私はそれらのスレッドを通じて数多くのつながりを手に入れた。人々がリツイートしたり、友人をタグ付けしたり、ほかの人を会話に誘ってくれたおかげだ」。
Yesterday, a brand I love and admire really let me down on a channel you REALLY don’t want to let a customer down on: SMS. 💔
Let’s get right into it.
Check out what went down between Casper and I on SMS (I know, Android green bubbles, just…✋ OKAY)
THREAD TIME 👇 pic.twitter.com/mJ8azNyiPp
— Kristen LaFrance (@kdlafrance) December 11, 2019
昨日、心から敬愛するブランドが原因で、私はあるチャネルにうんざりした。顧客をうんざりさせるようなことがあってはいけないチャネル、つまり、SMSだ。
この出来事について詳しく説明しよう。
SMSでキャスパーと私のあいだに何があったのかをチェックしてほしい(Androidの緑の吹き出しは気にしないでほしい)
では、スレッドタイム
ポジションに応じた「教訓」
消費財スタートアップの共同創業を控えるケビン・リー氏は、調査を進めるうちにツイートの回数が増えていったと述べている。リー氏はスタートアップ立ち上げの準備中、ほかの企業がどのようにマーケティングチームを構築しているかを知りたいと思った。そして、スウェーデンのビーガン食品ブランドであるオートリー(Oatly)が長年、どのように社内クリエイティブチームの煩雑な手続きを減らそうと取り組んできたかを学び、マーケターがオートリーの戦略から学ぶべきことを28のツイートにまとめた。これらのツイートは1400回リツイートされた。
「私の目的は、面白い情報を紹介し、人々に何らかのインスピレーションを与えることだ」。
1/ Oatly doesn't think like the rest. They've been around for 20 years as a Swedish company fighting for attention. Last week, the oat milk company raised $200mm at a $2bn valuation. This is a lesson on creativity and how @oatly turns disadvantages into massive opportunities.
— Kevin Lee (@kevinleeme) July 24, 2020
1/ オートリーの考え方はひと味違う。彼らはスウェーデンのオーツミルクメーカーで、約20年間、人々の注目を集めようと戦ってきた。そして、7月、評価額20億ドルの企業として2億ドルを調達した。これは創造性に関する教訓、@oatlyがどのように不利な状況を大きなチャンスに変えたかという教訓だ。
こうしたスレッドには、D2Cスタートアップを成功させるためにもっとも重要なことは何かという教訓、つまりツイート投稿者のポジションに偏った教訓が含まれている。コンテンツマーケターであるラフランス氏は、D2Cスタートアップのマーケティング戦略に注目することが多い。グラフィックデザイナーであれば、D2Cスタートアップのウェブデザインを批評する可能性が高い。
懸念もあるが知識は共有したい
しかし、こうしたスレッドには多くの場合、顧客獲得コストや解約率など、ビジネスの非公開だが重大な部分は含まれていない。シェービング用品スタートアップ、サプライ(Supply)の創業者パトリック・コドゥ氏は、(当然のことながら)Twitterで、「ツイートでサプライチェーン最適化について語るより『ブランド』について語る方がはるかに容易だ(しかも、関心を引くことができる)」と述べている。また、こうしたD2Cスタートアップの多くはまだ若く利益を出していないため、新しい市場に進出した、市場シェアがライバルを超えたと、いったツイートから得られる教訓はそれほど多くない。
むしろ、誰かが個人的なつながりのある企業を絶賛しているように見えるスレッドなど、一部のスレッドは利己的に感じられるとリー氏も認めている。「何らかの結論を導き出し、それを製品の先行指標にしたいという意図を感じる」。
一方、リー氏は仲間の起業家と話しながら、起業家たちはあまりに自己批判的で、しばしば自身の専門知識をあまり共有しない方向に舵を切るとも感じている。
「我々は自分が専門家であることを忘れている。専門家として知識を共有しないことは怠慢だ」とリー氏は話す。「専門知識というのはおそらく、その人が(特定の)企業で働いていたという事実ではなく、その人が良い語り手だという事実を表している」。
[原文:Disruption, served one thread at a time: The weird world of DTC thoughtleader Twitter (1/23)]
ANNA HENSEL(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島 翔平)