米ローカルニュースネットワークのニュース12(News 12)は、新規オーディエンス開拓のため、2020年初めにGoogle ニュースイニシアティブ(Google News Initiative:以下GNI)に参加した。その提携による資金投資を通じて、同社は新ツールを開発したという。
パンデミック中、メディア企業の広告事業に負担が掛かったことにより、パブリッシャーはこれまで、コンテンツの提供やターゲット層に合う顧客の把握など、あらゆることへの取り組みで創造力を発揮せざるを得なかった。
ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネティカット州の隣接3州でローカルニュースを報道するニュースネットワークのニュース12(News 12)は、まさにそんな状態だった。親会社アルティスUSA(Altice USA)でデジタルニュース担当バイスプレジデントを務めるクリス・ヴァッカロ氏によると、それが理由で、ニュース12は、新しいソリューションを試したり開発したりしてオーディエンス(および、それに伴う広告売上)を増やそうと、2020年初めにGoogle ニュースイニシアティブ(Google News Initiative:以下GNI)に参加したという。ニュース12の従来の月間オーディエンス数は500万人で、主に35~55歳の女性が占めるという。
機械学習を利用して、地元のメディア企業が制作したビデオクリップすべて(通常は1日85~100本)をコンテキストにあてはめる新ツールの開発資金は、GNIが提供した。このツールは、コンテンツにエンターテインメントやスポーツ、犯罪、新型コロナウイルスといったラベル付けをおこなう。ニュース12の最初の使用事例では、ライフスタイルのラベルが付けられた。同じタグが付いているコンテンツはすべてフィルタリングされ、ひとつの専用ランディングページやアプリなどにまとめることができる。GoogleとアルティスUSAは、このプロジェクトに充てた金額を明らかにしていないが、Googleにとってこれは、資金投資を通じてジャーナリズムやニュース業界を支援する取り組みの一環だ。
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「スパーク・ニュース12」の可能性
ニュース12によるツールの初利用は、ミレニアル世代の視聴拡大を目指すウェブサイト上のライフスタイルバーティカル「スパーク・ニュース12(Spark News 12)」として、5月12日に始まった。
メディアバイイング、プランニングを専門とするエージェンシー、ロッカード&ウェクスラー・ダイレクト(Lockard & Wechsler Direct)でエグゼクティブバイスプレジデント兼顧客サービスおよび戦略的イニシアチブ担当ディレクターを務めるベンジャミン・スパイト氏によると、ライフスタイルコンテンツは、18~34歳のオーディエンスへの訴求力が高い傾向があるという。「ローカルニュースは、一般的な全国ニュースと同様、こうした層のオーディエンス向きではないため、彼ら向けに必要な穴を埋めているように見えるのは確かだ」と同氏は語る。
ライフスタイルコンテンツのカテゴリーは「十分に幅広い」ため、ニュース12は、既存のコンテンツのかなりの部分を第2のバーティカルに再配置し、ディスプレイ広告やプログラマティック広告、直販、そして特に、プレロール広告の広告プレースメントの機会を増やすことができる。
「これは、売上拡大の直接的な原動力になる」と、Googleでニュース向けのグローバルパートナーシップソリューションを担当するディレクターのベン・モニー氏は話す。「これ自体はオーディエンスの開拓ではない。インベントリー(在庫)を増やし、広告対象となる層のオーディエンスとのつながりを深めるのが目標になる」。
「放置可能な」アドオン
このプロジェクトが始まったのは2020年で、パンデミック前にヴァッカロ氏からGoogleに始めてアイデアが提案された、とモニー氏は語る。新しいタグ付けツールは、少数の正社員と契約スタッフによってニュース12の社内で開発され、全員が、ほかの業務と並行してこの1年間にわたってこの構想に取り組んだという。
開発され、確立されると、このツールはニュース12のCMSにとって「セットアップ後は放置可能な」アドオンになった、とヴァッカロ氏はいう。「カテゴリーのタグをセットアップして、前面に出したいコンテンツのタイプを定義するには、私と製品マネージャーとの会話が必要だった」と同氏は語る。
スパーク・ニュース12は、当初は主にソーシャルメディアで宣伝される、とヴァッカロ氏はいう。オーディエンスに関する当初目標と売上目標を明らかにするのを避けたが、中断してほかのカテゴリーに移行する可能性がある長期プロジェクトになるという。
他社のCMSにプラグイン可
「これによって、ニュース12がジャーナリズムで新しいオーディエンスにリーチし、そうしたユーザーに慣れ親しんでもらえるようにしたい」とモニー氏は語る。
この提携から生まれた技術はいずれ、ニュース12以外の、ほかの報道機関やパブリッシャーが独自のCMSにプラグインして、さまざまな方法で利用できるようになる、とGoogleのモニー氏は話す。特に、新しい収益源を構築しているローカルメディアパブリッシャーを支援するのが、目標だという。
KAYLEIGH BARBER(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)