「デジタルは万能薬ではない」: 米・家具量販店が陥った、2つのありがちな過ち

かつてピア1(Pier 1)は、家庭用のユニークな隠れた商品やアクセントとなる商品を探し求めるのに最適な場所だった。そうした要素を強みとしていた同社も近年は苦戦しており、ニューヨークの株式市場への上場廃止の危機に直面している。

原因はeBayやAmazon、エッツィー(Etsy)といった大手マーケットプレイスとの競争、そして企業内で十分な改革が行われていない点にある。ピア1が陥っている状況は典型的なもので、大手のマーケットプレイスに力負けしているなかで、カスタマー体験を向上させたり、自社ブランドの商品を開発したり、ニッチな分野を狙ったりといった改善を行ってきた、ほかの小売業者に対抗できていないのだ。

以前に、ピア1のコンサルティング業務も担当した、デジタルマーケティングコンサルタントのジャッジ・グラハム氏は、次のように指摘する。「ひと昔前まで、ピア1といえばユニークで魅力的な商品が溢れている場所だった。だが、Amazonやエッツィーの登場後は、必要がなくなってしまった。一方でターゲット(Target)は改革によって、ウォルマート(Walmart)はよりニッチになることで、ずっと前に苦境を切り抜けることに成功している」。

ウォルマートやターゲットは、eコマースの枠組みを超えて提供する商品を進化させてきた。これら従来の大手小売企業は、格安商品取り揃えるという枠組みから進化している。たとえば、ボノボス(Bonobos)のようなデジタルネイティブなブランドの買収や、ターゲットのヘイデイ(Heyday)、ユニバーサルスレッド(Universal Thread)といった自社ブランドの立ち上げなども実施している。小売業にAmazonが進出してきたにもかかわらず、両社は見事な成長を遂げている。

それと、対照的なのがピア1だ。12月に発表された第3四半期の業績報告を見ると、店舗あたりの売上は10.5%減少しており、粗利益率の減少は31.6%となっている。これは前年比で6%の減少だ。同社は巻き返しのための計画を模索している。

カスタマーを把握できてない

ピア1からの回答は得られなかったものの、設立から57年を迎える同社の現状について、業界の観測筋は、次のように分析している。ピア1の苦境の原因は、デジタルストアから収益を得られていないというだけではなく、コアカスタマーを把握できていないことにあるという。

同社が規制当局に提出した最新の報告書を見ると、商品の59%は中国から、17%はインドから、16%はベトナムからの輸入となっており、「手工芸品が大きな割合を占めている」とされている。

また同社は、1000店舗を展開しているが、その周囲にはディスカウント店が立ち並んでいる。これが同社の顧客基盤となりうる高収益のカスタマー層獲得のための実店舗戦略上の障害となっているのが現状だ。ピア1の店舗は小規模専門店ではなく、大規模小売店のモデルを追求している。だが、店舗の敷地面積は平均で930平米だ。同社の報告書の記載では、競合するのは専門小売店および「大規模ディスカウントショップ」となっている。グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は、同社がターゲットとなるカスタマーを絞りきれていないと指摘し、次のように語る。

「消費者がピア1の名前を知らず、そのために客足が伸びないというケースがある。たとえばピア1の店舗が多数存在する小規模のショッピングセンターに行く客は、ミドルクラスからハイエンドの家具を求めているわけではない。ほかにもTJマックス(TJ Maxx)や1ドルショップなどのディスカウントショップが立ち並ぶ通りにあったりする。ピア1が呼び込みたいのは、こうした場所に来るカスタマーではないはずだ」。

競合他社を絞り込みすぎていた

ピア1は昨年4月、収益増のための3カ年戦略計画に着手した。その柱となるのがターゲットとなる消費者グループの絞り込み、ブランドプロポジションの改善、品揃えの再考、デジタルチャネルを重視した新しいマーケティング戦略、在庫とサプライチェーンの効率化だ。同社はこれまで競合他社を絞り込みすぎて、逆に小売業界のより広範なトレンドに目を向けてこなかった。これはそうした競争上の認識を正した形だ。

ピア1のCEOを務めるアラスデア・ジェイムズ氏は4月に行われた株主総会で次のように述べている。「これまで当社は誤った競争に目を向けていた。当社はウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)やポタリー・バーン(Pottery Barn)、クレイト・アンド・バレル(Crate & Barrel)のみが競合他社と呼べた時代から存在しており、こうした企業を競争相手と見ていた。だが、いまの競争相手となるのはアットホームズ(@homes)やホームグッズ(HomeGoods)、ホームセンス(HomeSense)、ターゲットといった新規参入企業だ」。

これについて、証券金融会社レイモンド・ジェームス(Raymond James)のアナリストであるバド・バガチ氏、ボビー・グリフィン氏、キャサリン・ウェスト氏は、最近の報告書で、実現するのが遅すぎたと指摘し、次のように述べている。

「これが30年間業界で知られてきた同社が、最近見せた進展だ。たとえばオケージョナルチェアなど、ほかの商品よりも価格が高くなりすぎている物もあるが、ピア1は一般的に認識されている通り、価格を強みとしている企業だ」。

このような難局にあって、同社はeコマースのストアを立ち上げた。そしてターゲットやウォルマートをはじめとする大手小売店と同様に、配達だけではなく「オンラインで購入し、店舗で受け取る」オプションも導入している。だが、フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリストのサチャリタ・コダリ氏は、コアカスタマーへの理解を深めない限りは、同社のこの取り組みも遅きに失しており、効果は限定的だと分析し、次のように述べている。

「デジタルは万能薬ではなく、それだけで行き詰まった状況を打開できるわけではない。競争力のある品揃えを用意できていないことのほうが大きな問題だろう」。

グラハム氏は、ピア1が競合他社と差別化をはかるには、品揃えで勝負するしかないと指摘し、次のように語った。

「ピア1のような企業が生き残るにはニッチになるしかない。勝負する分野を決めて、狭い範囲で奥深い品揃えを実現し、室内装飾のある分野で1番と呼べる企業にならない限り、消費者は他社へと移っていくだろう」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)