「ブランドの未来」を丸2日考えて、学び得た5つのこと:DBL2019まとめ

「ブランドの未来は、きっと明るい」。そう信じれた2日間だった。

DIGIDAY[日本版]は7月2日・3日、京都ブライトンホテルにて「DIGIDAY BRAND LEADERS」を開催。このイベントでは、国内外の著名ブランドマーケターとメディアブランドのリーダーたちが集い、合宿形式でお互いの課題・チャレンジを共有・議論しあった。参加者の総数は118名。その内訳は、ブランドサイド54名、メディアサイド19名、パートナーサイド45名となっている。

今回のテーマは、「ブランドがめざすべき未来」。インターネット広告費がいよいよ地上波テレビ広告費を追い抜くと言われている2019年、テレビ広告を主体としてきたブランドビジネスのあり方が大きく変わろうとしている。そんななか、参加者118名は2日間に渡って、それぞれが考える「ブランドがめざすべき未来」について、喧々諤々と話し合った。

毎回、DIGIDAYのイベントでは締めくくりに、「私たちが学んだ5つのこと(5things We’ve learned)」と題して、ラップアップを行っている。今回、我々が学んだことは、次の5つだ。

DBL_2019_5things

1. 生活者に向き合う

これまで、ブランドを展開するメーカーは、取引相手として直接対面する、流通や小売りの動向を意識して、ビジネスを行っていた。もちろん生活者の意識は重要な検討事項だったが、商流の先の先にある存在のため、二の次となっていたことは否めない。しかし、いまはデジタル時代である。組織と個人がインターネットを通じて、直接コンタクトを取れるようになったため、ブランドは積極的なユーザー理解が必要になった。

株式会社ヤッホーブルーイングの人気クラフトビールブランド「よなよなエール」では、一部の熱狂的なファンのインサイトを分析したと、同社のマーケティングディレクターの稲垣聡氏は、セッション「ファンが生まれるブランドとは何か?:その構築とマネジメント」で語る。その結果、小規模ブランドだからこそ形成しうる、「共感する」「仲間をつくる」というファンのベネフィットを発見。そこで、「超宴」という既存ファンが新規ファンを呼ぶ、リアルイベントを実施し、ファンベースを拡大してきたという。

インディードジャパン株式会社でマーケティングディレクターを務める水島剛氏は、セッション「体験起点のブランディング、インディードジャパンが目指すもの」に登壇。人気漫画「ONE PIECE」をモチーフにした、同社の「『麦わらの一味』の仲間募集」キャンペーンを例に、ユーザーの体験設計を軸にしたブランディングについて説明した。「いまの時代、プロダクトの利用意向や購入意向を上げるのは難しい。むしろ利用ハードルや購入ハードルをいかに下げるかという視点が重要だ」。

セッション「『ひとりのためを想い、全力を尽くす』:POLAが取り組む1 to 1コミュニケーション」では、株式会社ポーラの宣伝部部長を務める大城敦氏と同社宣伝部 コミュニケーション企画チーム コーポレートユニットリーダーの吉崎祐介氏が登壇。1929年の創業以来、「ひとりのためを想い、全力を尽くす」という精神のもと、消費者一人ひとりに向き合い続けてきたPOLA。その精神を色濃く反映させたオウンドメディア「WE/」における、1 to 1コミュニケーションの取り組みは、ユーザーエンゲージメントを究極に高めるだけでなく、社会貢献にまでつながっているという。

2. 打ち手を多角化する

かつてテレビ全盛期のころ、ブランドコミュニケーションといえば、テレビCMを打っておきさえすれば、ある意味こと足りた。しかし、デジタル化が進んだ現代において、生活者とのタッチポイントは多様化している。いまやテレビは、以前ほど万能ではない。そんななか、現代的なブランドに求められるのは、ユーザーのカスタマージャーニーに合わせて、打ち手を多角化していくことだ。

花王株式会社のファブリックケア事業部シニアマーケッターの野原聡氏は、セッション「ブランドの次の30年を担う存在、『アタックZERO』に込めた思い」で、新商品「アタックZERO」のマーケティングについて説明した。30年の歴史を持つ洗剤ブランド「アタック」において、革新的なイノベーションを導入した同製品のマーケティングは、テレビCMをはじめTwitter、OOH、インスタグラムなどを総動員した、圧倒的なものだったことは記憶に新しい。「コミュニケーションにも『革新』が必要だった。『なにかとんでもない洗剤が出たかも』ということを一気に認知させるクリエイティブ&メディアが必要だった」。

株式会社I-neは、植物成分由来の原料を配合した新興ヘアケアブランドのBOTANIST(ボタニスト)を、わずか4年足らずで、大手オフライン店舗で大型展開されるほどの人気ブランドに育て上げている。その決め手となったのが、2015年当時どこよりも早く実施した、インスタグラム(Instagram)とインフルエンサーを利用したマーケティングだと、同社の取締役・ブランディング本部本部長を務める今井新氏は、セッション「和製D2C「BOTANIST」が見つめる、ブランドの未来」で語った。いまやBOTANISTは、和製D2Cの代表格という文脈で語られることが多い。

3. 迅速に変化する

デジタル時代における社会情勢の変化は、まさに激流のごとくだ。さまざまな事柄がインターネットを通して、瞬時に全世界的へ広まり、そして忘れ去られていく。そんななか、ブランドビジネスを行っていく事業者も、常に状況に合わせて変化していくことが求められている。

いまや国内総DL数7100万を超え、米国でも展開されている「メルカリ」。2013年のローンチ当初は、あくまでフリマアプリとして、F1層をターゲットにしていた。しかし、ユーザーが拡大していく過程において、老若男女さまざまな世代にリーチしていくことが求められてきたという。そこで、同社執行役員CMOの村田雅行氏は、セッション「進化し続ける『メルカリ』、その経緯と行方」において、「サービス認知ではなく、『使い方』の理解促進に焦点を当てたコミュニケーションへシフトしてきた」と語った。そうした迅速な変化が、いまのメルカリの強さの一因となっている。

2017年にローンチした直後、70億円も調達した話題のフィンテックスタートアップ、FOLIO(フォリオ)。同社に昨年、CMOとしてジョインしたリュウ・シーチャウ氏は、セッション「元J&J 香港支社長が挑む、スタートアップのブランド構築」で、さまざまなマーケティングコミュニケーションを実施してきた結果、課題はプロダクトのみならず、スタートアップならではの混沌とした組織にあることに気づいたと語る。そこで、マーケティングという領域を超え、ステークホルダーを説き伏せ、組織改革に取り組んでいることを明かした。現在は、「Startup in Startup」と表現する、社内で選りすぐった少数精鋭のチームによるアジャイルな開発体制で、確実な成果を生み出しつつあるという。

4. コラボを促進する

社会のあらゆるところで分断化が進む一方、デジタルの世界では、少数の巨大なプラットフォームがさらに勢いを増している。そんななか、一事業者だけでは、どうにも解決できない課題が増えてきた。そこで、求められているのが、企業間のコラボレーションだ。かつての敵は今日の友なのである。

中川政七商店は、麻ものの製造業からSPAへ業態転換し、直近の10余年で急成長を遂げてきた。しかし、日本全体における工芸の生産額は、バブル期におけるピーク時の5400億円から1300億円まで減少している。「このままでは自社の、日本の、ものづくりがあぶない」と、セッション「創業300年の老舗メーカーが挑む、ビジョンファーストな経営とは?:中川政七商店のブランディング戦略」で、同社取締役/コミュニケーション本部 本部長の緒方恵氏は語る。そこで、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、自社だけでなく日本の工芸を背負うという覚悟のもと、業界全体のコラボレーションを進め、その底上げに尽力しているという。

また、セッション「デジタル動画メディアは、テレビに代わり得るか:BuzzFeed / VICEの取り組み」では、デジタル動画メディアのフロンティアとして、BuzzFeed Japan株式会社の代表取締役社長スコット・マッケンジー氏とVICE JAPAN GKのコマーシャルディレクターを務める佐藤ビンゴ氏が登壇。レガシーメディアとはひと味ちがう、ブランド企業の新しいコラボレーション相手としての存在感を示した。なにしろ彼らは、いまやTwitterやインスタグラム、YouTubeといった巨大プラットフォームの伴奏者として、確実な地位を築いている。

5. 根本を見つめ直す

ブランドパーパスは、すでにバズワードではない。ユーザーの共感を得る要素として、いよいよその重要性を高めている。いまや、プロダクトやサービスのメリットは、スペックのみでは語れないのだ。そのブランドを通して、なにを成し遂げたいのか? そうしたブランドの根幹を成す「意志」が求められている。

セッション「変わりゆくコーヒー業界 老舗の葛藤から学ぶブランディングの原点」で、UCC上島珈琲株式会社 マーケティング本部 常務取締役 マーケティング本部長の石谷桂子氏は、創業86年目を迎える老舗コーヒーブランドならではの葛藤について語った。「サードウェーブコーヒー(コーヒー 第3の波)」以降、変革してきたコーヒー業界のうねりのなかで、UCCは何に根ざしたブランドなのか、社員たちが見失っていたという。そこで石谷氏は、原点に立ち返り「レギュラーコーヒーといえば、UCC」というブランディング活動を発案。「WE♥COFFEE」というUCCにしか語れない、ビッグメッセージにたどり着いたという。

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社でマーケティング グローバル ブランド マネージャーを務める河田瑶子氏は、セッション「Brand with PURPOSE」で、同社のブランドビジネスを成長させる戦略「サステナブル・リビング・プラン」を紹介。「あなたらしさが美しさ:全ての女性はそれぞれ自分なりの美しさを持っており、大切なのはその可能性を高めていくこと」というDOVE(ダブ)のパーパス、「髪に輝きを与えて、その人の魅力を引き出し、女性に一歩踏み出す自信を与える」というLUX(ラックス)のパーパスを説明し、それぞれのパーパスをもとに組み立てられたマーケティングについて教えてくれた。パーパスをしっかり持っているブランドは、そうでないブランドに比べて46%早く成長しており、ユニリーバ全体の売り上げ成長の7割を占めるというデータもあるという。

Written by 長田真