[ DIGIDAY+ 限定記事 ]マーケターたちが業務のインハウス化を進めることは新しい現象ではない。そのため、多くのプロジェクトワークや指名代理店の割り当てが減るプレッシャーをエージェンシーたちは感じており、インハウス化の影響を受けてきた。DIGIDAYリサーチでは、マーケターたちが具体的に取り組んでいること、それに取り組む理由を調べた。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]マーケターたちが業務のインハウス化を進めることは、新しい現象ではない。
実際、賛否はあるものの、このトレンドは拡大しつつある。そのため、多くのプロジェクトワークや指名代理店の割り当てが減るプレッシャーをエージェンシーたちは感じており、インハウス化の影響を受けてきた。マーケターは、エージェンシーとの提携を取り止めるためにインハウス化を進めているのでなく、彼らのマーケティング能力で優れた技術を持ち、必要に応じて、さらなる融通を利かせようとしている。
DIGIDAYリサーチでは、マーケターたちが具体的に取り組んでいること、そしてそれに取り組む理由を調べた。
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ブランドがインハウスを採用する理由
昨年11月に、米DIGIDAYが調査した214のブランドマーケターの38%が、支配権を増やすために業務のインハウス化を進めていると回答した。ブランドマーケターたちが業務のインハウス化を進める理由の一番に支配権をあげていることは驚くことではない。近年、世界最大のマーケター集団であるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G:Procter&Gamble)のようなマーケターたちは、エージェンシーの利用を抑制しようとしている。P&Gのチーフブランドオフィサー、マーク・プリチャード氏はエージェンシーから「支配権を取り戻す」ことを約束さえしている。この支配権を取り戻す必要性は、手数料の点でエージェンシーがクライアントに対して率直または透明ではなく、悪用しているという認識から生じている。
マーケティングで支配権を得ることは、単に予算の行き先を監視することだけではない。マーケティングがマーケターたちに常駐してもらうことを必要とするようになり、特にソーシャル上で拡散する彼らのブランドに関連する事象について迅速に対応する必要がでてくる可能性が生じている。そこで、エージェンシーと行ったり来たりのやり取りをするよりも、すぐに物事を処理できる社内の人材を持つことのほうがマーケターたちにとってはありがたいのだ。
インハウス化で起こっていること
ポッドキャスト広告で良く知られているオンラインマーケティング会社、メールチンプ(Mailchimp)は、2019年の第1四半期にクリエイティブエージェンシーのドローガ5(Droga5)との関係を終了した。米DIGIDAYが以前に報告しているように、メールチンプはさらに多くのマーケティングコンテンツを社内で現在制作している。社内制作に切り替えを進めているのは同社に限ったことではない。NHL、ゲッティイメージズ(Getty Images)、エレクトロラックス(Electrolux)などのマーケターらはみな、以前はエージェンシーによって処理されていた業務の一部を社内に移行している。昨年11月に調査したマーケターらは米DIGIDAYに、自社で広告のプログラマティックバイイングを行う可能性がもっとも高いと述べ、調査対象の37%が2019年にその動きに出ることを見込んでいた。今年5月の米DIGIDAYが主催したプログラマティックバイイング・サミット(Programmatic Buying Summit)では、バイエル(Bayer)が社内プログラマティックに移行後、少なくとも1000万ドル(約1億円)節約したと公表している。
節約だけではない。さまざまなマーケティング機能に関して社内の人材と仕事をすることは、フルサービスを提供するエージェンシーのさまざまなチームと連携しようとするよりも簡単であり不満も少ないとマーケティングスペシャリストのピーター・ウェインガード氏は、米DIGIDAYに対してメールで語った。
エージェンシーとの提携を継続する
これは、自社内へ移行することを選択するマーケターたちがエージェンシーを完全に除外することを計画しているということを意味するものではない。クリエイティブ制作を扱うエージェンシーは、マーケターにとってもっとも人気のあるパートナーであり、マーケターは通常、さまざまなサービスでエージェンシーに依存している。米DIGIDAYの調査によると、社内チームを持つマーケターの61%は、クリエイティブ制作のために引き続きエージェンシーと提携している。そうは言っても、マーケターが引き続きエージェンシーと提携している場合でも、マーケターは一部のサービスを社内に移しており、おのずとエージェンシーが請け負う仕事の量が削減されていくことになる。
インハウス化への支援
社内チームの設立はひと晩で起こるものではない。マーケターの大多数(71%)が、サービスのインハウス化について、それを支援する企業に予算を回していないという。だが、その他のマーケターは、業界のスペシャリスト、インハウス化に特化したエージェンシー、コンサルタント、またはかつて提携していたエージェンシーを雇い、インハウス化をスムーズに進める支援を受けている。
インハウス化の課題
インハウスチームをまとめることの難しさは、インハウス化を進めるサービスエージェンシーによって異なる。米DIGIDAYが調査したマーケターの62%は、特定のマーケティングサービスを社内に移す場合、人材の採用が最大の課題だと答えている。インハウスチームに人材を見つけるとなれば、エージェンシーにとってプログラマティックな才能のある人材を探すことが特に難しい場合がある。もちろん、その人材がインハウスチームの一員になれば、エージェンシーがかつてに実行したマーケティングプログラムがどのようなものであれ、セットアップを行い、インハウスの人材に事情を理解してもらうまでに時間がかかる。どれくらいの時間がかかるのかは、インハウス化されるマーケティングプログラムと、ブランドが魅了できる人材のレベルによって異なる。