「小売業の黙示録(retail apocalypse)」で、8000もの小売店舗が閉鎖されてから1年、小売業者たちは店舗改修で事態に対応しはじめた。8月に開催した「DIGIDAY Retail Forum(リテールフォーラム)」で調査に応じた小売業者の71%が、実店舗を近代化するための投資をしていると回答した。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
俗にいう「小売業の黙示録(retail apocalypse)」の一部として8000もの小売店舗が閉鎖されてから1年、小売業者たちは店舗を改修することで事態に対応しようとしている。2018年8月に開催した「DIGIDAY Retail Forum(リテールフォーラム)」で調査に応じた小売業者の71%が、実店舗を近代化するための投資をしていると回答した。
実店舗が復活している背景には、各小売業者が総合戦略の一部としての店舗の役割を再考していることがある。
TJマックス(TJ Maxx)やロクシタン(L’Occitane)のように、実店舗を顧客との取引を完了させるのに必要な場所と見るのではなく、体験を生み出す場としてデザインし直す小売業者が増えている。店内でのショッピングへの関心を新たにすることは小売業者にとって非常に重要だ。ほとんどの新規顧客の獲得は、まだオンラインではなく実店舗での購入によるからだ。
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実店舗を訪れる理由
各小売業者が体験型小売店への投資にシフトしているのは、体験に対する消費者からの需要の高まりを受けてのことだ。マッキンゼー(McKinsey & Co.)の調査によると、体験型ショッピングへの関心が増大しているという。消費者は商品の取引より体験のほうにお金を払いたがっているからだ。そして、ほとんどのものがオンラインで買えるなら、店に足を運ぶにはもっと別の理由がなくてはならない。
そして、多くの小売業者にとって、近代的な店舗への投資は、新しい滑らかなカウンターや店内にスパを作ることではない。ここでは拡張現実(AR)やスマートミラーのような技術が重要な役割を果たしている。消費者の46%が、店内でテクノロジーと触れてから、小売業者への信頼感が高まったと報告している。
セフォラ(Sephora)やロレアル(L’Oreal)のような美容ブランドはARを導入して、実際に実施するとかなり面倒な、口紅などの製品のテストを消費者が試せるようにしている。もっと見た目に美しい体験をしたいと希望する消費者は、ロクシタンの、南フランスを舞台にしたバーチャルリアリティー(VR)気球ツアーに参加することができる。
客足のための重要ツール
大手小売業者はさらに、スタートアップ企業の技術を店内体験に組み込む方法を見つけ出している。メイシーズ(Macy’s)はスタートアップ企業ベータ(B8ta)の技術を使って、ポップアップに似た環境で自主監修した美容製品を販売している。一方ウォルマート(Walmart)は、独自のテックインキュベーターを創設し、VRや音声技術が店内でのショッピングにどのような影響を及ぼすかをテストしている。
こうした技術は、未来の店舗を作りはじめた小売業者にとって、客足を増やすための重要なツールだ。小売業者が未来の店舗を完成させることはないのかもしれないが、店舗の近代化に資本を投じ続ければ、少なくとも彼らは、その可否をしっかり見極めることになるだろう。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)