D2C へ注力するも、業績不振に苦しむアンダーアーマー

アンダーアーマー(Under Armour)の業績が改善する兆しはまだ見えない。

スポーツウェアを製造販売するアンダーアーマーはここ数年、D2C(Direct-to-consumer)チャネルに焦点を絞ることで販売を再成長させようとしてきた。2018年、同ブランドはD2Cを「最大の長期成長の機会」のひとつと述べている

だが2019年になって、計画通りに事が進まなくなってしまった。2019年第3四半期には、卸売チャネルとD2Cチャネルの販売が、それぞれ2%と1%減少した。その次の四半期の業績は少し改善して、どちらも2%成長し、収益は1%増となった。だがその成長でさえ、全体で4.2%の期待値よりは低かった。

この数カ月で事態はさらに悪化したようにみえる。新型コロナウイルスの感染拡大がまず中国で始まったとき、アンダーアーマーは、出荷の遅れや店舗の閉鎖を警告した。その状況は程なくして、アジアを越えて全世界へと拡大していった。

2020年5月11日に行った第1四半期の決算発表で、アンダーアーマーは、売上が23%減の9億3020万ドル(約999億円)、純損失は5億8970万ドル(約633億円)だったと報告した。一方、D2C売上は14%減だった。

「消費者にそれほど響いていない」

世界の小売業者は、近年の劇的な経済的シフトにかかる大きなコストを相殺する方法を見つけ出そうと努力している。アンダーアーマーはD2Cビジネスの強化に1年以上をかけて取り組み、卸売チャネルが停滞するなかで、そのことがある種の絶縁体として機能するはずだった。同社は、定価販売の製品ラインに焦点を合わせたビッグプランを持っていたほか、顧客のより良いパーソナライゼーションにフォーカスしたデジタルプログラムも用意していた。たとえば、「マップ・マイ・ラン(Map My Run)」のようなフィットネスアプリを公開し、フィットネス愛好者のターゲットベースと直接つながることが直接販売の増加につながると期待した。だが、こうした努力が完全に根付くにはまだ時間がかかる。

アンダーアーマーの最高財務責任者(CFO)を務めるデイブ・バーグマン氏は、2月に行った投資家向けの業績報告において、「2020年のD2Cの成長率は1桁台の低いレベルにとどまる」との見通しを語っていた。バーグマン氏は先日の決算発表で、4月以降、「特に北米で、eコマースが実際に伸びている」ことを確認しはじめていると述べたが、主張する成長についての具体的な数字の公表は避けた。

ジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)のリサーチアナリストであるジェシカ・ラミレス氏によると、アンダーアーマーの業績回復の取り組みは「進みが本当に遅い」という。その理由のなかにはウェブサイトでのデジタル体験に紐づくものがあるのかもしれないが、製品戦略にも関係はあるだろう。「アンダーアーマーの製品は、消費者にそれほど響いていない。彼らは、アスレジャーのトレンドに焦点を合わせるのではなく、パフォーマンスに焦点を合わせると言ってきた。オーディエンスの大部分を無視しているようなものだ」と、ラミレス氏は話す。

D2Cの道筋を模索している

直近の良いとはいえない業績の多くは不測の世界的災害のせいにもできるが、アンダーアーマーのD2Cの取り組みが、いつも大袈裟なものだからなのかもしれない。カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)のグローバル小売担当シニアバイスプレジデントであるデビッド・マーコット氏は、「アンダーアーマーの不振の原因は、D2Cを考えた(強調した)ときに、プランを膨らませすぎたことにある」と指摘する。アンダーアーマーはプログラムを大きく宣伝し、定価による直接購入を容易にしようとしたが、同社が属しているカテゴリーの現実は、そうした芸当を困難にしている。

つまるところ、長年店舗販売に依存してきた多くの老舗――あるいは中堅クラス――のアパレル企業の多くが、eコマースでの存在感を増そうと努力しているが、その結果はさまざまだ。ナイキ(Nike)でさえ、D2Cの取り組みは「思ったほどうまくは進んでいない」と、マーコット氏はいう。

実際、アンダーアーマーの競合相手たちはまだ、D2Cの道筋を模索しているところだ。ナイキのプログラムは、アンダーアーマーと同様に、顧客ベースに直接つながるアプリに焦点を当てている。しかし、こうしたプログラムは高くつく。D2Cアプリの体験部分を構築するためにテクノロジー企業を買収するからだ。新型コロナウイルスの蔓延により、ナイキはいま、デジタルアプリに注力し、プログラムを増やし、いくつかは全ユーザーが無料で使えるようにしようとしているが、これがD2C販売の増加と相関関係があるかどうかはまだ明らかにしていない。フットロッカー(Foot Locker)のように、投資を通じてD2Cにアプローチしているブランドもある。フットロッカーは、スーパーヒロイック(Super Heroic)という子ども靴ブランドを支援しており、これらの企業は新たな顧客ベースに直接つながる方法だ、とフットロッカーは語っていた。なお、スーパーヒロイックは2020年3月に休業を発表している。

「逃した機会がたくさんある」

まとめると、アンダーアーマーの最近の業績は、経済状況の悪化、トレンドを追う能力の欠如と、いまだ消費者とのあいだで機能していないD2Cシナリオが相まった厳しい結果だ。

アンダーアーマーは2018年、事業を再成長させるための大計画を発表した。それから2年が経ち、そうした取り組みは順調に進んでいるはずだった。「新しいプランのなかで、逃してしまった機会がたくさんある」とラミレス氏はいう。「これまでのところ、彼らの業績回復が順調に進んでいるようにはみえない」。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:ガリレオ)