リサーチ企業L2が2017年に公開したレポートによると、調査した9業種427ブランドのうち64%は、2016年1月~10月にSnapchatに進出していた。しかし、2016年10月時点で、月に1回以上Snapchatに投稿しているアクティブなブランドは、そのなかの67%だけだった。
何かと話題のプラットフォームSnapchat(スナップチャット)。広告支出が多い企業がいくつも参入しているが、コンテンツ制作はあまり盛んではない。
リサーチ企業L2が2017年に公開したレポートによると、調査した9業種427ブランドのうち64%は、2016年1月~10月にSnapchatに進出していた。しかし、2016年10月時点で、月に1回以上Snapchatに投稿しているアクティブなブランドは、そのなかの67%だけだった。
これに対し、インスタグラムではブランドの投稿数が平均で週に約9回(月に約30回)で、またTwitterでは大半のブランドが顧客サービスを目的として1日に複数の投稿をしている。L2のシニアアソシエイトであるテイラー・マームスハイマー氏によると、投稿の頻度が低下しているFacebookでも、ブランドは少なくとも月に1~3回ほど投稿しているという。
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投稿頻度が落ちている理由
マームスハイマー氏は、「Snapchatで投稿の頻度が低く散発的なままなのは、Snapchatで必要とされる量のコンテンツを制作するためのチームや予算が社内にないブランドが多いからだ」と述べた。
クリエイティブの観点から見ると、縦長のフォーマット、テキストのオーバーレイ、ジオフィルターといったSnapchatの特徴は業界にとって新しいものだ。エージェンシーのアーノルド・ワールドワイド(Arnold Worldwide)でソーシャルおよびコンテンツシステム担当のシニアバイスプレジデントを務めるロブ・スキパル氏は、Snapchatでストーリーを語るには「あらゆる人間的感情とより多くの思考」が必要なのに対し、インスタグラム、Facebook、Twitter、Pinterest(ピンタレスト)の場合、画像を投稿するだけでいいと説明した。
Snapchatは、ほかとは異なるルールと要件が必要になるという話に、デジタルエージェンシーのレイン(Rain)で戦略担当バイスプレジデントを務めるビル・チャムネス氏も同意する。同氏が説明するように、Snapchatは適切に使うのがほかよりも難しいため、それでなくてもソーシャルメディアチームがすでに手を広げすぎているブランドやエージェンシーにとっては、負担が重すぎるのだ。
またチャムネス氏によると、Snapchatはほかのチャネルと重なる部分があるため、ブランドがほかのソーシャルネットワークにどのような役割を割り当てているかでも違ってくるという。たとえば、インスタグラムで同じオーディエンスにリーチでき、同じ目標を達成できる場合もありうる。そうであれば、Snapchatに投資する必要などない。
うまく活用するブランドの場合
広告予算も障害になる。L2のマームスハイマー氏は、Snapchatの投稿はすぐに消えてしまうことから、Snapchat専用コンテンツの制作に必要な社内チームとリソースの割り振りをブランドが正当化するのが難しいと説明した。
しかし、アクティブなブランドの割合が低いからと言って、Snapchatがブランドにとって価値がないというわけではない。なんといっても世界全体で1日のアクティブユーザー数は1億5000万人なのだ。ブランドにとって、必要なワークフローが見つかるかどうかの問題に過ぎない場合もある。
たとえば、オーガニックな手法でさまざまなマーケティング手法をSnapchatでテストしているコスメサンプルのECサイト「バーチボックス(Birchbox)」。同社でコンテンツとソーシャルのシニアマネージャーを務めるローレライ・オルフェオ氏によると、Snapchatをソーシャルメディアミックスに加えるにあたり、コンテンツ制作のために体制を大幅に強化する必要はなかったという。オルフェオ氏のチームは、スタジオ撮影の際、その様子をSnapchatに投稿。また、イベントを開催することになれば、その舞台裏をSnapchatで取り上げている。
「こういったやり方なら、ほかのチャネルとは違った見せ方で顧客のエンゲージメントが獲得できる。これは、私たちが取り組んでいるものを支え、奥行きを加えることになる」と、オルフェオ氏は語った。
Snapchatで活動していくべき
Snapchatは新規株式公開を前にオラクルデータクラウド(Oracle Data Cloud)との連携を通じ、データ機能の強化に努め、株主企業と数百万ドル規模の広告契約を交わそうとしているが、それと比べるとSnapchatで継続的にオーガニックコンテンツを制作しているブランドは少ないかもしれない。そもそも、Snapchatで広告を出すのにSnapchatのアカウントは必ずしも必要ではないのだと、アーノルドのスキパル氏は語る。
スキパル氏は次のように述べている。「Snapchatにとって、投稿頻度の低さは悪いことではないと思う。ブランドがオーガニックな投稿から料金のかかる活動に移行しているのかもしれないのだから。ただブランドは、フォロワーの増加やエンゲージメントの向上が得られないとしても、縦長の動画に慣れることができるという点で、Snapchatで活動していくべきだと思う。オーガニックのテストはブランドにとってほとんどリスクがない」。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)