ノーマ・カマリ氏がファッションブランドを立ち上げたのは50年以上も前のことだが、この2年間は同氏にも前代未聞の課題が課された。その課題に対応してきたことはビジネスにプラスの効果があったようである。「クラシックでタイムレスなスタイル」やeコマースチャネルに注力している理由などについて語ってくれた。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ノーマ・カマリ氏が自分の名前を冠したファッションブランドを立ち上げたのは50年以上も前のことだが、この2年間は同氏にも前代未聞の課題が課された。幸いなことに、課題に対応してきたことはビジネスにプラスの効果があったようである。
「新型コロナウイルス感染症とそれに関するあらゆる事態は、私にとっても、職場にとっても、前代未聞だった。誰にとってもこのような体験は初めてだった」と、カマリ氏は最新のGlossyポッドキャストで述べている。「(コロナ禍によって)会社を目指すところに早送りできた。さらに、それによって効率性が上がり、戦略面でも会社は向上した」。
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その成果は出ており、ビジネスは2019年以来ほぼ3倍に成長したと同氏は言う。
カマリ氏は、アスレジャーやeコマースへのフォーカスなど業界トレンドに対してタイムリーに対応する先駆者であると言えるだろう。また、同氏は自分のビジネスは進化したものの、自分の主要なフォーカスには忠実であり続けていると述べている。これは、同氏のデザインに関して「着る人が快適に感じられる服で、驚くほど高価ではなく、何度も着られる服」へのこだわりを意味する。
また、自分の「クラシックでタイムレスなスタイル」や、eコマースチャネルに注力している理由、ファッションビジネスにウェルネスを取り入れている方法などについて語ってくれた。
対話のハイライトを、わかりやすく編集して以下に紹介する。
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アメリカ国内製造への障害
「移民問題は重要だ。トランプ前大統領は誰ひとりも入国させたがらず、バイデン大統領は誰でも受け入れたがっている。この2つの考え方のあいだには(アメリカの)製造現場で熟練労働者が不足しているという事実がある。アメリカでの製造を実現するための設備や労働力が不足しているので、人々を訓練する必要がある。アメリカ製は皆が望んでいることで、私もそうだ。私は自分ができることは試みている。(移民が経由できる)出入口があるべきで、そこでは徹底した健康診断や職業訓練が受けられるようにする。(移民を雇用する)企業は減税を受けられて、国全体で労働力が築かれて訓練されるようになればと思う。だから、アメリカに移民する人たちは、永住権を受け取るには各地の工場で働けるように訓練される。だが、現時点ではそうなっていない。不法滞在する移民は存在するが、我が社は彼らを雇うことを許されていない。企業は彼らを雇用できないのだ。不法移民は隠れている。アメリカ文化に属していない。知られていない裏社会に存在しているのだが、これは人を扱うやり方ではない。
私はアメリカで製造を行うという(アメリカ国民が持つ)願望を切に懸念している。職業訓練を受けて、この社会に属しているという尊厳の念が彼らに与えられない限り、これをどう実現するのか。どうすれば(アメリカ製造とそのために必要なことを)オープンに実行して、労働者が健康であり、アメリカに移民してここに属する人たちすべてが保護されることを保証できるのだろうか。どうすれば、彼らが訓練を受けて、皆と同じように希望や約束、夢が持てるようになるのだろうか」。
eコマースへの適応
「15年以上も前、eコマースに適応しようと決心した。そこではさまざまな小売業者による異なる解釈ではなく、ノーマ・カマリというブランドを直接顧客に示せるからだ。(他者による様々な)解釈には満足していなかった。また、小売が進んでいる方向には不安があった。それは不安定で、自分が恐れていた泥沼に入り込みつつあるのが私には明らかだったからだ。そこで、CFOに『デパートや小売店にはもう販売したくない。eコマースサイトで売ろう』と話したことを覚えている。彼から『賃貸料の支払いはどうするんだ』と言われたが、『今やらなければダメだ。生き残るためにやらなければならなくなることは避けたい。そしてeコマースに脅される前に、いまそうしたい』と言ったことを覚えている。
そして、2年間は誰も雇えなかったのも覚えている。コスト効率を非常に高くしなければならず、あらゆる購買を慎重に考えなければならなかった。また、先行投資はまったくできなかった。その時その時を考慮しなければならなかった。そして、eコマースに進出できるときがきた。そしてすぐ反応があった。即時に数値が見られた。とてもエキサイティングだった。こうして、現在では我々の販売の大部分は、リボルブ(Revolve)、フォワード(FWRD)、ネッタポルテ(Net-a-Porter)、マッチズ(Matches)、マイテレサ(MyTheresa)など、eコマースアカウント全域にわたっている。また、デパートについては、サックス(Saks)で取り扱いがあるが、店舗ではなくeコマースだ。ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)とノードストローム(Nordstrom)のeコマースアカウントでも販売している。eコマースは我々にとって快適な場所なのだ」。
SJP(サラ・ジェシカ・パーカー)効果
「ダイアナドレスという製品がある。70年代にこのドレスをデザインした当時は異なる生地を使っていた。ドレスは時とともに進化して、生地はアップグレードされている。この5年間のバージョンはボディスーツ付きで、洗濯もできて気軽に着られ、着る人を引き立てて、価格も魅力的だ。爆売れしている。提携小売業者すべてで取り扱われており、自社でも販売している。人気商品なので生地が多く必要になる事態がよく起きるのだが、これに対して思いついた戦略がある。コレクションを披露する前でも、バイヤーからの注文を確認する前でも、ダイアナドレスに新色があれば布を入手して先んじられるということだ。ようやくその方法でいくことにした。しかし、(10月に)サラ・ジェシカ・パーカー氏がこのドレスを着ている画像を誰かが送ってくれた。(それによって爆売れした)。こうなると生地が不足してしまう。販売の急増は嬉しいことだが、生地不足は嬉しいことのなかの厄介な問題だ。売れるのはありがたいが、注文を満たすことはできるのだろうか。希望どおりのスピードで生地が入手できないので、もどかしく感じている」。
[原文:Designer Norma Kamali on how the pandemic ‘fast-forwarded’ her 50-year-old brand]
JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)