ブロックチェーン は、デジタル広告を救えるか?:「誤った通念」を論破してみた

過剰に宣伝された話題によくあるように、ブロックチェーンや暗号通貨にまつわるうわさは、事実とフィクションの境界線があいまいだ。

ボットフラウド、広告ミスプレースメントスキャンダル、長いあいだ批判を受けているプログラマティック広告取引のエコシステムの不透明性といった進行中の問題により、企業はその多くが口にする「壊れた広告モデル」を修復することができる可能性のある解決策としてブロックチェーンを理解しようと必死になっている。

ブロックチェーンは、プログラマティックサプライチェーンを通じた金融取引の追跡で利用できるなど、いくつかのポジティブな使用例がある。しかし、ブロックチェーンについては多くのうわさが横行している。この技術を広告やメディアに適用する方法などは、ただのうわさ話にすぎない。広告におけるブロックチェーン利用に関する誤った通念を以下で取りあげたい。

誤った通念:アドフラウドの解決に有効

ブロックチェーンを利用してアドフラウドや透明性の問題を解決することは理論的には聞こえは良いが、その話を鵜呑みにすることはできないだろう。まず、ブロックチェーンは、世界中のネットワークがトランザクションを検証する分散型フォーマットで動作する。広告トランザクションが発生する速度(1秒あたり数十万件)を考えると、ブロックチェーンによるトランザクションの検証速度は十分とはいえず遅延問題が発生する。これに対処するため、一部のアドテクベンダーは広告トランザクションを1つのブロックに集約して1件のトランザクションを作成している。「これは、データの集約を意味し、その時点でその透明性が問題になる」と、アドテク企業、ロンドン・メディア・エクスチェンジ(London Media Exchange)のCTO、エレナ・イェゴロバ氏は述べる。

もうひとつの障壁:デジタル広告取引の完全な透明性を達成するためにそのバリューチェーンの誰もがブロックチェーンソフトウェアを適用する必要がある。さもなければ、それは透明性の「スナップショット」にしかならないと、イェゴロバ氏はつけ加えた。導入にはコストがかかるため、業界観測筋の多くがすべての企業がそれを採用する可能性は低いと考えている。「導入にかかる最低数十万ポンド(数千万円)のコストに加えて、継続的なコストを考えなければならない」と彼女は語った。

誤った通念:ブロックチェーンとはビットコインだ

ブロックチェーンとビットコインは同じではないが、それらにまつわるうわさが混乱の原因となっている。暗号通貨に取りつかれた者たちがブロックチェーンの未来に悪影響を与えていると信じている人もいる。「ビットコインとブロックチェーンの違いについての無知、そしてICO(新規仮想通貨公開)で数十億も調達できる暗号通貨バブルや、そのICOの多くが合法ビジネスではないという事実があり、そのために、そのすべてに対して、不当であり、正しくないものではないかと疑問が投げかけられている」と、ブロックチェーン技術を利用するメディアエージェンシー、トゥルース(Truth)のCEO、メアリー・キーン‐ドウソン氏は語る。キーン‐ドウソン氏によると、ブロックチェーンをわかったような気になって、実際は理解していないのに理解していると主張する人たちもかなりいるという。

混乱の主なポイントのひとつは、ブロックチェーンに必要なトークンの種類と暗号通貨に必要とされるトークンの種類の違いだ。「ブロックチェーンを実行するにはトークンが必要だ。それはコインというよりもアドテクバリューチェーンでイベントをアクティブにするプログラミングに少し似たユーティリティと同じだ」と、キーン‐ドウソン氏は述べる。「トレーサブルなコインを用いたければ、必然的にボラティリティが生まれる。そしてメディアや広告スペースでは、クライアントや顧客が彼らのトークンの日々の実価値を知ることができないため、その利用はできないだろう」。

誤った通念:てっとり早く稼げるチャンス

隠れたテック手数料、アービトラージ(裁定取引)、ボットフラウドに悩まされ、プログラマティック広告取引の昨今の評判は芳しくない。だからこそ、多くの人々がブロックチェーンの流行に乗って、危機を増やすのではなく、危機を解決する企業に自らを仕立て上げようとしている。しかし、機会に便乗するだけの者と真剣に取り組もうとしている者を見分けるのは比較的簡単だ。「ブロックチェーンを公にすれば、認定をうけて、監査を受けなければならない。そのため欺きとおすことは難しい」と、イェゴロバ氏は話す。ブロックチェーンビジネスを構築する計画を声高に宣伝する多くの企業が、その構築にかかる手間、費用を認識したときに、静かに徐々に消えていくことが予想される。

誤った通念:ブロックチェーンのもっとも効果的な広告活用は、不正行為の解決

ブロックチェーンがアドフラウドや透明性の問題を解決しないと考える人たちは、その技術にはより良い利用法が存在していると信じている。たとえば、EU一般データ保護規則(GDPR)、将来的にはeプライバシー規則が強化されたときには、パブリッシャー、アドテクベンダー、マーケターたちが消費者の同意をしっかりと管理することの助けになるだろうというものだ。エクスチェンジワイヤー(ExchangeWire)のCEOキアラン・オーケイン氏によると、ポストGDPRの世界での競争となると、Google、Facebook、Amazonといったデータを豊富に有する企業に対抗する機会が独立系アドテクベンダーにもたらされる可能性もあるという。「ブロックチェーンは、インベントリの透明性の立場だけでなく、データの利用とプライバシーに関して、広告においてまさに転換をもたらす可能性がある」と彼は述べた。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac)