Hulu(フールー)には、オリジナル番組をたくさん制作してライバルに追いつくための豊富な予算はないかもしれないが、それを補っているのが1200万人の情熱的なファンの存在だ。
「私たちには、彼らが望んでいるものや話したがっていることがわかるという利点がある。そこで、この『熱烈なファン』がいる場所で活動するようになった」と語るのは、Huluでソーシャルメディア担当シニアマネージャーを務めるリンジー・パール氏だ。同社には1200万人の熱心な会員がいる。そんな彼女の典型的な1日を紹介する。

パール氏と素晴らしいファン。
Hulu(フールー)には、オリジナル番組をたくさん制作してライバルに追いつくための豊富な予算はないかもしれないが、それを補っているのが1200万人の情熱的なファンの存在だ。
「私たちには、彼らが望んでいるものや話したがっていることがわかるという利点がある。そこで、この『熱烈なファン』がいる場所で活動するようになった」と語るのは、Huluでソーシャルメディア担当シニアマネージャーを務めるリンジー・パール氏だ。同社には1200万人の熱心な会員がいる。
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パール氏が認めているように、Huluのライブラリはほとんどがテレビ番組で占められているため、Huluならではのファンを開拓することは難しい。Huluで配信されている番組の多くは、「十分強力なソーシャルプレゼンス」をすでに確立しているからだ。したがって、彼女に課せられた仕事は、ストリーミング配信を超えた場所で、人々がHuluというブランドと関わりをもち続けるようにすることにある。
SNSで興味を引き続ける仕事
パール氏がHuluに入社したのは2015年の夏。その前はHBOで、デジタルメディアやソーシャルメディアのチームの運営に8年間携わっていた。彼女がHuluに魅せられた理由は、オリジナル番組の制作を進めていたからだ。「ディフィカルトピープル(Difficult People)」「カジュアル(Casual)」「パス(The Path)」といった番組によって、Netflix(ネットフリックス)やAmazonなどと差別化を図っている。
同氏によれば、HuluはインスタグラムやYouTube、Tumblr(タンブラー)、Facebookなどの、非常にインパクトがあって人気の高いプラットフォームで活動を展開しているほか、チャットアプリのLINEでも実験を行っている。彼女を含む8名のチームが、番組の動画を投稿し、ユーザーの不満に応えたり、オリジナル番組のプロモーションを展開しているのだ。
また、Facebookのライブ動画の配信も増やしている。内容は、たとえば「カジュアル」のキャストとのQ&Aセッションなどだ。「私たちはFacebookのライブ動画を大変気に入っている。想像できる限りのあらゆる驚くことや楽しいことが起こって、とてもワクワクするからだ」と、彼女は語る。
そんな彼女の典型的な1日を紹介する(わかりやすくするため、編集を加えた)。
6:05 am 目覚まし時計が鳴り響く。ジムに行く準備をし、ベッドを整え、犬を散歩に連れて行く。スターバックスに寄って、この日最初のエスプレッソを飲む。
7:00 am サンタモニカにあるジム「クロスフィット・ロサンゼルス」(CrossFit Los Angeles)の教室に出る。おそらくこのときが、昼夜を問わず、私がディスプレイの前に張り付いていない、唯一の時間だと思う。
8:00 am Huluの本社があるコロラド・センター(Colorado Center)に到着。「フーラボラトリー(Hulubratory)」と呼ばれる食堂で卵料理を食べてから、自分のスタンディングデスクに向かう。本社のなかはまだ静かで、打ち合わせの嵐はまだ起きていない。
私はまず、前日に放映された番組へのエンゲージメントに関係した記事をざっと見て回る。ブランド関連や、現在のオリジナル番組(「カジュアル」「マインディプロジェクト(The Mindy Project)」「パス」「11.22.63」)に関する投稿などを見て回り、自分たちのコンテンツをファン目線で眺めてみるためだ。これは私が毎朝行っている心の準備体操のようなもので、1年前のHBOにいた頃からはじめた習慣だ。
9:30 am ソーシャルチームの現状を確認し合う。これは、週のなかでも大好きな打ち合わせのひとつだ。議題が設定されないこの時間を使って、気分を入れ替えたり、仕事に影響している問題について話したり、大規模なプロジェクトについて最新情報を交換したり、気持ちを高め合ったりする。オーランドでの乱射事件を受け、私たちは現在の状況をもとに、危機が拡大したときの対応方法を見直してみた。危機をどのように定義するのか、危機の最中にどう対応するのか、危機が終わった後はどうするのかといったことだ。

Huluが配信を予定しているドキュメンタリー番組に関する、ソーシャル向けアセット
10:00 am Huluが配信を予定しているドキュメンタリー番組「ビートルズ:エイト・デイズ・ア・ウィーク(The Beatles: Eight Days A Week)」のはじめてのティザー広告を投下する準備として、大勢の関係者に電話をした。ビートルズのソーシャルプレゼンス担当者と電話で話をしたときには、その人をうらやむ気持ちを隠そうとしなかった。私の母でもビートルズなら理解できるだろうなと考えていたからだ。
12:00 pm 私は毎月、Facebookおよびインスタグラム担当のメディアパートナーシップチームと電話で打ち合わせをしている。今日の議題は、パブリッシャーのツールセットにクロスポスティングを追加する話だった。これは私たちにとって、状況をある程度変えるものになる可能性がある。私たちはたいてい、番組のFacebookページでお金のかかるコンテンツを紹介し、Huluの企業ページでその投稿を「共有」しているからだ。これなら動画を一度に複数のページで共有し、同じソーシャルアセット上でそれぞれの動画投稿の分析を継続できるようになる。これからが楽しみだ。
また、「カジュアル」のキャストといっしょに開催したFacebookのライブ動画での最近のイベントや、このイベントがもたらした大きな成功について話をした。
1:00 pm (アメリカ)国内の掲示板サイト「レディット(Reddit)」の新しい人たちと会うことができた! 彼らが来社した目的は「ランチミーティング」のためで、私のソーシャルチームと社内メディアチームのメンバーも大勢参加したが、素晴らしいものだった。最近、追加された広告製品やレディットの「AMA(Ask Me Anything: 何か質問ある?)」コーナーのアップデートについて知ることができたほか、将来に向けてちょっとしたアイデアを出したり、計画したりもした。

「ディフィカルトピープル」のキャストとクルー
2:00 pm 「ディフィカルトピープル」の制作責任者らと電話で話をし、シーズン2のソーシャルキャンペーン計画を手伝った。私のチームのジャフィー・グラントと、オリジナル番組のソーシャルプロモーション責任者が、すべての計画や活動において素晴らしい仕事をしてくれた。彼らはいくつかの戦略をとても気に入ったが、戦略については私たちと議論を重ねた。そのおかげで、本当に素晴らしいキャンペーンが完成した。これから展開していくのが待ちきれないほどだ。
3:15 pm エミー賞を選ぶ「テレビジョンアカデミー」の新しいメンバーに任命された私は、エミー賞の投票のために時間を費やした。もちろん、Huluの番組だけに票を入れるようなことはしていない。そうしたいのはやまやまだったが。
4:00 pm Huluが次回配信予定の、ドキュメンタリー番組に関するブレインストーミングに参加。担当チームは、ソーシャル優先の観点から私にアイデアを求めている。簡潔で、話題にするのに難しすぎないようなものとは何だろうか。私たちの場所に「もち込みやすい」ものとは何かについて考える。
5:00 pm 今日の仕事は終わりつつあったが、いくつかのメディアブランドがプロフィール写真をLGBTのレインボーフラッグに変えている状況が目立つようになり、このことについて検討すべき段階にきたことに気づいた。そのことについて私は考えた。
話がそれるが、私がHBOに入ってしばらく立った頃、2013年のある夏の朝だったが、イコール記号を使って「平等」を訴える人権キャンペーンがFacebookやTwitterであっという間に広がりはじめた。これは、ソーシャルメディアムーブメントがリアルタイムで起こったはじめての例だった。あらゆる人々が、団結を示すために、自分たちのプロフィール画像を変更した。私はこの動きが起こっていることに気づくとすぐに、一緒に仕事をしていたデザイナーに頼んで、ドラマ「トゥルーブラッド」のプロフィール写真をすぐにでも変えられるようにした。赤いイコール記号の上に歯を重ねたデザインだ。これは非常に大変な経験だった(広報担当者から政策責任者まで、HBOのすべての人から許可を得なければならなかった)が、エキサイティングでもあった。
そのため、オークランドの事件の後にレインボーが広まっているのを見たとき、私は2013年のときのインパクトを思い出して微笑んだ。なぜなら、このようなネット上のリアクションは、いまや比較的ありふれたものになっていたからだ。そして私は、HBOにいたあのときと同じように仕事にとりかかった。私はデザインチームにすぐ作業をはじめるよう指示し、社内の関係者と活発に意見を交換した。これは確かなムーブメントになるのだろうか。どのくらいの期間続くだろうか。行動のもとになっているすべての「信念」を支持すべきだろうか。そして最終的に、プロフィール画像をレインボーにすることが、Huluにとって適切な取り組みだという結論に全員が達したのだ。それから数分で、私たちは実際にプロフィール画像を変更した。
6:00 pm ようやく、いくつかのメールに返信して翌日の準備をする時間になった。
10:00 pm 私の目はもうほとんど閉じてしまっている。この日最後のメールと、Facebook、インスタグラム、Snapchat(スナップチャット)のニュースフィードに目を通した後、私は目覚まし時計をセットして明日に備えた。
Jordan Valinsky(原文 / 訳:ガリレオ)