デイリーハーベスト(Daily Harvest)は数年にわたってD2Cの料理宅配サービスとして運営してきたが、2016年の創業以来はじめて食料品店に進出する。
同社の一部商品は今後、ディロンズ(Dillons)やラルフス(Ralphs)、ハリスティーター(Harris Teeter)などクローガー(Kroger)所有のさまざまな店舗の冷凍食品売り場に並ぶことになる。8月13日の時点で、同社の商品は1100店舗以上で販売される。
この発売は、レイオフや、133人の顧客が入院したとされるフレンチレンティル(French Lentil)とリーククランブルズ(Leek Crumbles)のリコールなど、この1年間に同社を襲った数々の逆風を受けたものだ。デイリーハーベストによると、クローガーの参入は同社にとって新しい時代の幕開けとなるものだ。これによって同社は、これまで従来型の食品ブランドによって寡占されていた冷凍食品売り場で勝負できるようになる。新しいパッケージや、歌手テイラー・スウィフトのコンサートチケットが当たる派手なマーケティングキャンペーンなどにより、同社は「新しい時代に突入した」という。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
デイリーハーベスト(Daily Harvest)は数年にわたってD2Cの料理宅配サービスとして運営してきたが、2016年の創業以来はじめて食料品店に進出する。
同社の一部商品は今後、ディロンズ(Dillons)やラルフス(Ralphs)、ハリスティーター(Harris Teeter)などクローガー(Kroger)所有のさまざまな店舗の冷凍食品売り場に並ぶことになる。8月13日の時点で、同社の商品は1100店舗以上で販売される。
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この発売は、レイオフや、133人の顧客が入院したとされるフレンチレンティル(French Lentil)とリーククランブルズ(Leek Crumbles)のリコールなど、この1年間に同社を襲った数々の逆風を受けたものだ。デイリーハーベストによると、クローガーの参入は同社にとって新しい時代の幕開けとなるものだ。これによって同社は、これまで従来型の食品ブランドによって寡占されていた冷凍食品売り場で勝負できるようになる。新しいパッケージや、歌手テイラー・スウィフトのコンサートチケットが当たる派手なマーケティングキャンペーンなどにより、同社は「新しい時代に突入した」という。
多くの逆風を経験したデイリーハーベスト
同社の創業者でCEOを務めるレイチェル・ドローリ氏は、顧客のリコール問題への対応にこの1年間を費やしたのち、6月に新しい小売計画を公表した。それまでは、もっとも急速に成長している食品新興企業のひとつで、2020年には2億5000万ドル(約353億円)の収益を生み出した。同社は何年間にわたってベンチャーキャピタルから約1億2000万ドル(約169億円)を調達し、2021年の7700万ドル(約109億円)のシリーズDラウンドを実施。評価額は10億ドル(約1410億円)に達した。
クローガーでの発売に向けた準備が進むなか、ドローリ氏は米モダンリテールの取材に応じ、食料品チェーン店であるクローガーがデイリーハーベストの商品にフィットするのは自然なことであり、デイリーハーベストがウェブサイトでの独占販売を脱して、多くの州にわたる実店舗での幅広い販売を迅速に達成するのを支えてくれると語った。
「つまるところ、顧客が望む場所、現在買い物をしている場所で販売する時が来たと考えた」とドローリ氏は述べた。
再び成長軌道に乗る
店舗内での販売は、デイリーハーベストをすでによく知っているが、D2Cサイトでの購入は望まない顧客にリーチする方法でもあると、ドローリ氏は語る。同社はオムニプレゼンスへの移行を2020年に計画していたが、パンデミックの発生によりその計画は中断された。D2Cは同社にとって、特に利便性を重視する顧客をターゲットにする際には今後も重要だろう。ドローリ氏によると、「D2Cでは、食料品店よりも豊富な種類の商品を取り揃える予定だ」という。クローガーの店舗では、顧客データに基づき、アーティチョークとほうれん草のフラットブレッドや、ミントとカカオのスムージーなど、ベストセラー商品を含む一部のSKU(在庫管理単位)を販売する予定だ。
昨年はリコール騒動があったが、この立ち上げにより、成長について前向きな見通しが立ったとドローリ氏は述べる。「この新しい時代に突入するなか、リコールには焦点を合わせていない」。
ドローリ氏は、顧客の安全が「常に最優先事項だ」と繰り返し、リコールの原因となったサプライヤーからの調達は昨年打ち切ったという。また、同社がその後に成長軌道を再開し、「以前と変わらない速さで顧客を獲得している」と付け加えた。
差別化のための新パッケージ
この新たな方向性によって、クローガーでの発売に合わせてパッケージのデザインも変更した。「クローガーは違うタイプのチャネルなので、迅速に多くのことを伝える必要があった」とドローリ氏は述べた。
そのため、冷凍庫のドアを開ける顧客に対して、商品がどのようなものかを的確に示せるよう、ラベルも工夫した。「コレクションを大きな文字で示すなど、微妙な変更を加えた」とドローリ氏は述べた。「C」や「S」などの大きな文字は、カップ(C)やスムージー(S)の商品を意味している。同社の商品はクローガーの冷凍食品売り場のブランドブロックでまとめて陳列される。
「冷凍食品売り場で陳列されている各社の商品のなかで目立つために、重要な情報も追加した」とドローリ氏は述べた。新しいパッケージでは、AFT(米国農地信託)やCCOF(カリフォルニア認定オーガニック農家)との提携を通じて農家をサポートするというミッションが明記されていると同氏は説明した。クローガーの買い物客がQRコードをスキャンすると、買い物客に代わって同社がそれらの組織に5ドル(約705円)の寄付をすることができる。
都市部の若年層へのリーチも期待
同社はほかの小売業者とも交渉中だが、現在は、「クローガーでの立ち上げを成功させる」ことを全力を注いでいるとドローリ氏は述べる。
初の公式な小売の立ち上げを促進するため、テイラー・スウィフトのコンサートチケットを勝ち取れるコンテストをはじめ、いくつもの有料及びオーガニックなマーケティング施策に投資している。
同社は、テイラー・スウィフトのエラスツアー(Eras Tour)の最終開催地であるロサンゼルスの会場のVIPスイート席を買い取り、クローガーでの販売開始に対して商品の購入または関与した顧客に10組のペアチケットを提供する。当選者は旅費として1000ドル(約14万1000円)が贈られる。ドローリ氏は、「「果物と野菜の時代」をどのようにスタートするかを、TikTokやインスタグラムで聞いている」と言い、クローガーの冷凍食品売り場で、ユーザー生成コンテンツが撮影されることに期待している。クローガーの店舗の近くに住んでいない人は、自分のお気に入りの小売業者をタグ付けして「次にどこで販売すべきかを伝える」ことで参加できるという。
カンター(Kantar)のマネージングディレクターを務めるジェームズ・メイ氏は、クローガーでの販売は、これまで冷凍食品の注文をドライアイスに乗せて発送していたデイリーハーベストにとって、いくつもの利益をもたらすと述べている。クローガーは広い地域をカバーしているため、デイリーハーベストはD2Cブランドとしての枠を超え、都市部の若い層の顧客に対応できるようになると、同氏は付け加える。「同時に、この数年間で新しいブランドが55%から58%も成長している」といい、小売企業が自社の品揃えを刷新するために、若い新興企業の商品を仕入れていることに言及した。
リコール後のブランド刷新
デイリーハーベストの再出発について、15〜20%の人はリコール後のブランドから商品を再度買うことはないだろうと、メイ氏は述べる。それでも、リコール後のブランド刷新は目新しいことではなく、最近の例としては、洗剤ブランドのランドレス(Laundress)がある。また、新興企業のソイレント(Soylent)も、人気絶頂だった2016年にバーがリコールされ、非難にさらされた。しかし、クローガーとの関係は、「このブランドがリコールされたことを知らないかもしれない」新しい顧客にデイリーハーベストを紹介するうえで有利に働くだろうと同氏は述べた。
食料品店でのプレゼンスを増やすことは、料理配送サービスにとって人気のステップとなっている。パープルキャロット(Purple Carrot)のような新興企業は2020年に冷凍食品を店舗で発売した。今年前半には、ネスレ(Nestlé)が所有するフレッシュリー(Freshly)も、配送サービスから、小売店舗での調理済み食品の提供に転向すると発表した。
デイリーハーベストは昨年の出来事を過去のものとすることに集中しているとドローリ氏は述べた。同氏は、「この立ち上げは、これまでとは一味違う冷凍食品があることを顧客に示すものだ」と、利便性を重視しているデイリーハーベストの食事やスナックについて言及した。
[原文: Daily Harvest launches in retail with Kroger partnership]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Daily Harvest