「飲食」の新興プレイヤーに学ぶ、熱量あるブランドづくり:スープストック、BAKE、SAKE100の事例

極上の体験を生み出すには、まず自分たちが熱狂する必要があるのかもしれない。

ディープなファンを有する、食品/飲料領域の新興3社のエグゼクティブが2019年10月25日、CXプラットフォームの「KARTE(カルテ)」の運営会社PLAID(プレイド)が主催する「CX DIVE 2019 AKI」に登壇した。その3社とは、スープ専門店の「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」を展開するスマイルズ、チーズタルト専門店の「BAKE CHEESE TART」を有するBAKE(ベイク)、そして日本酒ブランド「SAKE100」を展開するClear(クリアー)だ。

今回で第3回目となるCX DIVEのテーマは、「コンサマトリー(行為に目的や手段としての価値を見い出すのではなく、行為そのものに熱狂し、楽しむこと)」。3社が登壇したのは、イベント最後のセッション「熱量あるブランドづくりで、極上の体験をつくる」だ。それぞれ、「好きなことをやるという熱量こそが、ブランドを動かす」と、口を揃えて話していた。

好きで好きで仕方がない

セッション冒頭議題に上がったのは、新規のブランドや業態を立ち上げる際、何からインスピレーションや着想を受けるかだ。これに対して、まず口火を切ったのは、Clear代表取締役CEOの生駒龍史氏。「我々の日本酒ブランド『SAKE100』は既存事業であった日本酒専門Webメディアにおける酒蔵への取材や、そこで培ってきた知見をもとに生まれた」と語る。

SAKE100は、高品質・高付加価値・高価格な「ラグジュアリー日本酒」を、同社が酒蔵と共同開発し、eコマースで販売するサービスだ。2018年7月のローンチ以来、国内外から高い評価を得ており、フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2019」では、SAKE100のフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」が、プラチナ賞を受賞している。

生駒氏は、SAKE100を立ち上げた狙いを「300以上に及ぶ酒蔵を取材し、3000以上の日本酒を試飲する中で得たアイデアや知見を生かして、高品質・高付加価値・高価格な商品を企画し、市場に流通させること」だと語る。「日本酒のマーケットを拡大するうえで、いま大きな課題になっているのは『価格水準の低さ』だ。高品質・高付加価値・高価格な商品を販売することで、結果的にマーケット全体の価格水準の向上に、そしてひいては産業全体の拡大に繋がる」。

続けて生駒氏は、日本酒ビジネスに込める熱量について、次のように述べた。「我々はとにかく、日本酒が好きで好きで仕方がない。だから、日に何件も酒蔵を回って取材をしたり、地道な活動も楽しめる」。ちなみに、生駒氏だけでなくClearの社員は、全員が日本酒好きなのだという。

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「とにかく、日本酒が好きで好きで仕方がない」と語る生駒氏

ブランドは皆でつくる

新しいブランドの着想を得たら、それを形にする必要がある。その際に大事なのは、多くのスタッフがそこに関われる状態を作ることだ。「BAKE CHEESE TART」やバターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」といったスイーツブランドや、オウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」でも知られるBAKEでは、ブランドの立ち上げや商品開発を行う際に「人格」を設定していると、チーフクリエイティブディレクターの貞清誠治氏は語る

「商品開発をする際、最初の段階でディスカッションをして、みんなで人格設定を行うようにしている」と貞清氏。BAKEでは、ブランドの方向性を共有するだけでなく、部署間の隔てを無くしスタッフがブランドをづくりに参加する場として、こうした機会を設けているという。

「ブランドを動かすのは、最終的にはスタッフ一人ひとりの熱量。彼らが果敢に挑戦できる、雰囲気やカルチャーが重要だ」。

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「ブランドを動かすのは、最終的には熱量」と貞清氏

新たなブランド体験の創出

女性ファンを多く抱える、スープストックトーキョーを展開するスマイルズも、ブランドの人格設定を行なっている。同社が2016年から毎年展開している「Curry Stock Tokyo」という企画はまさに、現場スタッフの熱量が生んだ、それまでのスープストックにはない、新しいブランド体験だった。

Curry Stock Tokyo開催日は、全店舗のメニューからスープが消え、スープストックトーキョーが「カレー専門店」になる。スマイルズの取締役 クリエイティブ本部 本部長を務める野崎亙氏によると、本企画を始める前まで、カレーのメニューは常連客の方には人気だったが、一般的にはあまり認知がされていなかったという。そんななか、現場から「皆が一生懸命つくった、こんな美味しいカレーをもっとたくさんの方に召し上がってもらいたい」という声が上がり、それをきっかけに現場と企画チームで議論を重ねた。

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「現場と企画チームで密に議論を重ねた」と語る野崎氏

   

当初は、すべてのメニューをカレーに変更するのではなく、通常メニューへ「増やす」という案も出ていたという。しかし、それは「スープストックトーキョーの人格を考えるとふさわしくない」という判断に。なぜなら、スープストックトーキョーの人格は「普段は落ち着いているけど、やる時はハッチャける人」だからだ。「『Curry Stock Tokyo』は普段あまり多くはない、男性層からも人気を集め、新規顧客の獲得に貢献している」。

※ DIGIDAY[日本版]は「CX DIVE 2019 AKI」のメディアパートナーです。

Written by Kan Murakami
Photo by Soup Stock Tokyo、BAKE、Clear(TOP画像)、PLAID(記事中)