Apple 風「レジなし精算」を狙う、米ドラッグストア CVS

米ドラッグストア大手のCVSは、カスタマー自身が商品をスキャンし、支払いできるようにするとともに、店の通路を歩きながらでも精算できる技術を開発することで、会計にかかる時間を短縮する考えだ。

9月4日の同社の発表によると、同社は東芝と提携し、同社のTCxエレベート(TCx Elevate)というプラットフォームを通じて、これを実施する予定だという。TCxエレベートは複数のレガシー技術をひとつのプラットフォームにまとめたもので、カスタマーに関する情報収集能力も高められるという。CVSと東芝からは、米DIGIDAYによる質問への回答は得られなかったが、業界に詳しい人間は、これをスターバックス(Starbucks)やAmazon、ウォルマート(Walmart)といった業界大手に遅れをとらないための措置と捉えている。

「これも店舗に技術を投入する現在のトレンドの一例だ。これまでもAmazonが業界をつぶしにかかっているという話は何度も繰り返されてきた」と語るのは、市場調査会社のユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)でデジタル消費者調査グローバル責任者を務めるマイケル・エバンズ氏だ。同氏は「小売企業にとって、東芝のTCxエレベートのありがたい点は接続するだけで機能を向上させられるところだ。この業界では自動精算機械を導入したものの、カスタマーに不評だったり万引きが増えたりといった理由で撤廃されてきた例がある」と、指摘する。

CVSによる今回のスキャン機能の向上が、現在店舗で使われている精算機械を上回るかどうかは未知数だ。小売企業はこれまで、借り受けたデバイスやスマートフォン用のスキャンアプリなどを通じて、カスタマーが店舗内のどこにいても商品をスキャンできる機能を試してきた。CVSは自己精算機械の導入を進めて10年近くになるが、3年前にはいくつかの店舗から自己精算機械を撤去したことを明かしている。自己精算以外に、同社はカスタマー向けのデジタル体験の提供にも力を注いでいる。CVSは2年前にCVSペイ(CVS Pay)というモバイル精算プラットフォームを立ち上げた。これはWalmartペイ(Walmart Pay)と同様、カスタマーがレジでデビッドカードやクレジットカードにリンクしたバーコードをスキャンする仕組みだ。今年8月にはカスタマーがスマートフォンの動画を通じて健康に関するアドバイスを受けられるツールをリリースした。

普及していない技術

カスタマーが店舗内のどこにいても商品をスキャンできるという仕組みは、CVS以外にもウォルマートやクローガー(Kroger)、テスコ(Tesco)などの業界各社が取り組んでいる。ウォルマートはカスタマー自身がスキャンするシステムを2013年と2017年の2度に渡って試験運用した。だが採用率の低さとカスタマーにとってあまり快適ではないことを理由に、今年4月に打ち切っている。フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、サチャリタ・コダリ氏は、サードパーティのデバイスを使って自分自身で商品をスキャンしたり、精算用のアプリをダウンロードしたりするのに抵抗を覚えるカスタマーもいると指摘する。

さらにペイジリティ・アドバイザーズ(PayGility Advisors)の共同経営者であるデイビッド・トルー氏もまた、レジ係の代わりに商品を自分自身でスキャンするシステムを受け入れてもらうには、カスタマー体験を大きく向上させなければならないと語る。

「ウォルマートでうまくいかなかったシステムだ。なぜCVSが続けるのかわからない」。

GAPという成功事例

それよりも、GAPが試験運用しているようなApple Store形式のモバイルPOS機能のほうが将来の見通しは明るい。ウォルマートは、「チェックアウト・ウィズ・ミー(Checkout with Me)」というモバイルPOSツールを350店舗で試験導入しており、米DIGIDAYに対して初期段階では有望な結果が出ていることを明かしている。トゥルー氏は、もしCVSが精算にかかる時間を減らして、トランザクション回数を増やすことができれば、成功する見込みはあるだろうと語っている。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)