2017年3月、メガバンクのJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)が、広告掲載サイト数を大幅縮小するとニューヨークタイムズ(The New York Times)が報道。ブランドセーフティを巡って大きな反響を呼んだ。しかしこの報道後、JPモルガン・チェースは広告掲載サイト数を増やしている。
2017年3月、メガバンクのJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)が、広告掲載サイト数を毎月40万サイトから5000サイトに大幅縮小するとニューヨークタイムズ(The New York Times:以下、NYT)が報道。ブランドセーフティを巡って大きな反響を呼んだ。しかしこの報道後、JPモルガン・チェースは広告掲載サイト数を増やしている。
戦術は可変的
JPモルガン・チェースに依頼したインタビューは断わられたが、同社の広報担当者は、現在は約1万サイトに広告を掲載していると語ってくれた(とはいえ、もともとのあり得ないほど長大だったリストと比べると、まだ2.5%だ)。広告調査各社によるデータはだいたい一致しており、JPモルガン・チェースの広告掲載サイト数は、春の時点と比べれば増えているものの、1年前と比べると大幅に減少している。このことからわかるのは、業界のカンファレンスでこの件がどのように語られていたにせよ、ブランドセーフティ戦術は可変的であるということだ。
プログラマティックバイイングのプラットフォーム、データシュー(DataXu)でビジネス開発のシニアマネージャーを務めるケン・バン=エブリ氏は、「戦略全体はおそらく、語られたり書かれたりしてきた強い姿勢よりも流動的だ」と語った。「しかし、最終的な目標は変わっていない。ブランドの保護にはそれがいいのだ」と、同氏は語った。
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広告調査会社メディアレーダー(MediaRadar)によると、JPモルガン・チェースの広告掲載サイト数は、3月と4月に激減したあと、5月に50%増加している(実際の数字は教えてくれなかった)。そして5月以降は、安定して増えてはいるものの、増加スピードは大幅に鈍化している。メディアレーダーによると、JPモルガン・チェースの8月の広告掲載サイト数は、7月から6%しか増えていない。
盛り返す出稿量
広告調査企業パスマティクス(Pathmatics)による以下のグラフは、JPモルガン・チェースの毎月の広告掲載サイト数の推移を、2016年1月を100%として示したものだ。パスマティクスのこのデータも、NYTの報道が出て以降、JPモルガン・チェースが、広告掲載場所を増やしてきていることを示している。
バン=エブリ氏は、NYT記事がメディア業界を駆け巡ったあと、おそらくJPモルガン・チェースにはパブリッシャーから、うちのサイトをホワイトリストに入れてほしいという要望が殺到しただろうと語る。掲載サイト数が増えているのは、そうした要望を吸収したものである可能性が高い。
バン=エブリ氏によると、ほとんどのブランドにとって安価なリーチは魅力的だが、サイト数の倍増が必ずしもリーチの増加につながるわけではない。人気サイトは、それ以外の大量にあるサイトに比べて、トラフィックもインベントリも飛躍的に多いことがほとんどだからだ。そして、そのような人気サイトはおそらく、JPモルガン・チェースのキャンペーンには、すでに組み込まれていた可能性が高い。
驚くことではない
ブランドセーフティを扱うトラスト・メトリクス(Trust Metrics)のCEO、マーク・ゴールドバーグ氏によると、ホワイトリストであれブラックリストであれ、効果を発揮させるには常にモニターして更新する必要があるので、ブランドが新戦略のテスト後に、キャンペーンを展開するサイトを増やすのはそれほど驚くことではないという。
「ホワイトリストもブラックリストも、いったん作ったら忘れていいような静的な文書ではない」と、ゴールドバーグ氏は語った。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
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