菓子メーカーのキャドバリー(Cadbury)が、主力商品のチョコレートバー「クランチー(Crunchie)」のテレビCMを最後に流したのは2000年のことだった。現在の10代の一部は、まだ生まれてすらいなかったはずだ。だが最近、「クランチー」はSnapchat(スナップチャット)ですっかりおなじみの存在になってきた。
去る5月11日に開始された、キャドバリーの長期キャンペーン「自分の口に従おう(Obey Your Mouth)」。その一環として、Snapchat上でのマーケティング展開もはじまった。チョコレート菓子の売上が減少するなか、キャドバリーは、シングルタイプのチョコバーを新たに若者層へ売り込もうとしている。
菓子メーカーのキャドバリー(Cadbury)が、主力商品のチョコレートバー「クランチー(Crunchie)」のテレビCMを最後に流したのは2000年のことだった。現在の10代の一部は、まだ生まれてすらいなかったはずだ。だが最近、「クランチー」はSnapchat(スナップチャット)ですっかりおなじみの存在になってきた。
去る5月11日に開始された、キャドバリーの長期キャンペーン「自分の口に従おう(Obey Your Mouth)」。その一環として、Snapchat上でのマーケティング展開もはじまった。チョコレート菓子の売上が減少するなか、キャドバリーは、シングルタイプのチョコバーを新たに若者層へ売り込もうとしている。具体的には、「クランチー」のほか、「ウィスパ(Wispa)」「ブースト(Boost)」「ダブルデッカー(Double Decker)」「トゥワール(Twirl)」などのチョコバーだ。
Snapchatのデイリーアクティブユーザー1億人のうち、約5500万人が16~24歳といわれている。リサーチ企業キャンバス8(Canvas8)によると、英国の10代の40%がSnapchatを使っているという。
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そのため、キャドバリーは「クランチー」のデジタル予算の半分を、Snapchatにつぎ込んだ。Snapchatは、Z世代(11~16歳)にとって、テレビとオンライン動画に次ぐハブだからだ。キャドバリーは総額を公表していないが、シングルタイプ5製品の合計予算が600万ポンド(約9億2000万円)であることから、数十万ポンドをつぎ込んだと見られる。
では、マーケティングの概要と成果はどうだったのだろうか。キャドバリーでブランドマネージャーを務めるバーボラ・ハーリチョバ氏は、チームの全員が「ちょっと年を取った」気分になったと冗談めかしつつ、これまでに得られた教訓を米DIGIDAYに明かしてくれた。
全国キャンペーンは有効
Snapchatは位置情報を活用するインターフェースで知られ、ユーザーは現在位置にもとづいてコンテンツにアクセスできる。
ファストフードチェーンのKFCや音楽ストリーミングサービスのパンドラ(Pandora)といったブランドはジオフィルターを試している。だが、Snapchatは全国規模での配信を目指す企業にとっても同様に有効だ。
特定の場所と時間でしかアクセスできないコンテンツと違い、レンズと国別ジオフィルターなら誰でもブランドコンテンツを閲覧できる。たとえば、清涼飲料メーカーのコカ・コーラ(Coca-Cola)によるクリスマスキャンペーンは、英国全体のジオフィルターを適用し、7000万ビューに到達した。
キャドバリーの狙いはできるだけ多くの目に触れることだったので、ハーリチョバ氏は、「クランチー」のキャンペーンで3種類のレンズを作成することにした。商品のキャッチフレーズ「金曜の気分をゲットしよう(Get That Friday Feeling)」にあわせて、レンズは5月の第2、第3、第4金曜に順次リリースされた。
キャドバリーはこれら3つのレンズで合計1000万ビューを見込んでいた。最初のレンズは、ユーザーの顔を金色のミラーボールに変えるというもので、すでに900万ビューを獲得した。同社はまだ残りの2つのデータを得ていないが、当初の兆候はいずれも好調だったことを示唆している。
ただし、全国規模のリーチは決して安い買い物ではなかった。キャドバリーは費用を公表していないが、米DIGIDAYのによる過去記事では、レンズの料金がときに70万ドル(約7600万円)以上になることを明らかにしている。
製品を登場させる
キャンペーンの目的がZ世代に「クランチー」を紹介することなのだから、(ロゴやキャッチフレーズだけでなく)製品そのものをレンズに登場させるのは理にかなっていた――ただし、ユーザーに敬遠されるリスクもあるが。キャドバリーは、担当エージェンシーのエルビス・コミュニケーションズ(Elvis Communications)およびファロン(Fallon)とのクリエイティブのプロセスを経て、この冒険を実施することに決めた。
「ストーリーにうまく合うなら、製品を使うのは理にかなっている」と、ハーリチョバ氏は語る。こうして、3つのレンズすべてに「クランチー」が登場することになった。最後のレンズでは、ユーザーがカメラに向かって口を開けると、金色の唇の巨大な口がチョコバーをかじり、背景がディスコ風に変わる。
シンプルに保つ
Snapchatのような、音声なしで再生される可能性もあるビジュアルメディアでは、クリエイティブのアイデアが一切の説明なしで伝わる必要がある。
「面白さがすべてだ。若者たちは、仲間内で笑い合うためにSnapchatを使っている。もっとも頻繁に送信されるのは面白いコンテンツだ」と、キャンバス8のサム・ショー氏は語る。
このため、キャドバリーはレンズをユーモラスなものにしようと、顔が金色に変わったり、唇が巨大化する目新しい効果を取り入れた。オーディエンスとつながる時間は限られているため、シンプルさがカギになると、ハーリチョバ氏は話す。
物事をシンプルに保つべき別の理由は、クリエイティブのプロセス全体が時間を要するというものだ。キャドバリーでの構想段階に約2カ月かかり、Snapchat側のエンジニアリングには3週間を要した。Snapchatのプロダクションはすべ社内で行われるためだ。
簡単にはいかない
キャドバリーは大きく手広く(予算も潤沢に)という道を選んだが、Snapchatを使って低予算のアプローチを採用するブランドもある。一般ユーザーアカウントを開設し、口コミやほかのソーシャルチャネル上でのスナップコードをシェアすることを通じて、オーガニックなフォローを集めるというやり方だ。
ただしハーリチョバ氏は、ファッション通販サイトのエイソス(ASOS)のようなブランドはこれで成功しているが、万人向けではないと指摘する。キャドバリーの場合、アカウント開設は時間と労力がかかりすぎると判断された。一方、レンズに予算を割り当てるのは、キャドバリーが求めるリーチを手っ取り早く獲得する良い方法だった。同社は時間をかけずに、高いエンゲージメントをもたらす動画の評判を活用することができた。
キャドバリーは、ユーザーアカウントを開設する予定は当面ないが、ほかのシングルタイプのチョコバーを扱うSnapchat上のキャンペーンを現在計画している。これは今夏に実施される見込みだ。
Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)