コティ、ロレアル・グループ、ユニリーバは2月中旬、四半期決算を発表、三社ともに顕著な売上高の伸びを示した。注目は、フレグランスの大幅な回復のほか、いずれの美容ブランドや部門も売上増加に関しては中国が引き続き重要な市場となっていることが挙げられる。Glossyでは最新の決算を総括。それぞれのハイライトを紹介する。
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コティ(Coty Inc.)、ロレアル・グループ(L’Oréal Group)、ユニリーバ(Unilever)は2月中旬、四半期決算を発表、3社ともに顕著な売上高の伸びを示した。
注目される点としては、コティとロレアルが指摘したフレグランスの大幅な回復のほか、いずれの美容ブランドや部門も売上増加に関しては中国が引き続き重要な市場となっていることが挙げられる。消費財コングロマリットであるユニリーバは過去1年間の業績がふるわず、緊迫した決算説明会に直面した。しかし同社経営陣は、長期的な事業成功の鍵と見られるため、投資を行いさらに多くの美容ブランドをポートフォリオに追加したいという明確な願望を表明した。
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Glossyでは最新の決算を総括してそれぞれのハイライトを紹介する。
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コティ
コティは2月8日に2022年度第2四半期の業績を発表し、プレステージビューティ部門とコンシューマービューティ部門が牽引して純収益が12%増加したと報告した。これは成長予測に沿ったものである。プレステージビューティ部門の売上高は前年同期比12%増、コンシューマービューティ部門の売上高は前年同期比11%増となった。決算報告によると、上半期の旅行小売売上高は2021年同期比で倍増している。プレステージフレグランスの第2四半期の売上は2桁増で、ほぼすべてのブランドが貢献した。
業績発表にてコンシューマービューティ部門の牽引役として繰り返し名前が挙がったのは、カバーガール(CoverGirl)、リンメル(Rimmel)、マックスファクター(Max Factor)である。カバーガールは2021年11月にスキンケアをローンチし、女優のアメリカ・フェレーラ氏をブランドアンバサダーに迎えている。また同ブランドはネイルブランドのサリーハンセン(Sally Hansen)とともにAmazonショッピングのライブストリームに参加、160万ビューと300万のインプレッションを達成した。
コティのCEOスー・ナビ氏は決算報告会で「ただ単にマスカラやモイスチャライザーをローンチするという発想ではない」と述べている。「コティのビジョンは、小売業者と手を携えてカテゴリーを構築することだ。そしてそれはまさに我々がコンシューマービューティで行ってきたことである。カバーガールは、我々がこのブランドをクリーンビューティとしてカテゴライズすると決定したことによって、過去40週間のうち26週間にわたって米国での市場シェアを取り戻している」。
決算報告にてとくに指摘があったのは、プレステージビューティ部門のグッチビューティ(Gucci Beauty)だ。グッチのメイクアップの売上は店舗で2倍になり、D2Cのeコマースは売上の50%以上を占めたとナビ氏は述べている。中国でのグッチのメイクアップの売上は前年比3倍となり、中国におけるメイクアップの売上はグッチのフレグランスの売上を上回った。第2四半期と2022年度上半期ともに、グッチのメイクアップの売上は前年比2倍以上を達成している。
ロレアルグループ
ロレアルグループは2月9日、2021年第4四半期および2021年通期の業績について、売上高が15.3%増の370億ドル(約4兆2671億円)強となり、驚異的な成長を遂げたと発表した。2021年は、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)、スキンシューティカルズ(SkinCeuticals)、セラヴィ(CeraVe)などのブランドを含むアクティブコスメが牽引し、4つの美容部門すべてが成長した。売上高は、2020年比で31.8%増、2019年比で56.6%増を記録している。しかし現在ロレアル・リュクス(L’Oréal Luxe)は、コンシューマープロダクツ部門をしのぐ123億ドル(約1兆4185億円)以上の売上高で、グループ最大の部門となっている。決算報告書によると、リュクスのフレグランスが前年比27%増と「目覚ましい」成功を収めている。
「(フレグランスの成功には)いくつかの理由がある。まず、フレグランスは喜びや幸せを中心とした新しい消費者行動に結びついている。次に、フレグランスはメイクアップと同じように社会生活に戻ることを可能にする。世界中のすべての顧客は、これまで以上に活動的な社会生活に戻りたいと思っている」と、ロレアル・リュクスの社長でゼネラルディレクターのシリル・シャピュイ氏は業績発表で述べた。「だがフレグランスの成長(の背景)には、中国市場の爆発的な拡大という根本的な要素もある」。
売上高が大幅に伸びたにもかかわらず、マーケティング費用の増加が収益性を損なっているとの投資家の懸念により、2月10日にロレアル株は下落している。ジェフリーズ(Jefferies)の株式アナリスト、モリー・ワイレンゼック氏は株式調査のなかで、株式市場ではマーケティング費用が見過ごされると予想していると述べた。ロレアルは下半期に広告やプロモーションを増やしており、2021年は前年比1.9%増の約22億9000万ドル(約2641億円)をマーケティングに投じた。ロレアルグループのCEOニコラ・イエロニムス氏は、業績発表にてこの増額を正当化した。
「この反動の年に(コンシューマープロダクツ部門が)より強力にブランドに投資できるように少しリバランスを行い、それが功を奏した」とイエロニムス氏は述べている。
ユニリーバ
ユニリーバは2月10日、2021年第4四半期と2021年通期の決算を発表し、美容・パーソナルケア部門の売上高は、値上げによる3.0%と販売数量増による0.8%を含めて3.8%増となったと報告した。前年の需要上昇を受けて減少したスキンクレンジングを除き、すべてのカテゴリーが成長した。タッチャ(Tatcha)、アワーグラス・コスメティクス(Hourglass Cosmetics)、ポーラチョイス(Paula’s Choice)などを含むプレステージビューティ部門は、チャネルが再開されたのに伴い全ブランドで2桁の成長を達成し、eコマースが大きく貢献した。全体として、ユニリーバのeコマースの成長率は44%で、現在では売上の13%を占めている。
美容・パーソナルケア部門の基礎的な営業利益は横ばいで、製品価格の上昇にもかかわらず、パーム油の原材料高騰が売上総利益にとくに大きな影響を及ぼした。ブランドおよびマーケティングへの投資は、Covid-19の規制が販売およびマーケティング機会に影響を与えた欧州および東南アジアでの引き下げにより、全体的に減少した。
言うまでもなく、こうしたすべての中立的な美容のニュースが並ぶ背景には、ユニリーバが直面した問題があった。ユニリーバはグラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)の消費財部門の入札で、1月下旬に670億ドル(約7兆7250億円)の提示を同社に拒否されて敗退している。このニュースに続き、アクティビスト投資家のネルソン・ペルツ氏がこの事業の未公開株を購入し、ユニリーバでは上級管理職の15%を削減、1500人の職を解いたことが明らかになった。
「数カ月にわたり慎重に検討した結果、ふたつのとても魅力的な隣接事業であるコンシューマーヘルス&ウェルビーイングと美容への転換を加速することが、ユニリーバを今後数十年におよんでより速く成長させる方向に位置づけるだろうと取締役会は判断した」と、ユニリーバのCEOアラン・ジョープ氏は決算報告で述べた。「これはグラクソ・スミスクラインとファイザー(Pfizer)との秘密協議を意図した件の背後にあった。我々は美容とコンシューマーヘルス&ウェルビーイングという魅力的な分野にポートフォリオを移行すると固く決意しているが、そこに到達する方法については(現時点では)より忍耐強くなっている」。
[原文:Coty and L’Oréal see boom in fragrances, while Unilever plans to buy more beauty brands]
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)