Facebook と D2C ブランドの蜜月関係、いよいよ終焉間近 :「持続可能なコストではない」

D2Cブランドは長年にわたり、Facebookやインスタグラム(Instagram)の広告を通じて急速にカスタマーを獲得してきた。だが2019年は、より多様な形で成功を収めようという試みが活発化した。

エイトスリープ(Eight Sleep)ボンバス(Bombas)といった企業はマーケティング予算のそれぞれ60%から85%をFacebookに投じたとされている。マーケティング予算の大半をひとつのチャネルに限定することはリスキーではある。だがカスタマーを10ドル(約1080円)から15ドル(約1600円)という低コストで獲得できる時期があり、それによってブランドが成功を収めてきたのもまた事実だ。一方、Facebookで宣伝するブランドが増えたことでカスタマー獲得コストは高騰した。2倍から3倍にまで跳ね上がることすらあったのだ

2019年は、D2Cブランドがそれ以外のチャネルで広告費を使おうと躍起になった年でもあった。ピンタレスト(Pinterest)Snapchat(スナップチャット)といったデジタルプラットフォームを試みたブランドもあったが、Facebookほどのスケールは望むべくもなかった。その一方、ダイレクトメールやテレビといった従来型のマーケティングチャネルを求めたブランドも存在した。

創業者やマーケティング役員らは、単一のチャネルではFacebookの初期のような成功体験は得られないと口を揃える。各社ともFacebookへの依存度を下げているものの、新規顧客がもっとも多いのはやはり、いまでもFacebookなのだ。

フリーランスマーケター向けのプラットフォームであるマーケターハイヤー(MarketerHire)のCEOクリス・トイ氏は「(Facebookにかわる)優れた選択肢はない」と語る。

Facebookの広告依存度を下げる取り組みが2019年に盛んになったのには、いくつかのワケがある。ピンタレストやSnapchatは、上場といった重要なマイルストーンを達成しており、ブランドの広告展開のハードルを下げるセルフサービスの広告プラットフォームのローンチなど、D2Cブランドに対して積極的なアプローチをはじめた。

広告バイヤーらは2019年、Facebook Ads Managerが機能停止するケースが増えたと苛立ちをつのらせた。ベンチャーキャピタルから資金調達を増やし、テレビや高額な前払いの広告契約を結ぶD2Cブランドも増えた。さらに投資家はシリーズAを終えたD2Cブランドに対し、カスタマー獲得戦略の多様化を求めるようになっている。

シードステージとアーリーステージのベンチャーキャピタル、レアラー・ヒプー(Lerer Hippeau)でプリンシパルを務めるアンドレア・ヒプー氏は、「ステージが進むと投資家はユニットエコノミクスについて懸念するようになるようだ」と分析する。「利益をいかに確保し、(カスタマー獲得コストの)比率を高く保つかが重視される」。

抜本的な対策

D2C飲料企業のアイリス・ノバ(Iris Nova)のCEO、ザック・ノーマンディン氏は、同社の最初の製品「ダーティーレモン」のCPAが2017年から2018年にかけて3倍に増加したとしている。ピーク時には、同社はFacebookとインスタグラムに1日あたり2万ドル(約216万円)から3万ドル(約324万円)を費やしていた。

「カスタマー獲得について信じられないほど大きな恩恵を受けてきた」と、ノーマンディン氏は語る。「だが2018年のはじめに、市場の競争が一気に厳しくなり、持続可能なコストではなくなってしまった。Facebookがリリースした新ツールもすべて試した。だが、たとえ少しずつでも、こういったチャネルを通じたカスタマー獲得のコストは上昇を続けたのだ」。

2018年の終わりに、ノーマンディン氏はFacebookとインスタグラムでの宣伝を一切やめることにした。アイリス・ノバでは、それ以降Facebookとインスタグラムへの支出は一切行っていないという。「ダーティーレモン」については、カスタマーの引き止め効果が見込める、イベントや得意客への特典、実店舗によるリーチ拡大といった取り組みを行ってきた。アイリス・ノバは、ダーティーレモンなどの飲料を販売する独自店舗「ドラッグストア(Drug Store)」を展開し、卸売企業のエキノックス(Equinox)を通じた商品販売も行っている。

「長期的に見て、カスタマーの獲得と維持には、デジタルではない部分での取り組みが欠かせないと思う」と、ノーマンディン氏は語る。

新戦略

だがアイリス・ノバは例外的だ。立ち上げから間もない、VCからの資金調達ができていないブランドにとって、月に1万ドル(約108万円)以下の出費で数千万人にリーチできるFacebookやインスタグラムから離れるのは容易ではない。

Facebookはインスタグラムのチェックアウト機能をローンチするなど、アプリによるコマースを積極的に打ち出している。これはFacebookとインスタグラムで商品購入や検索を行うユーザーが増えれば、D2Cブランドからの広告費用もより多く見込めるという考えもあるようだ。

だが、あくまでFacebookとインスタグラムのD2Cブランドに対する最大の売りは、ピンタレストやSnapchatと比べて数千万人多い新規カスタマーにリーチしうる点にある。そこで、Facebookやインスタグラムでの宣伝を完全になくすのではなく、ロイヤルカスタマーを増やすような新しいカタチの広告を打ち出す企業も増えている。

水着のD2Cブランド、アンディー・スウィム(Andie Swim)でパフォーマンスマーケティングディレクターを務めるマーサ・カジー氏は、昨年9月にFacebookのMessenger(メッセンジャー)で行うサイズに関するクイズを行い、参加者を増やすような広告を展開した。ユーザーがクイズを完了してサイズが判明すると、ウェブサイトへのリンクと購入を誘導するという仕組みだ。

カジー氏は詳細なデータこそ明かさなかったものの、こういった広告のほうが熱心なユーザーを同社のサイトに集めやすく、コンバージョンの面でも有利としている。アンディー・スイムは昨年、同社で初となる屋外広告キャンペーンを展開した。だがカジー氏は、こうした高額なブランドマーケティングのキャンペーンは水着のシーズンにのみ行う予定としている。

「出来る限り効率を高めたい。(こうしたキャンペーンは)直接的なパフォーマンス指標に結びつきにくい」と同氏は語る。また、Facebookはいまでも同社のメディア予算の「大きな割合」を締めているという。

それはアンディー・スイムに限った話ではない。エイトスリープもボンバスも、Facebookへの依存度を下げてはいるが、依然としてマーケティング予算の3分の1が投入されているという。トイ氏は、Facebookに変わりうるひとつのマーケティングチャネルを探すという困難な試みよりも、より有益なリソースの使い道があるはずだと語る。

「Facebookでより上手くやる方法が、変数に一貫性をもたせること、自社商品に一貫性をもたせることだ。そしてこれはFacebook以外のいかなるチャネルについても当てはまる」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)