クッキー黙示録:小売企業にとって、「 Cookie の死」は何を意味するか?

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Googleは今後2年をかけて、サードパーティCookieのサポートを段階的に廃止する。この動きは、一部の小売企業の広告活動に甚大な影響をおよぼす一方、ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)のような大企業が運営するリテールメディアにとっては、むしろ僥倖かもしれない。

サードパーティCookieは、ユーザーやデバイスの振る舞いを複数のウェブサイトをまたいで追跡する小さなコードで、小売企業はこれを活用して、さまざまなユーザーグループに最適のタイミングで広告を配信する。

もっとも一般的な用途は、広告のリターゲティングと行動ターゲティングだ。したがって、GoogleがサードパーティCookieのサポートを段階的とはいえ廃止すると決断したからには、小売企業がウェブ横断的にターゲティングや広告配信を行う際、その手段は大きく制限されかねない。

小売企業のなかには、自社のサイトで提供するエクスペリエンスのうち、内製に向かないものを、サードパーティCookieを運用する外部のベンダーに委託するものがある。ピュブリシス(Publicis)でeコマース事業の最高責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、その一例として、サードパーティのチャットサービスを自社のサイトに統合している小売企業を挙げた。顧客がサポートを求めてチャットサービスに行けば、チャットサービスはこの顧客が小売企業のサイトで閲覧していた商品を知るために、サードパーティCookieを使うかもしれない。

「どんなeコマースサイトでも、ひとたび舞台裏をのぞけば、それぞれのeコマースサービスを構築するために、平均で38もの異なるウェブアドレスに依存している」と、ゴールドバーグ氏は指摘する。「38のアドレスのうち、一部は当の小売企業の所有だとしても、大部分は各種のサービスを代行する外部ベンダーのものだ。そして今日、このような外部パートナーがサービスを遂行する必要上、サードパーティCookieを活用している可能性は十分にある」。

ベンダーとADNWの責任

サードパーティCookieの終焉の兆しは、しばらく前から見えていた。実際、ほかのブラウザもここ数年、Cookieの使用制限に向けて対策を講じてきた。Mozilla(モジラ)もこの例に漏れず、昨年の9月以降、すべてのユーザーに関して、サードパーティCookieをデフォルトでブロックしている。

複数のウェブサイトを回遊するユーザーから、広告主やブラウザが収集できるデータを制限すべきというプライバシー擁護派の声が高まるなかで、サードパーティCookieへの支持は、ほぼ地に落ちたと言っていい。

GoogleがサードパーティCookieのサポートを終了する2022年までの猶予期間内に、何かしらの代替的なソリューションを小売企業に提示するのは、もっぱら、現在サードパーティCookieに依存しているベンダーとアドネットワークの責任となるだろう。

一番得をするのはテック巨人

たとえば、アドテク企業のクリテオ(Criteo)は、2018年に「サードパーティCookieの制限からほとんど影響を受けない」という触れ込みで、リテールメディア向けのソリューションを打ち出した。小売企業との緊密な連携を通じてファーストパーティデータを収集し、これをターゲティングに活用するという。ファーストパーティデータとは、電子メールアドレスなど、顧客が小売企業やブランドに供与したデータ、もしくは顧客の購入履歴から収集した情報などを指す。

小売企業は複数のプラットフォームをまたいでキャンペーンを管理する一方、自社のサイトでは広告枠を販売するが、そのどちらをも可能としているのは、ほかならぬプラットフォームである。クリテオが顧客とする小売企業には、ターゲット、メイシーズ(Macy’s)、ベストバイ(Best Buy)などが名を連ねる。

パフォーマンスマーケティングを扱うエージェンシーウィズイン(Agency Within)のジョー・ヤクエル最高経営責任者(CEO)は、サードパーティCookieの廃止で一番得をするのは、やはりFacebook、Google、Amazonだろうと推測する。 いずれも、ファーストパーティデータを持つ巨大な広告プラットフォーマーだ。

「結果、ブランドのマーケティングミックスに従来ほどの多様性は望めなくなる」と、ヤクエル氏は言っている。

小売大手も影響を受けず

GoogleによるサードパーティCookieの廃止から恩恵を受ける、いわば勝ち組のひとつは、ターゲット、ウォルマート、クローガー(Kroger)のような、独自のアドネットワークを構築する小売企業だ。ターゲットは、昨年クライアントに送ったプレゼンテーション資料のなかで、同社の一番の強みはファーストパーティデータであると謳っている。

ある1枚のスライドはこう指摘する。広告主がCookieのデータから得られるのは、あるユーザーが「おそらく既婚者で、年齢は18歳から35歳」程度の情報にすぎない。他方、ターゲットのアドネットワークなら、ユーザーの正確な年齢や、商品を購入するターゲットの店舗などの情報に基づいてターゲティングができる。

「ファーストパーティデータを確実に掌握している小売企業は、このさきも、全体としてはほとんど影響を受けないだろう」と、グラムスクワッド(Glamsquad)で成長担当バイスプレジデントを務めるモニッシュ・ダッタ氏は編集部に宛てた電子メールで述べている。ダッタ氏は以前、Facebookでプロダクトマーケティングのマネジャーを務めていた。

文脈ターゲティングの台頭

サードパーティCookieが使えないとなれば、小売企業のなかにも、自分たちの商品の広告をいつ、どのユーザーに配信すればよいのか判断するために、何かほかの情報に頼らざるをえないものも出てくるだろう。

アドベリフィケーションベンダーのダブルベリファイ(DoubleVerify)でマネジングディレクターを務めるタンジル・ブカリ氏は、編集部に宛てた電子メールのなかで、「サードパーティCookieの死は、コンテクスチュアルターゲティングの台頭を招くのではないか」と述べている。コンテクスチュアルターゲティングとは、ユーザーが現在訪問中のページに基づいて行うターゲティングをいう。

ブカリ氏の説明を引用するなら、「2時間前に靴を買おうとしていたユーザーにナイキ(Nike)の広告を見せるのではなく、いま現在、オリンピックに関するコンテンツを閲覧しているユーザーにナイキの広告を配信する」のがコンテクスチュアルターゲティングだ。

ゴールドバーグ氏も小売企業の取りうる選択肢について述べている。「チャットサービスや決済処理を代行する外部のベンダーに、ユーザー行動の情報をCookie経由で送らなくても、自社のサイトでベンダーのコードを実行すれば、同様のサービスは提供できる」。

中小の小売企業には困難が

だが問題は、この選択肢には、ベンダーと小売企業の密接な連携が要求されることだ。そしてなかには、相手が大手の小売企業でない限り、そのような連携に消極的なベンダーもいる。

ゴールドバーグ氏の言葉を借りるなら、「よくあることだが、[サードパーティCookieに代わる手段を見つけることは]大きな企業にとっては、さほど難しい問題ではなくても、その他大勢の小規模な小売企業にとっては、やはり一筋縄ではいかないだろう」。

Anna Hensel(原文 / 訳:英じゅんこ)