「主導権を握るのは我々だ」:アドテクを直接管理する、米チョコレートメーカーの思惑

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米チョコレートメーカー最大手ハーシーズ(Hershey’s)は、プログラマティックバイイングをアドテクベンダー1社とだけ行なうと決めた。その効果は、早くも出はじめているという。

同社は2018年の大半をかけてアドテクベンダーを慎重に吟味し、プログラマティック予算を単一のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)で費やす方針に切り替え、今年初頭、米DSPプラットフォーム企業のザ・トレード・デスク(The Trade Desk)と組むことを決めた。

これまでは、メインとするDSPを介して大半の広告を買うとともに、特定のインプレッションにそれぞれ専門のベンダーを使ってきた。だが、この手法はもはや現実的ではない。広告購入に多くのアドテクを使うほど、全入札のトラッキングは困難になる。さらに、各DSPがそれぞれ独自の技術を取り入れているため、複数のベンダーを介して購入したインプレッションの比較や対比は、よりいっそう難しい。しかも、DSPの数が減少しているため、うっかり自分で自分に入札し、結果的に支払い額を高騰させてしまう事態も起きかねない。

「以前は複数のDSPを利用していたが、やみくもに手を出すのを止め、1~2社に絞ることにした」と、ハーシーズのアドレッサブルメディア部門トップ、ヴィンセント・リナルディ氏は語る。「レポートは、すべてを確認する必要があるが、やみくもに手を出していては、際限がない。それを身をもって知ったからだ」。

広告主たちのトレンド

この数年、ほかの広告主も同様の動きを見せている。広告トラッキング企業パスマティックス(Pathmatics)が広告主上位100社を対象に実施した調査によると、2016年から2018年にかけて、広告主が利用したDSPの数は4割減少し、1カ月あたり約4社だった。今回断行したアドテクスタック管理統合がハーシーズのプログラマティックバイイングに及ぼした影響について、リナルディ氏は具体的には明かさなかったが、以前と比べて著しく好転していることは認めた。「DSPの変更にあたり、プログラマティック市場をしっかりと見直すことができた。今年1月の方針転換以来、1年半前と比べて、大いに改善が見られている」。

また、同社は今回の見直しに併せて、広告を掲載するサイトの数も減らした。「評価基準をかなり厳しくしたため、サイト数は大幅に減っている」と、リナルディ氏は語る。現在は、オープンマーケットよりもプライベートマーケットプレイスへの支出がやや多くなっている。ただし、ハーシーズが「オープンマーケットに背を向けるつもりはない。我々のオーディエンスがいるところにフォーカスし、多くを学べる環境だからだ」と、リナルディ氏は語る。

これは、ハーシーズがDSPを自ら管理したことで手にした知見だ。現在、同社の社内プログラマティックトレーダー1名が日々管理にあたっている。これはDSPとの契約条件のひとつであり、したがって、同社がパフォーマンスデータもすべて把握している。こうしたデータはエージェンシーが所有するもの、というのが業界の慣例であり、その結果、広告主がエージェンシーを簡単には切り捨てられない状況が生まれている。

「現在、契約の主導権は我々が握っている。つまりデータを所有できるわけであり、これは我々にとって非常に大きい」と、リナルディ氏。「料金の透明性は重要だが、今回、アドテクパートナーを選ぶ際に、それだけを基準にしたわけではない」。

精通するまでの段階

同社のトレーダーがシステムにログインし、キャンペーンを管理することになる以上、DSPと共有するデータだけでなく、プラットフォームのユーザー体験も選択の決め手になった。また、DSPの入札に関する技術も重要な点だった。たとえば、今回、同社はビッドシェーディングについても考慮したという。オークションの仕組みが頻繁に変わり、不公正なオークションも少なくないなか、これは重要なツールになりうるからだと、リナルディ氏は語る。

この方針転換に至るまでに、ハーシーズはいくつかの段階を踏んだ。第1段階の焦点はプログラマティック広告購入に関する理解、第2段階のそれはサプライサイドプラットフォーム(SSP)およびエクスチェンジを介する広告販売に関する理解だった。「サプライパス最適化(SPO)の実態、そしてそれが実際にはどう見えるのか、そのあたりに注意を払うようになった。泥仕合にはまり込みたくはないからだ」と、リナルディ氏は語る。「透明性は、料金はもちろんだが、一緒に仕事をしている人々にも、新たに組もうとしているチームにも言える」。

ハーシーズには、プログラマティック投資を管理する少数精鋭チームがあり、リナルディ氏と上述のプログラマティックトレーダーのほか、4名のマーケターで構成されている。内訳は、同社のターゲティング戦略を監督するオーディエンスプランナー、ソーシャルメディアマーケター、メディア&インテグレーテッドコミュニケーションプランナー、そしてアドサーバー、入札、同社の広告に関するソーシャルメディアデータのリポジトリを管理するデータサイエンティストだ。ただ、こうした専門家/知識が社内に存在するにも関わらず、同社のマーケターは依然、膨大なインプレッションのキュレーションといった業務などをエージェンシーに任せている 。インベントリのキュレーションは、アドテクの台頭によりパブリッシャーとの距離がさらに広がるなか、エージェンシーがサプライソースに接近し、これを管理するための別手段となっている。

「我々の社内チームが20名や30名になる姿は想像できない」と、リナルディ氏。「もちろん、エコシステムの理解は今後も続けていく必要がある。ただ、パートナーであるアドテクとエージェンシーには変化が見られており、以前とは違い、我々の課題や困難に進んで耳を貸し、その解決に向けて本気で協力していこうという姿勢が感じられる」.

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)