CMO はもはや、マーケティング専門家だけでは通用しない:不安定かつ危険を伴う役職

コカ・コーラ(Coca-Cola)がCMOの役職を復活させたことは、この役職の重要性が認知されたというよりは、この役職が不安定かつ危険を伴うものを示している。

先日、コカ・コーラはマノロ・アロヨ氏をCMOに任命した。3年前、最高成長責任者(Chief Growth Officer:CGO)という新設の役職でCMOの役割を代替したが、それが戻された形だ。アロヨ氏はマーケティングとオペレーション、どちらともに責任者となる。またアジア太平洋地区のコカ・コーラ、プレジデント職も継続することになる。端的に表現すると、世界最大の広告主におけるトップマーケターは、ただのマーケティング専門家であるだけでは十分でないということだ。

CEOはCMOを信頼してない

2017年初頭にコカ・コーラがCMO職を停止したとき、当時メキシコ地域のプレジデントであったフランシスコ・クレスポ氏がCGOに任命された。マーケターであり、コマーシャル部門のエグゼクティブでもあるという立場で、クレスポ氏はコカ・コーラのマーケティング認識を変えた。プロダクト認知をキープするための際限なき追求は、プロダクトがマーケットにおけるリーダー的存在となっているか、それともチャレンジャーか、市場カテゴリーにおける変革者か、に応じてeコマース、カスタマイズ、コンテンツといったほかの分野にフォーカスを置きながら、マスへのリーチを優先する方向を支えるアプローチへと取って替えられた。

最高成長責任者としてより幅広い権限を持ち、クレスポ氏はコカ・コーラのマーケティングを、社が持つ巨大な商業価値にどれだけインパクトを与えているかを明確に指し示すことができるように書き換えた。利益と損失、というアプローチから具体的なプロダクトたちが斬新的に見せる事業成長に注目する、という形だった。彼の就任から3年が経ち、クレスポ氏は退職を迎える。しかし彼の業績は、マーケティングを従来のクリエイティブとメディアという中核を超えた存在へと昇華させる拡張された権限は持っていない形でのCMOが専門に必要だと、コカ・コーラ社に気づかせたようだ。

クレスポ氏も彼の後継となるアロヨ氏も、セールス部門の経験を持つ。リテールの仕組みを理解しており、彼らの前職には地域全体を管理する業務が含まれていたことを考えると、サプライチェーンについても知識がある。役員室におけるマーケティングの権限に疑問の声も挙がっているなかで、このような経験はマーケターがCEOと歩調を合わせることを可能にする。ひとつの会社にCMO職が生まれることは事業成長の展望における変革だと称賛されがちだが、CMOが持つ権限と彼らに投げられる期待は釣り合わないことが多い。アクセンチュア(Accenture)が17の業界で12カ国にまたがり564人のCEOと935人のCMOを対象に行った調査では、CEOの3人に2人はCMOを信頼していない、ということが判明した。

カンヌではもはや満足できない

中核ブランドよりも大きなビジネスに生まれ変わろうとしていたコカ・コーラにとって、従来のCMO職を2017年に廃止したことは当時は必要なことであった。ただクリエイティブ・マーケティング・キャンペーンを展開する以上に、実際にビジネスへの成果を出して見せることにより大きなフォーカスを据えることを意味していた。この認識はマーケティング・ウィーク(Marketing Week)のインタビューでクレスポ氏は「カンヌ・ライオンズ・フェスティバルで賞を勝ち取り、認知を得ることの基本的な要素は、もはや私たちを満足させない」と要約している。

CMO職を廃止してたった3年後に復活させていることからも、コカ・コーラはまだビジネスにとって必要なマーケティングの全貌を管轄するスキルの最適な組み合わせがどのような形であるかを探していることが窺い知れる。

コカ・コーラは「総合飲料企業」としてのポジショニング変更に数年間取り組んでいるが、実情としては成功していない事例も見られてきた。12月初頭には、CEOのジェームズ・クインシー氏はCNBCに、3月に新商品AHAを持ってスパークリングウォーター・ブランドをデビューさせることに触れて、スパークリング・ウォーターブランドの創設に取り組むのが遅すぎた、と語った。CMO職が復活することで、このような失敗が再度起こる可能性を最小限に留められるはずだ。少なくとも、彼の発言からはそれを狙っていることが分かる。

「消費者たちのニーズの変化はどんどんと早くなっている。そして社の反応や適応が迅速であることは非常に重要だ」と、クインシー氏は言った。

ビジネスの守護者という立場へ

長期的な展望も重要視しながら、短期的な成果を出すことへのプレッシャーが増えていることとのバランスをさまざまなビジネスが計ろうとしている。その結果、物事の再評価が広く起きている。このバランスを達成することの難しさを公に認めた広告主たちは多く、そこにはアディダス(Adidas)、Gap(ギャップ)、クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)といった名前が連なっている。結果としてCMOたちが非難の対象として槍玉に挙げられてきた。2019年における企業再編成のなかで、9人のCMOたちがそれぞれの大企業を去っている。Netflix(ネットフリックス)、クラフト・ハインツ、Uber(ウーバー)、リフト(Lyft)はまた、CMO職自体を廃止している。

「CMO職はブランドの守護者という立場から、異なる分野を横断してブランドに関わったビジネスの守護者という立場へと移っている」と、アドテック・コンサルタント企業のアンコモン・ピープル(Uncommon People)の共同ファウンダーであるキーズ・デ・ジョン氏は述べる。「ブランド・ポジショニングにフォーカスを据えたスキルを持っているよりも、CMOたちは常に流動的な状況において異なる専門的分野におけるルールを管理することが求められている。それが人材管理であれ、事業成長に必要なテクノロジーの理解であれ、だ」。

いくつかの企業においてはCMOの役職は最高デジタル責任者や最高データ責任者の台頭によって影が薄くなっている。マーケターたちは自らのデータを所有し、プロダクト化し、ターゲティングの精度を上げ、分析を改善させることにますます熱心に取り組んでいる。それを運営管理するのはデータ責任者だ。CMOは強いデータ環境の恩恵を受けている。

テックとデータが役職の中核に

「近年、CMOは総合的な役割を持つようになり、またビジネスの周辺部へと追いやられ、一定の過小評価を受けてきた」と、ヘッドハンティング企業360xecのCEOのスティーブ・ハイド氏は言う。

シニア・マーケターたちにとってさらに問題が複雑になっているのは、ほとんどの企業がますますデータ管理の改善に取り組もうとしている点だ。この観点から、ユニリーバ(Unilever)は新しい最高デジタル・マーケティング責任者を12月に創設した。ユニリーバ中央ヨーロッパ地区エグゼクティブ・バイスプレジデントのコニー・ブラームズ氏は来月この職に就任する。これはキース・ウィード氏の最高マーケティング・コミュニケーションズ責任者という配陣から離れることを意味する。マーケティングは大量なデータを生み出し、これはCMOにとっての価値も増している。コストのメトリックスと比べられる価値のメトリックスを特定することが出来れば、その重要性はさらに増えるだろう。コストを測るメトリックスは、短期的な視点を促進するように思われるからだ。

「主にeコマース、デジタル事業においてはCMO職は最高デジタル責任者や、企業マーケティング長や、最高収益責任者といった従来の形とは異なるCMO職にとって替わられていることを確認している」と、スターコム(Starcom)のマネージング・パートナーであるポール・カサミアス氏は述べた。「これらすべてにおいて、従来のマーケティング活動に加えて、テックとデータがその役職の中核を成している」。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)