「ブランド企業では、誰も波風を立てたがらない」:ある若いデジタルマーケターの告白

エージェンシーにも苦労はあるが、ブランド側もなかなか厳しい。

匿名を条件に業界の裏事情について赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、大手ブランドに転職した、若いデジタルマーケティング担当者に、ブランドにおける彼女の実体験に関して、話を聞いた。

以下、会話の詳細だ。一部編集してある。

――ブランドで働きはじめたとき、ブランドはどんな感じだった?

私は、大手ブランドの本社で働いた。大きなビルで、何百人もの社員がいたが、なんとも異様な雰囲気だった。とても厳しく、同僚の多くがまるで80年代の会社のようだと言っていた。普通ではとても考えられないような環境で、ドレスコードが厳しく、個性などは、とても発揮できなかった。男性社員がネクタイを着用せずに勤務することが許されるようになったのも、ごく最近の話だ。ヘッドフォンも許されず、デスクに個人の持ち物を入れようものならひんしゅくものだったし、勤務中は勤務時間も厳しく管理されており、クリエイティブなマーケティングというポジションを考えると、おかしな感じだった。

――以前に勤務していた会社とは違った、と?

以前に働いていたエージェンシーは、もっと規模が小さかった。問題こそあれ、とても打ち解けた感じだった。ただ、長時間労働で、大きな成果を求められ、ミスをすると毎回、まるで世界の終わりのように扱われる劣悪な環境だった。だから、ブランドに転職したいと考えた。

――ブランドにはどんな期待をしていた?

ブランドなら、ストレスも少なく、もっとサポートしてもらえると期待していた。仕事自体は、エージェンシーのときよりもずいぶんゆったりとしていた。仕事もとてもシンプルだったし、ブランドの仕事は、ストレスも少なかった。

ただ、体制に関しては、そうではなかった。ブランドには体制があり、その管理体制に従わなければならなかった。上司以外には誰にも相談してはいけなかったし、上司より上の役職の人や自分よりも年長者に相談することも許されていなかった。そのルールを破ると、しかるべき懲罰があった。

私たちは幹部がいるフロアへの出入りさえも許されていなかった。ブランドは、このルールにはうるさく、一種の階級制度のようなものを組織内に構築していた。下位の従業員はみな、出入りが禁じられている上層階に足を踏み入れることのできる高い地位に昇進しようと必死だ。

――それは、尋常ではない

誰もが、こんなことは実に馬鹿げていると考えていた。しかし、この社風は、会社の文化に結びついていた。私と同じ職位の従業員の多くは、自分より高い地位にある人は神だという感じに思っていた。自分たち下位の職位の従業員がする仕事は、重要視されていなかった。誰もがみな、マネージャーになりたがっていた。

――そのあとは、どうなった?

簡潔に言うと、見習いに降格させられた。なぜかはわからない。一生懸命働いていたし、愛想も良くしていた。だから、何が起こったのか理解できなかった。そのため、その理由を探ってみると、最終的に、自分の上司が私の存在を脅威に感じるようになり、私を排除するために見習いに降格させる決断をしたことがわかった。彼女がそうしたのは、この会社の異様な競争的な文化が理由だと思う。

――なぜそう思うようになった?

私は、彼女がフィードバックを求めていたときに、いくつかのベストプラクティスをほかの従業員と共有した。彼女は、私が自分の個性をもっと「つかみどころのない」ようにする必要があると言った。そして、私と同じ職位のほかの従業員も私のことについて不満を言っているのを耳にした。この会社の文化が、私と同じ職位の同僚が私をただちに排除する必要のある競争相手として見なし、力のある役職にある者としての私の上司が自分の職位を脅かす存在として私を見なすという、特異で劣悪な状況を生み出していた。2つのまったく異なる圧力が両者からかけられ、私がそこで成功することはもはや不可能となった。本当に不快だったという以外にない。めったに泣かない私も、この立場に立たされたときは、トイレで何度も泣いた。

――その影響はどんなものだった?

大手企業でマーケティングの仕事をする場合、基本的には使い捨てだということだ。そして、誰も波風を立てたがらない。私は、本来、革新的でさまざまなことを試みるはずのデジタルマーケティングチームで働いていた。しかし、波風を立てない社風があるということは、そうはできないということだ。大手ブランドがイノベーションを起こす役目を果たす、あるいは、状況により迅速に対応するなどと謳っていると、私は滑稽だと思う。そう謳うのは結構なことだが、誰も状況を刷新しようとせず、個性のない職場においては、その実現は困難だ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:Conyac