「エージェンシーに払い過ぎたくはない」:あるプロキュアメントディレクターによる告白

プロキュアメント(調達)責任者はしばしば、無慈悲に買い叩く鬼として、エージェンシーから恐れられている。

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は、その恐怖を事実と認め、自らのそうした慣行のせいで、エージェンシーは陰でこっそり資金を用意せざるをえなくなったに違いないと語る、あるプロキュアメントディレクターに話をうかがった。

読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

――エージェンシーが抱える不満の原因がプロキュアメント責任者にあるとしたら、プロキュアメント担当として、彼らに対してできることは?

エージェンシーが収益モデルを変えた原因は、ある程度だが、プロキュアメント側にある。ようするに、マージンを無理やり切り詰めた結果だ。この状況はたしかに、あるべき姿じゃない。たとえば、私のいまのチームはこれまでのどこよりも広告とマーケティングを重視しており、だからこそ、安値ばかりを求めるよりも、どうしたら投資から価値とリターンを得られるのかを考えようとするパートナーと契約を結べている。エージェンシーやアドテクベンダーに払い過ぎたくはないが、その逆も望んでいない。彼らのことはパートナーとして見ているし、彼らに利益が出なければ、今後、我々と一緒に仕事をしてくれなくなる。

――つまり、これまでとは違う、レミュネレーション(報酬/補償)モデルを考えていると?

従来のコミッションベースのモデルから進歩的な結果ベースのモデルに、いきなり一変させる者はいない。まずはいったん、その中間的な形を取り入れる必要があるはずだ。たとえば、いわゆるフルタイム当量ペイメントもそのひとつで、うちも採用している。適正な報酬モデルに至るための一手段だ――少なくとも、正しくやれば、そうなる。理想を言えば、エージェンシーとパフォーマンスベースで仕事をし、彼らが必要とするマージンとボーナスを支払うのがベストだ。

――エージェンシーの反応は?

うちのエージェンシーに彼らが使うDSPへのアクセスを認めさせるのに、3カ月かかった。交渉では毎回、その件を持ち出した。うちの法務チームも絡めた。それでエージェンシーも一応は折れたんだが、アクセスを認めてくれたのは、すでにお膳立てされている新規キャンペーンだけだった。過去のキャンペーンにはアクセスさせてもらえなかった。いまでも、すべてのキャンペーンの全貌が見えているわけじゃない。契約書には謳われているが、完全な透明性はまだ実現していない。

――プロキュアメントディレクターとして、アドテクへの対応は?

エージェンシーとアドテクベンダーの力関係は微妙なもので、駆け引きが存在する。私に直接影響はしないが、ウチが行なうビジネスにおいて彼らを管理するうえでは、その点を認識しておく必要がある。アドテクの社内政治はよく冗談のネタにするんだが、インベントリーをプリバイ(事前購入)するトレーダーが3段階のコミッションでプログラマティックな取引に固執している市場で仕事をする以上、そこは無視できない。

――もう少し詳しく言うと?

広告主は通常、DSPに対してコミッションモデルで支払うが、それは広告主に安いメディアばかりを追い求めさせることにつながる。それを避けるために、我々はプログラマティックビッド(入札)への報酬方法を変えることを考えている。第一の選択肢は、DSPに対してSaaS (ソフトウェア・アズ・ア・サービス)モデルで支払う方法だ。これの利点はDSPが固定収入を得られることで、そうすればもう、収入が投資に縛られずに済む。広告主にしても、支出を増やすほど、システムを安く使えることになるし、それはコミッションモデルではありえない。第二の選択肢は、勝ったオークションに対する報酬というフィーを考えることだ。それならば、取引への意欲が増すし、サプライチェーンへの投資を考える必要がなくなる。それについて、いま、ベンダーと話を進めている。

――メディアバイイングのインハウス化が進むことは、プロキュアメント担当のあなたにとってプラスになる?

エージェンシーが自分の宿題を自ら採点することには、何の価値もない。すべてを買うことは、我々の意図するところではない――少なくとも、いまはまだだ。すべてを買おうとして、そのための態勢を整えると、必ずや、それに関わるインハウスの固定コストについて、不要分が生じるときが来る。たとえば、キャンペーンシーズン以外の場合がそうだ。そうなると、何の関係もない大勢のトレーダーに直面させられる、という事態が生まれる。

我々はトレーダーが社内で管理するDSPをライセンスしているが、パフォーマンスマーケティングのための社内チームも持っている。つまり、リターゲティングはすべて社内で行なうが、調査は社内チームとエージェンシーの分業にしている。今後のプランとしては、パフォーマンスマーケティングのインハウス化をなお一層進めるつもりでいる。パフォーマンスチームは6人、メディアチームは7人体制で動いていて、後者はエージェンシーとじかに仕事をする。いまは、ウチのエージェンシーが契約を持つ、ベリフィケーション(検証)ソフトウェアの所有権を取りたいと考えている。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)