匿名を条件に本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回DIGIDAYは、マーケターがサイエンスの話題に依然として疎く、データ・サイエンティストに無駄に投資していると語る、ある企業のマーケティング部門に所属するデータ・サイエンティストと話をした。
人工知能やブロックチェーンと同様、データサイエンスは話題の業界用語だ。マーケターは、データサイエンティスト(統計学、微積分学、線形代数を駆使した実験を設計し、テストする者)と、データアナリスト(スプレッドシートを使用してデータに関する戦略を実装する者)の区別において混乱していることがよくある。
匿名を条件に本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回DIGIDAYは、マーケターがサイエンスの話題に依然として疎く、データサイエンティストに無駄に投資していると語る、ある企業のマーケティング部門に所属するデータサイエンティストと話をした。
以下、会話の抄訳である。
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――マーケターはデータサイエンスを理解しているか?
マーケターは、データサイエンティストに要求を出すとき、自分たちが何を求めているのか理解していない。特にデータを扱ったことがない企業の場合、それは未知の分野だ。データサイエンティストの受け入れ準備が整っていない企業は、ひとりの雇用につき1年に10万ドル(約1000万円)を無駄にすることになる。ほとんどの中小企業はデータサイエンティストを必要としない。彼らにはスプレッドシートやデータアナリストを管理する人材が必要だ。マーケターはデータアナリスト、データサイエンティストのどちらが必要なのかよく混乱し、それらの用語をごちゃまぜにして使用している。LinkedIn(リンクトイン)で募集されているアナリスト職の種類を見れば、エクセルを使って仕事ができる人材を求める企業はデータアナリストを探す。しかし、R、Python、機械学習となると、その職種をどう呼ぶかにはこだわらず、データサイエンティストを探している。
――何がマーケターを混乱させるのか?
この業界において、データサイエンスという単語は、漠然として無意味な言葉だ。流行語だが、流行語だからこそ日常的にデータを扱う者なら誰でも、自分自身をデータサイエンティストと簡単に名乗ることができる。彼らのやり方を不正に利用しようとする人間がたくさんいる。それはかつて誰もが購入したがった、ビットコインのようなものだ。そして現在、誰もがデータサイエンティストになりたがっているが、自分が何をしているのかを知らなければならない。「モデル」という言葉でさえ、話をしている相手がデータサイエンティストなのか、マーケターなのかで、話の内容が変わってくる可能性がある。それは単にこの業界の責任というわけではない。
――この混乱を煽っている他の原因は?
コーディング短期集中トレーニングといった、我々の周りに登場する養成スクールは、統計学を知らずにデータサイエンスを行うことができるという考え方を永続させている。ひどい話だ。コーディング短期集中トレーニングは人々を集め、コーディングの方程式を学び、データサイエンティストに仕上げるクラスに入れる。しかし、統計学コースや線形代数コースで学んだことがないので、彼らは実際に何をしているのか理解していない。誰でもLMをR端末に入力して線形モデルを得ることはできるが、線形モデルがどう機能し、実際にどのように予測できるのかを彼らが実際に理解しているということにはならない。
――これによる企業へのダメージは?
大企業がまさに求めている、データサイエンスレベルで行われるさらに上の複雑度と、非学問的な機関によって生み出されるアナリストのようなものの間にすれ違いが生じている。アナリストになるためにほどんど数学を学ばない機関をみれば、そこからは非常に能力の低いアナリストたちが輩出されている。誰でも過去6カ月間の企業の業績を見て、その平均をとってその月の翌月を予測することができるし、そうしているだろう。それは真の予測ではない。能力が低い人材からは、基本的な水準のアナリストしか得られない。だから前月対比のKPIが欠けている会社は、データサイエンティストがの知識が不足しているせいかもしれない。
――マーケティング部門に所属する気持ちは? テック企業でむしろ働きたいと思う?
自分にとって、会社やステークホルダーの意思決定に必要なデータを提供することができれば、自分の仕事を正しくやっているということになる。どこで働いていようとも、会社の一部になれることは素晴らしい。毎日難問を解く。将来の動きをどうやって予測するべきか? ちょっとすごいことだ。人類の歴史を通じて、人々は占い師を好んで利用してきた。
――自分の給与に満足している?
給与は平均より少し下回っているが、それは自分の経験が約5年ほど足りないからだ。企業はその競争力を認識しているので、高収入が見込めるキャリアだ。自分の給与は9万ドル(約900万円)、平均が12万ドルで最高30万ドルまで上がる可能性がある。