業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回ご登場願うのは、は、インスタグラム専門のインフルエンサーエージェンシー幹部だ。彼は、マイクロインフルエンサーは、いずれ弾ける「バブル」だと確信している。
大物インフルエンサーは費用が高くつく。そこでいまは、マイクロインフルエンサーが注目の的になりつつある。
ブログの更新情報を一度に閲覧できるサービス、ブログラビン(Bloglovin’)がマイクロインフルエンサー2500人を対象に実施した最近の調査によると、小規模なインフルエンサーの84%は、インスタグラムへのブランド関係の投稿1件につき250ドル(約2万5000円)以下の料金を請求しているという。一方、そうした投稿のためにブランドは、オーディエンスが100万人~200万人レベルであるインスタグラムのチャンネルに7万5000ドル(約750万円)の費用をかけている。
フォロワー数が多くてもエンゲージメントは低調なことが多いなかで、大手食品・飲料メーカーのネスレ(Nestlé)やスキンケアブランドのニュートロジーナ(Neutrogena)のようなブランドは、少ない費用でエンゲージメントの高いオーディエンスに到達できるとして、マイクロインフルエンサーから売り込みをかけられてきた。
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だが、「小さなものには価値がある」という意見に、誰もが賛成しているわけではない。匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズの今回は、インスタグラム専門のインフルエンサーエージェンシー幹部にインタビューした。マイクロインフルエンサーは、いずれ弾ける「バブル」だと確信している人物だ。
明快な文章にするために、発言内容には少し編集を加えている。
――マイクロインフルエンサーの定義とは?
私の考えでは、オーディエンスの規模というよりも、その姿勢によって定義される。つまり、「マイクロ」という言葉が、フォロワーを抱え、ブランドから金をもらいたいが、それで生計を立てようという野心はない者と認識されている場合の話だ。
すべての男性に無作為に声をかけたり、ブランドのために友人グループ相手に下らない投稿をして報酬を得させようとしているインフルエンサープラットフォームが存在する。そうしたプラットフォームで、100人ほどしかフォロワーがいないインフルエンサーたちを目にしてきた。プレースメント広告コンテンツをもたないこうした普通の人たちのなかで、真に優れたクリエイターは、10%未満にとどまる。普通の人たちは、「よし、金をもらってこの商品を宣伝しよう」と10秒ほど考えてから自撮りをしているだけだ。
――そんなに意識が低いのか?
マイクロインフルエンサーは1ランク下であるように感じる。たしかに、友人グループには影響を及ぼせるだろう。だが、私が製品を売り込むためにフォローするのは、インスタグラムの友人ではなくブロガーだ。マイクロインフルエンサーの場合は、コンテンツが超一流ではない。コンテンツが超一流だったら、もっと多くのオーディエンスがいるだろうから。金をもらって古い商品の宣伝をしているだけの者が大勢いる。
――マイクロインフルエンサーは効果的だと宣伝する企業は少なくないが。
要は、評価基準の問題だ。誰かに50ポンド(約6300円)支払って100人のオーディエンスに到達できれば、安上がりなように思える。だが、ブランドやオーディエンスにとってそれが適切ということにはならない。普通の消費者が商品を宣伝して金を稼げるという考えは魅力的だが、普通の消費者はそこでのルールをあまりよくわかっていない。
――今後、どうなると思う?
我々が事業をはじめた当初、インフルエンサーは5000ポンド(約63万円)を要求し、最終的に300ポンド(約3万8000円)で取引した。料金設定をどうすべきか、わかっていなかった。
マイクロインフルエンサーも、新たに開拓された分野なので、それと同じだった。プロダクトプレイスメントに対する報酬をもらっている人々のこうしたバブルが弾けるときが、やがてやって来るだろう。丸つぶれになると思われる。
Facebookではすでにそうなっている。オーガニックリーチは壊滅状態になり、低品質なコンテンツを投稿する者はブランドにとって価値がなくなるだろう。生き延びることができるのは真のクリエイターだ。
――低品質なコンテンツ以外に、どんな問題があるのだろう?
フォロワー数の水増しはいまだに大きな問題だ。仕組みが整っていなかったときに、水増ししていないはずはないからだ。実際、調査を行うと、志願者の10%前後がフォロワー数を水増ししている。だが、我々が追い求めているような創造的な人材は、おそらく、オーディエンスを売り込むのに、そういうことはあまりしていないだろう。
――ブランドはまだフォロワー数を気にしているのか?
ブランドはいま、フォロワーには何の価値もないことを学びつつある。エンゲージメントの方がごまかしにくい。エンゲージメントがフォロワー数の1%を下回る場合、どういう経路でフォロワーになったのか疑問視する必要がある。だから、コンテンツの質に注目すべきなのだ。
まだ、そうした数字が重視されすぎているが、それらはごまかせる。知り合いのプロの写真家は、フォロワー数が100万人を超えているが、エンゲージメントは1%だ。一目でそれがわかる――投稿に対するコメントがないからだ。ブランドもそれに協力してきたのだと思う。
――では、代わりに何を重視すべき?
業界が成長してきたので、「自分自身がブランドだ」と独自に考える、もっとプロ精神のあるインフルエンサーが増えている。そういうインフルエンサーは、自分の仕事に気を配り、何らかの意味のある創造的なパートナーシップを結んでいる。オーディエンスグループのコンサルタント的な存在と言っていい。
優れたインフルエンサーは腕を上げつつあり、いずれ頂点に登り詰めるだろうが、インチキな存在もたくさんいる。ただ、それをインフルエンサーのせいにすることはできない。自分が何を追求すべきかを知っておく責任は、ブランド側にあるからだ。ばかばかしい金額を支払う愚かなブランドであるなら、価値を得るには値しない。
Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo from ThinkStock / Getty Images