創業215年の消費財企業コルゲート・パルモリブ(Colgate-Palmolive)は、歯磨き粉で若者の消費者を追いかけている。同社は3月19日、「Co・バイ・コルゲート(Co.by Colgate)」という名前のZ世代向け新オーラルケア・ブランドを立ち上げた。
創業215年の消費財企業コルゲート・パルモリブ(Colgate-Palmolive)は、歯磨き粉で若者の消費者を追いかけている。
同社は3月19日、「Co・バイ・コルゲート(Co.by Colgate)」という名前のZ世代向け新オーラルケア・ブランドを立ち上げた。ブランドのD2C・ECサイトとアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)で独占販売されている。歯磨き粉の再発明は、車輪や鉛筆を再発明するようなもので、すでに完成したプロダクトを改善することはできない。しかし、オーラルケア・ブランドたちは、新しいプロダクトは出せていないにもかかわらず、実質的にはヘルスケア製品であるこのカテゴリーを「オーラルビューティ」と呼称し、新しいマーケティングペルソナを作り上げている。
オーラルケアイノベーション部門のブランドマネージャーであるリズ・サスパニック氏によると、同社は12人の従業員で構成されるこの新ブランドを、1年足らずで社内で作り上げたという。新ブランドには8ドルから129ドル(約860円から約1万3900円)の価格帯の7個のプロダクトがある。光沢のある銀色のチューブに入った甘いミント味の歯磨き粉、ピンク色のオムブレカラーのトラベルケースに入った電動歯ブラシと手動歯ブラシ、外出先で使えるホワイトニングペンとキット、汚れ防止の泡式の口内洗浄プロダクト「レイター・ステイン!(Later, Stains!)」などだ。
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「我々が挑戦としているのは、この世代が求めているあらゆる瞬間を活用し、7つの製品コレクション全体を通して、彼らが居る場所にリーチすることで、彼らのニーズを満たすことだ」と、サスパニック氏は語る。「この世代はメンタルヘルスとセルフケアにとても順応している。オーラルビューティ分野は、オーラルケアとセルフケアを融合させた要素がある。この世代はビューティをセルフケアのニーズを満たす方法と考えている」。
ティーンエイジャー向けの製品に機会
この方向性には一定の根拠がある。ソーシャルメディアの時代になり、美容歯科は人気を集め続けている。また、若者は特にその影響を受けている。3000人の8歳から12歳までの子どもを対象にした2019年の調査によると、米国の子どもたちがもっとも夢見ている仕事は「ビデオブロガーまたはユーチューバー」になることだ。しかし、子供や大人向けのオーラルケアブランドやプロダクトは存在しているものの、同じ規模ではティーンエイジャー向けの製品はこれまで存在しなかった。そこで、ムーン(Moon)からラエル(Rael)といったほかのブランドたちがこの概念に着目し始めている。新型コロナウイルスのパンデミックは、オーラルビューティ部門にとっても好機となっている。ユーロモニター(Euromonitor)のデータによると、コルゲート・パルモリブは2019年の米国歯磨き粉販売で第2位にランクされており、P&Gのクレスト(Crest)ブランドに次いで33.4%のシェアを占めている。
コルゲート・パルモリブのバイスプレジデントかつゼネラルマネージャーであるデイナ・メデマ氏によると、同社はCo・バイ・コルゲートを設立する際、複数の世代間の変化を考慮したという。そのなかには、Z世代やズーマー世代(Z世代とミレニアル世代の分かれ目の世代)が好む食品の種類や、買い物をする場所、ブランドに対して重要視することなどが含まれていた。Coは売り上げの一部を慈善事業に寄付する予定だが、詳細はまだ決まっていない。
「私たちはこのターゲット層を念頭に置いて、彼らが何をしていて、どのように生活しているのか、を問いながらデザインをした」と、メデマ氏は述べた。「(たとえば) 人と会ったりデートの準備をするために(彼らが)ペン型の(歯)ホワイトニングツールを使っていることがわかっている」。
目標は顧客層をよりよく理解すること
Coを開発するために、同社のチームは、彼らのいつもの代理店であるWPPではなく、ゲイツ・クリエイティブ(Gates Creative)エージェンシーを起用した。ゲイツ・クリエイティブは、これまで、ポーラズ・チョイス(Paula’s Choice)、レア・ビューティ(Rare Beauty)、フェンティ・ビューティ(Fenty Beauty)に起用されている。彼らのD2Cウェブサイトでは、製品の使用に関するユーザー生成のハウツー動画コンテンツが掲載されている。同ブランドは当初からインスタグラム、Facebook、YouTube、TikTokのブランドアカウントを立ち上げており、「コレクティブ(Co.llective)」と呼ばれるインフルエンサー戦略を以前実施していた。この戦略では、21歳のユーニス・チャン(@NotCheetos:インスタグラムフォロワー数 10万4000人)や21歳のカッサンドラ・デイリー(@ViaCassie:インスタグラムフォロワー数 5000人)など、4人のインフルエンサーを中心に据えていた。だが、コルゲートの広報担当者によると、彼女らのコンテンツはD2Cのウェブサイトやソーシャルチャンネルで紹介されていたものの、現在は活動していないという。
コルゲート・パルモリブもまた、歯磨き粉ブランドであるトムズ・オブ・メイン(Tom’s of Maine)を所有しており、2020年1月にはハロー・プロダクツ(Hello Products)を買収して、ナチュラルな歯磨き粉カテゴリーにおけるシェアを強化した。なお、ハロー・プロダクツはアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)でも販売されている。メデマ氏によると、同ブランドはほかのポートフォリオとは独立して運営されているため、売り上げが競合してしまう心配はないという。
メデマ氏によると、同社はゆくゆくはアルタ・ビューティを越えて拡大するかもしれないという。しかしそれはターゲット(Target)やアルタ・ビューティにおけるショップ・イン・ショップのような、Z世代やミレニアル世代に人気のある小売業者に限られると述べた。同氏は、初年度の販売予測については明らかにしなかったが、初年度の目標は顧客層をよりよく理解することだと述べた。
「私たちは対話を始めたいと思っている」と彼女は言った。「私たちはこのグループの人々を理解し、本当のフィードバックを得て、方向転換をしたり、製品やコミュニケーションを修正して、積極的にチャンスをつかみたいと思っている」。
[原文:Colgate taps into the ‘oral beauty’ trend with new sub-brand for Gen Zers]
EMMA SANDLER(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)