ナタリー・ガーク氏は7カ月前、モバイルマネタイゼーション事業を展開する新興企業ボタン(Button)に移籍し、企業広報責任者に就任。その際、ボタンのCEOはガーク氏に、広報の成果を測定するのに、インプレッション以外のどんな方法を計画しているかと尋ねたという。同社の挑戦を足がかりに、PRの指標における現状を追う。
ナタリー・ガーク氏は7カ月前、モバイルマネタイゼーション事業を展開する新興企業ボタン(Button)に移籍し、企業広報責任者に就任。その際、ボタンのCEOはガーク氏に、広報の成果を測定するのに、インプレッション以外のどんな方法を計画しているかと尋ねたという。
「インプレッションはサイトの実際の規模と結びつけられるが、大きなインプレッションを得る発信よりも、より戦略的な発信の方が価値が高い場合もある」と、ガーク氏は語る。
ガーク氏のチャレンジ
PRソフトウェアのライセンス契約を結ぶ予算がなかったので、ガーク氏は独自の測定体制を組む必要があった。毎日、メディア露出をモニターして分析。Googleで記事を検索して、ボタンの従業員や提携先に言及しているものや、同社幹部の発言を引用しているものを探した。
Advertisement
ガーク氏は、ボタンにとっての重要度に基づきパブリッシャーを分類している。2週間に1度、Googleアナリティクスを使って「セッション(ページ閲覧や、ウェブサイト上におけるeコマース取引などのインタラクション)」を追跡。リンクバックが含まれる記事であればその価値を判定する、と同氏は説明する。
インバウンドの問い合わせが増えることも好ましい指標だ。たとえば1月に、一流媒体がボタンに関する記事を掲載した際、小売業者やパブリッシャーからマーケティングチームへ導入に関する問い合わせが数件入った。「私の基準でこれは大きな勝利だ」と、ガーク氏は語る。
PR成果の測定は難しい
ガーク氏はさまざまな指標を使うことで、自身の仕事を定量化できている。具体的には、問い合わせ、言及、セッション、コンテンツの感情評価、メディア掲載の回数といった指標だ。しかし、個々のメディア掲載からの直接的な売上を示すことは難しい。とりわけ、企業間取引で販売サイクルが数カ月にも及ぶ場合は困難になると、同氏は指摘する。
こうした事情はガーク氏に限った話ではない。デザイン企業インビジョンアップ(InVision App)でPRおよびコミュニケーションのディレクターを務めるリア・テイラー氏も、同様の指標に注目しているが、個々のサイト訪問者、言及、シェアについて金銭的価値を割り当てるのは現状では不可能だと語る。
「PRの成果に値段をつけるのは難しい」と、テイラー氏は語る。「誰かがこの難題を解決してくれるといいのだが」。
外部視点の解決方法
ホックPR(Hokku PR)の創業者チー・ザオ氏はこの件について、外部の広報エージェンシーの観点から考えている。もしクライアントが金額に関連した指標を求めているなら、PR企業への依頼額と、特定のターゲットオーディエンスに向けたマーケティングおよび広告の費用を比較することで、評価が可能になるというのだ。
しかし、PRキャンペーンが実際に影響を及ぼした人数を測定するのは困難だ。記事に特別なリンクを埋め込んでいるか、クライアントがGoogleアナリティクスの指標を共有しないかぎり、特定の記事からユーザーがリンク先に移動したかどうか、移動先がどこかを把握するのは難しいと、ザオ氏は説明する。
「有料マーケティングなしでプロダクトをローンチするなら、ダウンロード数と新規ユーザー数からキャンペーン単独の影響を測定するのはより容易になる」と、ザオ氏は語る。「これまでたびたび、クライアントから、PRを通じて獲得したユーザーの方がはるかに価値が高いとの声を聞いてきた」。
社史の編纂に等しい
PRのパフォーマンス測定がもっとも困難になるのは、企業側が5ドルのFacebook広告の効果を評価するのと同じやり方でPRを評価しようとする状況だと、ザオ氏は指摘する。
「企業がPRに投資することには、長期的な価値がある」と、ザオ氏は語る。「それは本質的に、社史を1行ずつ書きつづっていくことに等しい。30秒広告よりもはるかに長く残る価値があるのだ」。
PR企業、チャンネルVメディア(Channel V Media)の共同創業者であるグレーテル・ゴーイング氏は、クライアントが指標を注視するのは、状況を把握できていないからだと考えている。そこで同社のチームは、パブリシティの過程と対話の状況をクライアントが確認できるダッシュボードを構築。PRの指標を重視しているクライアントに向けて、ソーシャルのフォロワー数増加、新規コンシューマー数、メディア掲載記事からのトラフィックなどをまとめたレポートを発行している。
ただしゴーイング氏は、PRは科学よりも芸術の要素が大きいと考えている。たとえば、クライアントが「ブルームバーグ(Bloomberg)」に載りたいと思っているなら、ブルームバーグの記事に取り上げられれば、たとえその記事があまり話題にならなかったとしても、やはり大成功なのだ。
「PRが成功しているかどうかは、直感的にわかる」と、ゴーイング氏は語る。「実のところ、指標はそれほど重要ではない」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)