2020年、コロナ禍によって世界中の消費者がフィジカルをバーチャルと交換するなか、以前から広がりを見せていたゲームプレイヤーたちのさらなる拡張が促された。ビデオゲームがカルチャーの中心へと進み、プレイヤーが拡大を続ける一方、マーケターはこの動きに迅速に対応し、ゲーマーに対する時代遅れの見方を改めつつある。
2020年、コロナ禍によって世界中の消費者がフィジカルをバーチャルと交換するなか、以前から広がりを見せていたゲームプレイヤーたちのさらなる拡張が促された。
ビデオゲームがカルチャーの中心へと進み、プレイヤーが拡大を続ける一方、マーケターはこの動きに迅速に対応し、ゲーマーに対する時代遅れの見方を改めた。ゲーミング(あるいは観戦)体験を強化すると同時に、彼らにさまざまなブランドを紹介するインタラクティブな広告を創造している。
2021年10月第4週に開かれたDIGIDAY Media Buying Summitにおいて、米DIGIDAYは広告・マーケティング事業大手であるオムニコム(Omnicom)のゲーミング&eスポーツグループであるゼロコード(Zero Code)でマネージングディレクターを務めるダリオ・ラシティ氏に話をうかがった。そして、氏とその同僚らがゲーミング界でシームレスなアクティベーションを(ビデオゲームを手の込んだ広告に変貌させることなく)実践していることを知った。
Advertisement
01 新たなランドスケープへの挑戦
ゲーマーはほかの消費者に比べてブランドの関与に否定的、という思い込みのせいで、一部のマーケターはこれまで、ゲーミング分野への進出に及び腰だった。ラシティ氏によればその状況は依然、いくつか特定のタイトル・種類のゲームについては変わらない一方、ブランドがゲーミング分野において自然にアクティベートできる機会は増加しているという。
「ゲーミング分野にはeスポーツやインフルエンサーなどなど、ゲームそのものとは別の機会も数多くある。それらの機会ならば、ブランドはより柔軟な形で飛び込み、そのコミュニティをサポートし、彼らが見ている、または経験しているものに価値を提供できる」とラシティ氏。「そして、それは間違いなくオーディエンスも受け入れている。私がTwitch(ツイッチ)に行き、サブスクリプションを人々に提供したのと同じようにだ」。
ゲーム内インテグレーションはいまだ慎重な扱いが必要だが、ブランドがゲーム内において現実的手法でアクティベートできる機会は数多くあると、ラシティ氏は語る。「たとえば、自動車はパーツであれ自動車メーカーであれ、カーレーシングゲームにおいてさまざまな形で活用できる、固有性の高い製品の完璧な事例のひとつだ。実際、自動車メーカーによるゲーム内での新車プレビューを見たこともある」。
02 なぜeスポーツ?
ブランドのゲーミング界進出を促す新たな、よりオーガニックな機会の多くは、eスポーツの成長を通じて生まれたと、ラシティ氏は指摘する。「これまで、ブランドはたとえば『いや、うちはマッデン(Madden:人気アメリカンフットボールゲームシリーズ)には入れない。NFLの公式スポンサーじゃないからだ』と、端から諦めていた」。
「だがいまは違う。『さまざまなeスポーツリーグがあるじゃないか。これならうちもイベントを開けるし、ユニフォームにロゴも入れられる。なんなら、イベント(大会)で存在感を示せるかもしれない』というわけだ。このように、以前よりもはるかに柔軟な形でブランドはゲームに関われるようになった」。
さらに、eスポーツとインフルエンサーの両世界は合体しつつあると、ラシティ氏は語る。つまり、大手eスポーツ組織と組むことで、ブランドはコンテンツクリエイターへのアクセスも手にし、対戦ゲームのはるか先にまでリーチできる。eスポーツチームと提携するブランドは「eスポーツの大会やリーグにおける露出だけでなく、チームを構成する重要な要素であるコンテンツクリエイターへのアクセスも買っていることになる」。
03 発見
ゲーマーの「カジュアル」と「コア」という単純な二分化はもはや意味をなさないと、ラシティ氏は指摘する。「いまは、さまざまな種類のプレイヤーが存在する。ビデオゲームおよびゲームカルチャーに特化したメディアであるIGNの調査研究によれば、無料のモバイルゲームしかやらないベリーカジュアルからベリーコアまで、いまや6~8つのカテゴリーがある」。
「マーケターの選択肢は、もはや『どちらか』などではない。自分たちのブランドの特性に応じて、『さて、このプレイヤーたちのなかで、我々に一番フィットしている層はどこだ? このオーディエンスのプロフィールは? モチベーションは? 年齢層は? プレイしているのはどこのプラットフォームだ?』という具合に絞り込んでいける」。
04 アドバイス
- 広告を打つ際は、過去の焼き直しではなく、新たなコンテンツを創造する
ラシティ氏はレーシングゲームを例に挙げて説明する。「ある自動車メーカーの車種がレーシングゲーム内に多数登場していたが、新型モデルの4台だけはまだゲーム内に存在しなかったとしよう。そこにそのメーカーがスポンサーとして参入し、その4台のモデルを無償で提供する。本来はダウンロードコンテンツなどで5ドル(約550円)を支払って購入しなければならない新車だが、スポンサーとして参加することで、プレイヤーたちは無償で手に入れられる。ゲーム内でまったく新しい価値を提供していることになる」。
- 多くの消費者はゲーミングを主にソーシャルな場だと考えている、という事実を見失わない
「これはゲームの新たな利用法のひとつだ。個人的にも、ゲームは友人とのつながりを維持するモチベーションのひとつになっている」とラシティ氏。「そしてこれは、コロナ禍中に一気に増えた、そうだろう? 多くの人がいま、ゲームプレイを通じて友人とつながっているし、ゲームプレイ時間はこの2~3年で急増した。つまり、それだけモチベーションの数も増えているということだ」。
05 ここからどこへ向かう?
eスポーツ組織が今後もクリエイターおよびインフルエンサーの世界から新たな才能を見つけていく一方、ワンハンドレッド・シーブス(100 Thieves)やフェイズ・クラン(FaZe Clan)といった大手チームは「eスポーツ界を越えていく」と、ラシティ氏は予想する。「彼らはすでに文化的組織に近い。たとえば音楽アーティストを擁し、アスリートを擁しているエンターテインメント企業といった具合だ。つまり、eスポーツに留まらない大きな存在に成長し、eスポーツはその基盤的な一要素となる」。
これは、コール・オブ・デューティ(Call of Duty:CoD)やオーバーウォッチ(Overwatch)といった人気タイトルが頑強なeスポーツシーンを築き、対戦ゲームへの注目度が増しつつあるのと同じ状況だと、ラシティ氏は予想する。「たとえば、CoDを買ってウォーゾーン(100名ほどのプレイヤーが最後のひとりになるまで戦い続けるバトルロイヤルモード)をプレイする人は、ゲームしか触れないわけでなく、誰もが巨大な文化基盤に含まれる――つまり、単なる『eスポーツのオーディエンス』よりも広範囲にわたる。ゲーマーの少なくとも25%が、最近は何らかの形でeスポーツに参加している、という統計結果もある」。
[原文:Case Study: How Zero Code is building organic connections with the gaming audience]
ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)