カンヌライオンズ 2019 、共感が生む「新しい熱狂」とは : TikTok Ads 鈴木瑛 氏が語る最新動向

広告やクリエイティブが目指すべきものは、消費や欲求の喚起だけなのだろうか。

2019年6月17から21日、広告・クリエイティブの祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル2019(以下、カンヌライオンズ2019)」が開催された。説明するまでもないが、数ある国際広告賞のなかでも、この広告祭は最大級の規模を誇り、その受賞作は世界の広告・クリエイティブの方向性に多大な影響を及ぼしている。

そのカンヌライオンズ 2019のメインステージでのプレゼンテーションを、今回はじめて行なったのが、ショートムービープラットフォームのTikTok(ティックトック)だ。2017年8月にサービスを開始し、現在全世界で150もの国と地域で展開されている同アプリ。日本国内でも急成長を果たしているTikTokは、メインステージへの登壇のほか、カンヌライオンズ主催のネットワーキングプログラム「CLX」にも協力し、各国のビジネスリーダーによるワークショップを開催した。

「今年のカンヌライオンズは、ビジョンを鮮やかに打ち出すだけでなく、ユーザーを巻き込んだアクティベーションまで踏み込んだキャンペーンが評価されていた」。こう語るのは、TikTok AdsのX Design Center(XDC)を率いる鈴木瑛氏だ。XDCは、TikTokなどの活用を通じて、企業やブランドの課題解決を行うチーム。前職の電通ではクリエイティブディレクターとして活躍し、カンヌライオンズにも過去多数の参加経験がある鈴木氏に、カンヌライオンズ 2019を通して見えた、マーケティングトレンドを聞いた。

ByteDanceの鈴木瑛氏

Head of X Design Centerの鈴木瑛氏

大きな注目を集めたTikTok

1954年に創設されたカンヌライオンズは、世界最大級の広告・クリエイティブの祭典だ。2011年には正式名称が「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に変更され、フィルムやグラフィックといったトラディショナルな広告はもちろん、テクノロジーやPR、SNSマーケティングなど、思想も含めた広義なクリエイティビティにフォーカスするようになった。

「カンヌライオンズは数年に1度、既成概念を崩すような新しい視点や切り口を打ち出したり、領域を拡張してきた印象がある。今回に関しては、これまでのトレンドを引き継ぎつつ、マイナーアップデートされた印象だった」。

そんな今回のカンヌラインオンズにおいてTikTokは、先述のメインステージでのプレゼンテーションや、CLXにおける取り組みのほか、ソーシャル&インフルエンサー部門ではじめてTikTokを利用した受賞作品が出るなど、大きな注目を集めた。

なお、同部門のグランプリは、ウェンディーズ(Wendy’s)の「キーピング・フォートナイト・フレッシュ(Keeping Fortnite Fresh)」。これは、世界で2億人ものプレイヤーが存在する人気オンラインゲーム「フォートナイト(Fortnite)」を利用したキャンペーンだ。

企業のビジョンをコアに、アクティベーションに繋げる

ウェンディーズは、フォートナイトのキャラクター作成機能を利用して、自社キャラクターの女の子を再現。そして、ゲーム内で行われる、バーガーチームとピザチームに分かれて戦うイベント「フードファイト」に参戦した。当然、ウェンディーズはバーガーチームに所属するものと思われたが、なぜかピザチームに所属。そして、ゲーム内の冷蔵庫を探しては、ひたすらそれを壊しまくった。その様子を、Twitch(ツイッチ)でライブ配信を行った動画が話題になったのだ。

このウェンディーズのキャンペーンは、今年のソーシャル&インフルエンサー部門で大本命といわれていた、ナイキ(NIKE)の「ドリーム・クレイジー(Dream Crazy)」を差し置いて、グランプリを獲得。鈴木氏は同キャンペーンについて、「これからの広告・クリエイティビティを考える際のヒントを感じた」と語る。

「一見すると、ただフォートナイトの人気に乗っかっただけの施策に見える。しかし、このキャンペーンを支えているのは、『ウェンディーズは冷凍肉を使わない』というブランドのファクトだ。長年主張し続けている骨太のメッセージに根差しているからこそ、フォートナイトのファンも受け入れて、一緒に楽しんでくれる。最終的に、ゲームの制作者によってゲーム内の冷蔵庫がすべて撤去されるのだが、企業のビジョン、メッセージをコアにしたアクティビティにユーザーが乗っかってアクションを喚起するという部分が素晴らしい」。

ウェンディーズのキャンペーンには、今後の広告を考えるヒントがあったと鈴木氏

ウェンディーズのキャンペーンには、今後の広告を考えるヒントがあったと鈴木氏

オーセンティシティ

カンヌライオンズでは、アワードの発表だけでなく、大小300を超えるセミナーやセッションが催される。とりわけメインステージで開催される基調講演には、注目を集めるであろうサービスや団体、人物が選ばれ、多くの広告・クリエイティブ関係者が観覧する。

そこに今回、TikTok USのブランドディレクターを務めるステファン・ハインリッヒ氏と、TikTokクリエイターとして絶大な人気を誇る、アンドレア・オケケ氏、アンナ・オブライエン氏がスピーカーとして登壇した。以下はそのときのハインリッヒ氏のコメントである。

「彼女たち(オケケ氏とオブライエン氏)は、TikTokを使い、ありのままの自分を表現することで、自分のなかの新しい一面を発見することができたと話していた。そして、それは彼女らにとって喜びであり、セラピーのようであると話していたのが印象的だった。私はCLXでのセッションで、TikTokは『オーセンティシティ(Authenticity:ここでは、ありのまま、嘘のない、リアルなどの意)』を伝えることができるプラットフォームだとお伝えした。彼女たちは自身の体験によって、飾らない、ありのままの自分自身を表現する素晴らしさを語ってくれた。彼女らが共感を集めるのは、そこに『オーセンティシティ』が宿っているからにほかならない」。

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向かって左からオケケ氏、オブライエン氏、ハインリッヒ氏

機会の平等より結果の公平

ハインリッヒ氏が強調したオーセンティシティのほかにも、TikTokが若者の支持を集める理由を理解するうえで欠かせないキーワードがある。「エクイティ(Equity:公平性)」だ。ほかのSNSなどでは、ソーシャルグラフにコンテンツのデリバリーが左右されている。その結果、フォロワー数の多いインフルエンサーや、著名人が投稿したコンテンツばかりがデリバリーされてしまう。一般の人がどれだけ面白いコンテンツを作ったとしても、おそらくインフルエンサーほど拡散することはない。鈴木氏はその状況をインエクイティ(Inequality:不平等)であると指摘。フォロワーの多寡ではなく、コンテンツそのものの価値が評価されるべきだと主張する。

「インフルエンサーも一般ユーザーも、誰もが自由に発信できるという状況は、確かに機会のエクイティ(平等)は保障されている。しかし、フォロワーの数で得られる反応が異なるのであれば、その状況はエクイティとはいえない」。

そこでTikTokでは、ソーシャルグラフではなく、コンテンツグラフを重視。フォロワー数や知名度ではなく、インテリジェントなコンテンツを発見する独自の仕組みを構築している。鈴木氏は「たとえインフルエンサーでなくても、ユーザーが『面白い』と反応するコンテンツを作れば、一夜にして拡散する可能性がある」と語る。

ウィッシュ&ウィムジカル

TikTokについて語るうえで外せないキーワードはほかにもある。従来のマーケティングでは「ニーズ&ウォンツ(Needs & Wants)」を見つけることが大事だったが、現代の消費者は必要なものも、欲しいものもあらかた手に入れてしまっている。そこでTikTokが提唱するのが「ウィッシュ&ウィムジカル(Wish & Whimsical)」だ。

「ウィッシュ」とは、「よりよい世の中に変えていきたい」という想い。「ウィムジカル」は、気まぐれや思いつき、ナンセンスだけど面白いといった意味で、「意味なんてないけど楽しい!」というミーム的な瞬間を現す。鈴木氏は「このふたつを捉えているメディアは、TikTokをおいてほかにない」と強調する。

日本マクドナルドの「#ティロリチューン」や、江崎グリコの「ポッキー&プリッツの日キャンペーン」は、まさにウィムジカルなキャンペーンだ。どちらもあえて商品を語らず、ただ、「楽しい」という1点でユーザーからのエンゲージメントを獲得している。 また、ウィッシュを体現する企画としては、日本赤十字社の「#BPM100 DANCE PROJECT」が挙げられる。胸骨圧迫(胸骨圧迫のテンポは1分あたり100~120回)の適切なリズムがBPM100のリズムと同じことから、そのリズムを、新しい体験手法で知ってもらうプロジェクトだ。

#ティロリチューンのキャンペーン

#ティロリチューンのキャンペーン

今後のカンヌの展開

最後に、これからのカンヌがどのように展開していくか、鈴木氏が思うところを聞いた。「これはカンヌに限ったことではないかもしれないが、今後の広告やマーケティングには、企業の確かな理念にもとづいた、オーセンティックなメッセージを発信し、アクティベーションに繋げることが求められるのではないかと思っている。そこで重要になるのが、そのミッションをどこで、どう消費者と共有するかだ」。

それは、トラディショナルなメディアでの文脈作りなのかもしれないし、フォートナイトにおける、ウェンディーズのキャンペーン、もしくはTikTokを活用したものなのかもしれない。「『オーセンティシティを伝えることができるプラットフォーム』という我々の強みを活かし、企業とユーザーのコミュニケーションをサポートしていきたい」。

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Written by 内藤貴志
Photo by 合田和弘(記事中上から1枚目、2枚目) TikTok Ads(TOP画像、記事中上から3枚目、4枚目)