医療大麻スタートアップのキュラリーフ（Curaleaf）でリテールシニアバイスプレジデントとして務める以前、クリス・メリロ氏はナイキ（Nike）に6年勤務し、店舗のシニアディレクターにまで昇りつめていた。この転職はメリロ氏にとって、職業的なものであると同時に個人的なものでもあった。ナイキで働いていたとき、母親がガンで亡くなり、大麻を使って彼女の痛みを和らげることができたならと感じていたからだ。彼は、消費者にとって快適な環境になるよう診療所を変えるため、自分のスキルをいかに活用できるかを理解していた。

大麻への関心、そして合法化が進むにつれ、メリロ氏は既存のマーケティング業界を離れた他のエグゼクティブと同じように、2027年までに570億ドル（約6.3兆円）を生み出すと予想され、急成長するこの産業に立ち上げから参加することにした。コカ・コーラといった大企業でさえ大麻製品の販売を検討している。

「この市場は短期間に多くの変化を経験することになり、そのなかで舵を取っていくのは面白いと思う。この業界のスピードとエネルギー、そして業界が背負っているもの、つまり人々を助けるという点が気に入っている」と、メリロ氏はいう。

Advertisement

魅了される人々

大麻ビジネスに魅了されたもうひとりがジョッシュ・リヨン氏だ。カナダを拠点とする医療大麻小売業者のトウキョウ・スモーク（Tokyo Smoke）でマーケティングとパートナーシップの担当責任者になる前、彼は広告代理店IMIインターナショナルとDDBで働いていた。常に変化するスタートアップで働く機会に惹きつけられたとリヨン氏はいう。

他の者たちは大麻製品に対する消費者の関心が高まっていることに惹かれている。ウィリアムズ・ソノマ（Williams Sonoma）、ベッド・バス・アンド・ビヨンド（Bed Bath & Beyond）で豊かな勤務経験を持つリチャード・デグナン氏は、新しいフォーフロント・ホールディングス（4Front Holdings）の診療所の一般公開イベントの人気を見て、7月に医療大麻診療所のフォーフロント・ホールディングスのCMOに就任した。

「従来型の小売業界で何年も過ごしたあとで、まず、成長産業であるだけでなく人々を助けることに関わりたいという気持ちになることは、とても感動的だった」と、彼は語る。

大麻業界の魅力

雇用が拡大し、大麻企業への人材斡旋を専門にするバングスト（Vangst）、THCスタッフィンググループ（Staffing Group）、ビリディアン・スタッフィング（Viridian Staffing）といった人材スカウト企業が増えている。

バングストの事業開発マネージャー、アマンダ・ゲレロ氏は、過去6カ月、プロヒビティッド・メディア（Prohibited Media）とメリージェーン・メディア（Mary Jane Media）を含む200のクライアントの多くがマーケターを増やすことに注力していると述べている。コカ・コーラとクラフトフーズ（Kraft Foods）の社員を大麻企業に斡旋したと彼女は述べた。

「大麻は、魅力的でクールだ。マーケターたちは、その業界に魅力を感じている。なぜなら、あまり偏見がなく、中立的なオーディエンスに向けて、売り込む機会があるからだ」と、ゲレロ氏はいう。

マーケターたちは高い給与、ストックオプション、その他の利益を必ずしもあきらめる必要はないようだ。

「昨年の今頃は、大麻業界に入るには給料の減少を覚悟しなければならなかったに違いない。いくつかの犠牲を払わなければならなかった。現在では、さらに多くの企業が資金調達を増やし、従業員の給与パッケージを確立することが可能だ」と、ゲレロ氏は述べた。

「ならでは」の課題

大麻業界に入るマーケターは課題に備える必要がある。マーケターたちは、他の業界とは違って国の規制を常に気にして、ソーシャルメディアプラットフォームの広告ポリシーをしっかりと管理しなければならない。「マーケティングの方法や消費者基盤の働きかけについて、もっとゆったりと、もっとスマートにしなければならない。これからこの点を理解していく」と、メリロ氏は述べた。

アルコールのような規制された業界での専門知識を大麻業界に持ち込む者もいる。スミノフアイス（Smirnoff Ice）、ギネス（Guinness）、ジョニーウォーカー（Johnny Walker）などのブランドを持つディアジオ・ビア・カンパニー（Diageo Beer Company）で以前働いていたヘザー・ボイド氏は、エーカーエイジ・ホールディングス（Acreage Holdings）のバイスプレジデント、チーフプロダクト・イノベーションオフィサーとして9月に就任した。

そのチャレンジングな部分が大麻の魅力のひとつだという者もいる。「スニーカーなら、州が違ってもまったく同じやり方で売ることができるだろう。これは非常に異なる点だ」と、メリロ氏は語った。

Ilyse Liffreing（原文 / 訳：Conyac)