キャンプは5月17日にプレゼントショップ(Present Shop)という新しいオンラインストアを立ち上げた。このストアには、子供によるEC利用に対する課題や不安要素の解消を目論むことはもちろん、子供の個性や親の要望に合わせて何千という商品から適切なアイテムを提案するキュレーション型システムが導入されている。
米国の玩具ブランドのキャンプ(CAMP)は、コロナ禍により5店舗の営業停止を余儀なくされ、EC戦略を急いで進めることになった。
しかし、遊び場の提供やアメニティの充実により、「来店する子供にとっての楽園」を訴求ポイントにしていた同社には、オンライン販売で魅力的なサービスを提供するのは容易ではなかった。さらに、親が見ていないところで子供が玩具を買いかねないというのも懸念材料だった。実際、米国では子供が親の見ていないところでAmazonを使い、2600ドル(約28万円)分のスポンジボブのアイスキャンディー計51箱を買ってしまったというニュースが話題になったこともある。
キャンプは5月17日にプレゼントショップ(Present Shop)という新しいオンラインストアを立ち上げた。このストアには、前述の課題や不安要素の解消を目論むことはもちろん、子供の個性や親の要望に合わせて何千という商品から適切なアイテムを提案するキュレーション型システムが導入されている。
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このストアが画期的なのは、子供たちが、自分のみならず友人や両親、兄弟の誕生日や母の日、父の日といった特別な日に、一番良いと思うプレゼントを自ら考え、選べる点にある。また、実店舗でもキャンプはテレビゲームのような体験を提供してきたが、プレゼントショップも同じような「楽しい体験」を追求している。
CEOのベン・コーフマン氏は次のように述べている。「キャンプを訪れる人たちは、ショッピングすることではなく、キャンプの体験を求めて来店している。Amazonやウォルマートで買えるバービーを、ただ同じように売るつもりはない。当社が目指すのは、カスタマーに実店舗と同じようなデジタル体験をお届けすることだ」。
体験型オンラインストア、プレゼントショップ
プレゼントショップを利用するには、まず大人がプレゼントの送り先の住所を記入し、さらにギフトカードのような固有のコードを生成するクレジットを購入する。このコードを子供に渡せば、彼らは店内で使える一定数のトークンを受け取り、ゲームセンターのプライズカウンターのように楽しんでプレゼントを選ぶことができる。
子供がサイトへ訪問すると、クマのマスコットが、誰のためのプレゼントを買うのか、その人が好きなものや食べ物は何か、といったことを質問してくる。それに答えると、最適と思われる数十種類の商品が提案される。トークンを使い切ったあとは、プレゼントに添えるプレゼントカードを選んで中身をカスタマイズできる。このカードと贈り物は、特別感のあるプレゼント箱に封入されて送られる。
現在、プレゼントショップのシステムは特許出願中だ。カウフマン氏によると、すでに複数社から自社サイトに同技術を組み込みたいとのオファーも届いているという。だがキャンプはライセンス供与を行うつもりはなく、今後も同社のみで見られるサービスとなりそうだ。
実店舗より効果的な顧客との接点
キャンプがはじめて体験型のECサービスを展開したのは、2020年のクリスマスシーズンだった。米国で一般的なプレゼント交換をバーチャルで行うサービスとして始められ、大きな人気を博した。カウフマン氏によると、3週間の開催期間のうち、ピークとなったクリスマスイブには1日だけで2万人が利用し、最初の10日間だけで合計100万ドル(約1億800万円)もの売り上げを記録しているという。
このサービスが終了してすぐに、カウフマン氏のチームは次のECサービスに取り組み始めた。そして完成した今回のプレゼントショップは、今後も永続的に展開していく予定だという。「プレゼントショップのアイデア構想と技術スタックの構築に5カ月もの歳月をかけた」。
「しかしプレゼントショップができたことでスケーリングが可能になった。キャンプの実店舗を作るには、非常に時間がかかる。だがオンラインであれば、多くの顧客を短時間で呼び込める」と、カウフマン氏はいう。
また、スポンサー契約の可能性について、「将来的には考えられるが、ローンチ時点の現段階ではスポンサーはないし、優先度も高くない」と、カウフマン氏。「あくまでも重視しているのは、1年を通してプレゼントショップをご利用いただけるようなロイヤルカスタマーを増やすことだ」。
プレゼントショップの課題
「一番の難関は『親の理解を得られるか』だろう」。そう分析するのは、ベン・ゼトラー・デジタルメディア(Ben Zettler Digital Media)の創業者で、デジタルマーケティングおよびECコンサルタントを務めるベン・ゼトラー氏。
現在、米国ではオンラインプラットフォームへの風当たりが強い。個人情報や精神衛生上の懸念があり、子供がインスタグラムなどを使うのは悪しき行為として敬遠する声が、親をはじめ政治家の間でも高まっている。ゼトラー氏は、「キャンプはまず、安全を最優先したサービスであることを証明し、子供を持つ親を納得させるべきだ」と指摘する。
プレゼントショップは、ローンチからしばらくはインスタグラムやFacebook、YouTubeなどのSNSで、「大人向けのプレゼント」などの検索ワードも活用しつつ、とりわけ子供に関する安全上の懸念を払拭するような動画広告を展開していく予定だ。
ゼトラー氏はいう。「子供はプレゼントショップを気に入るだろう。とりわけ、そこへ入れる『鍵』を渡されるという仕組みは子供心をくすぐるに違いない」。
[原文:CAMP wants to patent e-commerce for kids with its new Present Shop]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)
PHOTO COURTESY OF CAMP