「ブラウズ コマース の時代は、まさにいま終わった」:ステラ&ドット創業者のジェシカ・ヘリン氏

新型コロナウイルスの影響が経済全体に及ぶなか、依然として何百万人ものアメリカ人が職にあぶれており、その多くはほんの数カ月前までしていた仕事に戻れそうもない

こうして生じた、いわば「雇用の穴」を埋めようとする企業も現れている。たとえば、ステラ&ドット(Stella & Dot)や同社のスキンケアブランド、エヴァー(Ever)、アクセサリーブランドのキープ(Keep) は化粧品や衣服、ファッションアクセサリーなどを販売することに意欲的で、能力のある人に、ギグエコノミーの仕事を提供している。

「ステラ&ドットは失業率8~9%の際(2008年の経済危機)に本格的な成長をはじめた。ある意味、我々のビジネスは経済状況に対して逆循環的とも言える。景気が落ち込み人々が現金をよりいっそう必要とするときに、ただ販売を希望する人が増えるだけでなく、積極的に販売してより高い収入を得る人々も増えるからだ」と、ソーシャル販売専門のアクセサリーブランド、ステラ&ドットの創業者CEOジェシカ・ヘリン氏は米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)の「ビューティー・ポッドキャスト(Beauty Podcast)」で話した。

同社には「アンバサダー」と呼ばれる販売員が約3万人いるが、毎月積極的に販売しているのは8000~1万人だと、ヘリン氏は語る。

新型コロナウイルスの感染拡大以前、ステラ&ドット、エヴァー、キープの3社は販売員をデジタルプラットフォームと連結し(ショッピファイ[Shopify]、ピンタレスト[Pinterest]、ポリヴォア[Polyvore]」に触発されたという)、各々がキュレートした商品を取り揃え――つまり、デジタル上に店舗を構え――顧客にeメールなどで売り込みをかけられるようにするためのシステム構築に5000万ドル(約53億円)を投じていた。そして、この先見性こそが今を生きのびるための重要な鍵となっている。

以下に発言の抜粋をいくつか紹介する。読みやすさを考慮し、多少編集を加えてある。


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ステラ&ドットがAmazonにも路面店にも勝る理由

「我々は常に3つの自問をして成長してきた。もっとも重要な第1の問いは『いましていることは弊社の使命である、あらゆる女性の経済的エンパワーメントのためになっているか?』だ。第2は『この商品は入手に値するのか?』。一度購入するだけでなく、くり返し買い求め、人に勧めるに値するか? 最後は『カスタマーエクスペリエンスは、テクノロジーが可能にする配達法は、人々の時間とお金を節約し、彼らに喜びをもたらしているか?』。この3つを総合すれば、我々の提供するショッピングがなぜAmazonでのショッピングよりも、街まで買物に出かけるよりも、大手eコマースサイトで買うよりも優れているのかは自明だ。私にいわせれば重要なのは差別化の創造であり、新しい何かを創造するにはあらゆる分野に対して惜しみなく投資する必要がある。実際、我々が構築したデジタルプラットフォームは新しいリテールやeコマースのあり方だと確信している。ブラウズコマースの時代は、まさにいま終わった。ウェブサイトを訪問して気になるものを一つひとつ検索し、出てきた1000個もの選択肢のなかから嘘か誠かわからないレビューを参考に選んでいくのと、自身の好みに応じてキュレートされた商品リストを1通のメールでもらうのと、どちらがいいのか? 答えは聞くまでもない。我々のモデルの場合、そうしたメールはアンバサダーが送る。テクノロジーこそ利用しているが、人の手でパーソナライズされたレコメンデーションにほかならない」。

リテールの一部はとどめを刺された

「リテールに突然危機が訪れたわけではなく、以前から困難な状況にあった。この業界は持病のある患者のようなものだ。ショッピングモールのトラフィックはすでに落ち込んでおり、デジタルへの移行が起きていた――この流れはコロナによってますます加速するだろうが、いずれにせよ考えるべきは、何が顧客のためになるのかだ。自社の商品は他社よりも優れているのか? 自社のデジタルエクスペリエンスは革新的なのか? それができる企業だけがこの苦境から成長し、勝利を収められる」。

ステラ&ドットと連鎖販売との違い

「我々の販売モデルに対して人々がマイナスイメージを抱く理由は、在庫の問題がつきまとった悪しき時代――そして悪しき人々――を連想してしまうことにある。かつて横行していた連鎖販売のシステムは、まずは転売目的で商品を購入させられ、さらに同じ目的を持った別の誰かを引き入れてようやく報酬を受け取れる、というものだった。このモデルはピラミッドのような階層組織を形成するだけで、低層の人々は物置にいっぱいの在庫を抱え高額のクレジットカードの支払に毎月追われ、現金はまったく入らなかった。しかし、我々は創業当初からそのリスクを完全に排除している。アンバサダーには在庫を持つことを認めておらず、商品は我々が直接顧客に発送する。つまり在庫を抱えたくてもやりようがない。また、新たなアンバサダーを紹介しても報酬は支払わない。真正な(購入する意思のある)顧客を紹介した場合に限り手数料を支払い、その顧客は無料で返品できる」。

Zoomの普及でピアスが大ヒット

「最近の傾向で興味深いのは、いわば『Zoom映え』するアクセサリーの人気だ。実際、ピアス類が爆発的に売れている。5月にサマーコレクションを発表した際は、在庫量から想定して8週間は(在庫が)保つと予想していた。ところがわずか2日で底を尽き、当初恐れていた需要ゼロと正反対の現象が突然起きた。これはアンバサダーがより積極的に活動し、より多くの人が彼らの店舗に登録した結果だ。たとえZoom画面越しにしか人と会えないとしても、マスクをして近所を歩くくらいしかできないとしても、手頃な価格で手に入る、明るい気持になれる手段で自分らしさを表現したい、少しでも楽しく毎日を過ごしたいと、多くの人が考えたからにほかならない」。

[原文:Stella & Dot founder Jessica Herrin: ‘Browse commerce is just done’

(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)