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保険会社トラベラーズは、なぜ アメコミ を作ったのか?:「Zホークの伝説」制作の背景

コミックブックのアーティストたち、ミュージシャンやライフスタイルのインフルエンサーなどを利用したマーケティングを構築し、大手保険会社トラベラーズ(Travelers)は新しいオーディエンスにリーチしようとしている。この1年のあいだ、ペイドとオーガニックの両方インフルエンサー戦略を活用して、若いオーディエンスの注目を得ようとしてきた。

それによって、トラベラーズの従来のマーケティング方法では、ターゲットから漏れる可能性のあるオーディエンスにリーチできるようになっている。インフルエンサーをマーケティング手法に加えることで、ミレニアル世代やZ世代の消費者たちにとっての保険プロダクトとして売り込める可能性が高まるだろう。これらの世代はますます、個人で保険を買う年齢へと達してきているからだと、インフルエンサーマーケティングの専門家たちは語る。

デロイト(Deloitte)による2015年の研究では、結婚、出産、自宅購入といった大きな人生のイベントは、保険購入の典型的なモチベーションとなる、となっている。

「インフルエンサー戦略は我々にとっては、少し新しいものだ」と、トラベラーズのエンタープライズ統合マーケティング部門シニア・バイスプレジデントを務めるジョン・モリス氏は言う。「新しいオーディエンスにリーチするために我々は有料形式でインフルエンサーたちと取り組む。新しいマーケティング手法の組み合わせの一環として、より注意を払い始めた項目だ。これによって、通常であれば到達できないかもしれないオーディエンスを引き込める」。

コミック作品「Zホークの伝説」

最近では、ニューヨークのクリエイティブ広告エージェンシーのTBWA/シャイアット/デイ(TBWA/Chiat/Day)とトラベラーズは、コミッククリエイターであるゲイル・シモーネ氏、ジム・カラフィオーレ氏、そしてジェフ・ヴェレッジ氏を起用した。彼らのチームは「Zホークの伝説(The Legend of Z-Hawk)」という新しいコミック作品を制作。この作品は2015年に運転手の不注意運転が原因で交通事故で亡くなったコミックが大好きだった3歳児、ザーディ・ツォくんへのトリビュートとして発表された「未完の物語(Unfinished Story)」の一部となっている。

現在、トラベラーズが展開している広告キャンペーン「未完の物語」は、運転手の不注意運転が原因で命を落とした人々が、今も生きていたら彼らの人生はどうなっていたか、を想像する内容になっている。

シモーネ氏は先日、彼女の16万人のTwitterフォロワーに向けてオーガニックに作品を投稿した。それ以来、作品は160万のオーガニックインプレッションを獲得し、2000回のリツイート、そして200以上のリプライがついている。これまでのところトラベラーズにとっては、完全にオーガニックなインフルエンサー戦略は、このザーディくんを主人公にしたコミックのみとなっている。

トラベラーズはキャンペーンのフォーカスが何かに応じてインフルエンサーを探すのが通常だ。たとえば、2019年にトラベラーズが「未完の物語」で、同じく不注意運転によって命を奪われた若い女性、シュレイヤ・ディクシット氏を扱ったとき、音楽業界の5人のインフルエンサーに報酬を支払い、Facebookとインスタグラムでの認知向上を手伝ってもらった。彼らによると、これによって220万以上のインプレッションと77万9794の再生回数を獲得したとのことだ。

「メディア消費は大きく変化した」

メディア予算の内訳や、支出を項目別に説明することはモリス氏はしなかったため、トラベラーズがインフルエンサーマーケティングに費やしている金額は明確ではない。しかし、インフルエンサーマーケティングが占めているのは、「支出のうち比較的小さい部分」であり「時間とともにそれが増えるかどうかはチャンネルの効果による」と述べた。「我々はすべてを計測している。チャンネルの効果が高い事が確認できれば、さらに支出を高めるだろう。しかし、今はまだ時期尚早だ」。

カンター(Kantar)によると、2020年1月から6月まで、トラベラーズは740万ドル(約7.7億円)をメディアに支出している。同じくカンターのデータでは、2019年のトラベラーズのメディア支出は453万ドル(約4.7億円)となっている。彼らはソーシャルメディアチャンネルをトラッキングしないため、ソーシャルメディア支出はこの金額には含まれていない。

インフルエンサーマーケティング・エージェンシーであるスウェイグループ(Sway Group)のファウンダーでありCEOのダニエル・ワイリー氏は、「トラベラーズのような古く、伝統的な企業がインフルエンサーマーケティングを起用することは重要だ」と述べる。「オーディエンスが年齢を重ねるなかで、ブランドたちは継続して若い世代を引き込むことが重要になる。そしてメディア消費は大きく変化したのが事実だ」。

ミレニアル世代とZ世代はテレビを見る傾向が低く、代わりにインスタグラムやTikTokのようなプラットフォームを利用する傾向が高い。インフルエンサーを通して、これらのオーディエンスにリーチすることはワイリー氏にとっては、理にかなっていると考えられる。

慣れ親しんだ場所を飛び出して

インフルエンサーマーケティング協会のエグゼクティブディレクターを務めるクリスティ・サミス氏はこの意見に同意して、次のように語った。「若い傾向を持つインフルエンサーを起用することは、トラベラーズが(大人へと)年を重ねるオーディエンスに共感できるメッセージで持ってリーチできる賢い方法だ。何よりも、『保険』という抽象的な概念を取り上げて、誰もが、たとえ若い人であっても、本当に考えなければならないこととして、アピールしている。『年配の白人男性のゴルフトーナメントにおける広告』の領域から飛び出して、若い人々が耳を傾け、エンゲージしているソーシャル分野で会話を引き起こしている」。

[原文:‘Bring in the younger generations’: Inside Travelers’ influencer marketing strategy

KRISTINA MONLLOS(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)