コロナ禍によってECを優先する企業が多いなか、実店舗をあきらめていない美容ブランドも存在している。7月第4週、スキンケアのビークマン1802(Beekman 1802)は米美容チェーンのアルタ・ビューティー(Ulta Beauty)との提携を発表した。
コロナ禍によってECを優先する企業が多いなか、実店舗をあきらめていない美容ブランドも存在している。
7月第4週、スキンケアのビークマン1802(Beekman 1802)は米美容チェーンのアルタ・ビューティー(Ulta Beauty)との提携を発表した。7月26日からオンライン販売を開始する一方、8月9日からは400店舗でも販売される。同ブランドはアルタの新しいブランドプラットフォームであるスパークト(Sparked)で展開される。同プラットフォームでは「ピュアゴートミルクソープ」や「ピュアデオドラント」といった主力製品の販売を予定している。さらにプロバイオティクスや山羊のミルクをテーマとした新製品の開発、新パッケージの導入なども進められる。ビークマン1802はこれまで自社のECサイトを持っており、米国とカナダの2000店舗で商品販売を行ってきたものの、売上と知名度のほとんどをテレビショッピング専用チャンネルのQVCおよびHSNに依存してきた。2019年、同社のD2C収益は全体の2割、小売は8割を占めていた。
ビークマン1802の共同創業者でアルタのマーチャンダイジング担当リーダーを務めるジョシュ・キルマー・パーセル氏は「アルタとセフォラに注目して話し合いを進めてきた。いずれも異なる特徴を持ったユニークなプラットフォームだが、アルタには私たちのブランドの大ファンがいた」と振り返る。「現状では、アルタのほうがショッピングするには、はるかに安全な環境だ。今の美容業界で優れた販売チャネルを見出しているのはアルタだろう。米国の美容小売の最大手として信頼している」と、キルマー・パーセル氏はアルタの店舗のCOVID-19対策が優れており、小規模なショッピングモールに強い点などを挙げている。
Advertisement
「あらゆる流通チャネルを堅牢に」
ビークマン1802はライフスタイル企業として本やホットソース、ジャムなども販売しているが、2019年の収益は美容商品が9割以上を占めている。またコロナ禍によって、同社のEC収益は倍増している。
ビークマン1802の共同創業者ブレント・リッジ氏は今、どのロケーションが同ブランドの商品販売に最適かを真剣に検討した結果、郊外に多くの店舗を展開しているアルタがより強いだろうという結論に達したという。
さらにアルタは同社にとってデモグラフィック面でもメリットが大きかった。QVCやHSNでは35歳から64歳のオーディエンスが中心なのに対し、アルタはZ世代が多い。パイパー・サンドラー(Piper Sandler)は、美容商品を求める若い買い物客がアルタをセフォラやAmazonよりも上に位置づけていると分析している。
キルマー・パーセル氏は「ビークマン1802自体は知らなくても、私たちのスキンケアのコンセプトに興味を持ち、愛してくれるようなZ世代をいかにつかまえるかが重要だ」と語る。パーセル氏とリッジ氏は2019年から、ロレアル(L’Oréal)のキールズ(Kiehl’s)やピュアロジー(Pureology)などに14年間携わったブラッド・ファレル氏を新CMOに、サンデーライリー(Sunday Riley)とタッチャ(Tatcha)で教育担当リーダーを務めたジャスティン・ホプキンス氏を教育担当バイスプレジデントに迎えた。両名はマーケティングとSNSのアップデートや、アルタにおける新製品の展開を担当している。「今年は生き残りをかけた年だ。これまで以上にあらゆる流通チャネルを堅牢にしていく必要がある」。
リテーラーサイドからの意見
Nécessaire(ネセセール)をはじめ、コロナ禍の前には実店舗にほぼ依存していなかった美容企業であってもダメージは大きく、ネセセールは6月にセフォラとの提携を発表している。セフォラやアルタとの提携は魅力的だが、投資を受けることもひとつの選択肢となっている。ネセセールは昨年の終わりにVMGパートナーズ(VMG Partners)からの資金調達を受けている。ビークマン1802もまた投資企業との話し合いを進めているものの、7月第4週にキルマー・パーセル氏とリッジ氏は同ブランドはあくまで自己資本で運営していくと述べている。
ビークマン1802はスパークト以外にも、アルタが7月第3週に発表した新プログラム「コンシャス・ビューティー(Conscious Beauty)」にも参加している。同プログラムはクリーンな成分や残酷なプロセスなしで抽出できる成分、ビーガン向けの成分、持続可能性を大切にした包装をテーマとしている。アルタ・ビューティーの最高販売責任者モニカ・アーノード氏はこの取り組みについて、買い物客を店舗に呼ぶために効果的だとしている。
「我々はビークマン1802の大ファンだ。彼らの製品は成分に細心の注意を払っており、非常に効果の高い山羊のミルクや独自に栽培した植物成分を使用している。クリーンで生物や環境に優しい美容商品というのは当社にとって極めて重要だ。今、スキンケアやヘアケア、頭皮ケアの分野において、このテーマへのカスタマーの関心は極めて高い。誰もが家にいて、健康に非常に気を使っているからだ」とアーノード氏は語る。
エシカルな動きでも呼応
ビークマン1802はスパークトを立ち上げるにあたって、アルタが10月に開始する「コンシャス・ビューティー」にも名を連ねている。すなわち同プログラムが不使用を謳っている成分を使用しない製品を作っていくということだ。同プログラムにはクレドビューティ(Credo Beauty)をはじめ多数のブランドが参加しており、ECや実店舗での商品販売が行われる。
アーノード氏は次のように語った。「これまでも、そしてこれからも化粧品は当社の事業において中核的分野であり続ける。そんななか健康や入浴、スキンケアの注目が高まっており、アルタはこの分野も成長戦略の柱として位置づけている」。
[原文:Brick-and-mortar retail hasn’t lost its allure among beauty brands]
PRIYA RAO(翻訳:SI Japan、編集:長田真)