ロブロックス(Roblox)2021年第4四半期におけるユーザー数の急増は、ブランド勢の関心を高めている。ただし、経験の浅いブランドにとっては、どの道を進むべきかの判断が難しいこともあるだろう。すぐに思いつくのはバーチャルアイテムの販売だが、選択肢はほかにもある。
ロブロックス(Roblox)は、2021年第4四半期の日間アクティブユーザーが平均4950万人に上り、前年比33%を記録したと、2022年2月第3火曜の晩、最新のアーニングレポートで発表した。ユーザー数の急増は、当然、同社への関心も高めている。
ただし、経験の浅いブランドにとっては、どの道を進むべきかの判断が難しいこともあるだろう。すぐに思いつくのはバーチャルアイテムの販売だが、選択肢はほかにもある。ロブロックスでのアクティベーション(活動)を模索するブランドが取れる主な手段は3つある。すなわち、既存のエクスペリエンス(経験)への参加、期間限定スペースの創造、そしてブランド名を冠した継続的な場の構築だ。
既存のエクスペリエンスへの参加
「ブランド勢がたどる典型的な軌道がある」と、ロブロックスのチーフビジネスオフィサー、クレイグ・ドナート氏は語る。「まず、多くのブランドはシンプルに、バーチャル商品を携えて入ってくる。グッチ(Gucci)も我々のプラットフォームに来た際は、ごく普通にバーチャル商品を提供することから始め、それで大きな成功を収めた」。
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ロブロックスにおけるブランド名を冠したバーチャルアイテムの多くは、同プラットフォームのアバター・マーケットプレイス(Avatar Marketplace)にアップロードされており、プレイヤーはロブロックスでのエクスペリエンスにそれらを無料で利用できる。既存のロブロックスコミュニティ内でアクティベーションするべく、ブランド勢は有力なプラットフォーム内デベロッパーとのコラボレーションを展開している。
人気の警泥的鬼ごっこゲーム「ジェイルブレイク(Jailbreak)」にNASCAR(全米自動車競争協会)が最近進出したのは、その一例だ。同協会はジェイルブレイクのデベロッパー集団バディモ(Badimo)と提携し、同ゲームにNASCAR仕様のレースカーを投入した。
期間限定スペースの創造
「次の展開は、我々がエフェメラル・エクスペリエンス(暫時的な経験)と呼ぶものだ」とデナート氏。「これは基本的に販促の性質を帯びており、期間は数週間から数カ月となる。実際、グッチはこれに移行した。彼らはフィレンツェでファッションショーを主催し、そのバーチャルバージョンを我々のプラットフォーム内で行った」。
1番目のアクティベーションと異なり、期間限定のこのタイプはブランド専用のスペースで利用される。たとえば米人気ファッションブランド、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)のウィンター・エスケープ(Winter Escape)も然り。これは2021年12月8日から2022年1月3日まで実施された。一部の専門家によると、ロブロックスのアクティベーションのなかでは現在、このタイプがブランドにとってもっとも有用だという。
「我々は現在、1~2週間限定のものを軸にしたゲーム内エクスペリエンスへのフォーカスを強化している」。そう語るのは、ロブロックスの開発で知られる有名デベロッパー、ゲームファム(Gamefam)と提携するデジタルメディア企業ワイルドブレイン・スパーク(WildBrain Spark)のVP兼グローバルアドバタイジング部門トップ、チャールズ・ガブリエル氏だ。「これの素晴らしいところは、独占性という、多くのブランドが望んでいるであろうものを創出できる点、そして、希少性のようなものを創造できる点だ。一定期間の週、週末、あるいは休日に、多くの人々が当該ブランドおよびそのアクティビティをこぞって探し求めることになる。ブランド勢はそろそろ、時代の先読みを本気で始めたほうがいい」。
「これは比較的容易に実行できる」と、デナート氏も期間限定アクティバーションについて語る。「まさに新たなメディアだ。双方向のエクスペリエンスの創造はブランドの仕事ではない。誰かの目を数週間だけ引くものを創るのは、ブランドにとって十分に実行可能だ。ただ、誰かの目を数カ月にわたって引くものを創るのは極めて難しい」。
ブランド名を冠した継続的な場の構築
そして、継続的ブランドスペース、3つ目のロブロックスアクティベーションだが、これは、季節限定・時限付きアクティベーションと比べて、ブランドにとってハードルが高い。たとえば、米有名スポーツカジュアルブランドのナイキ(Nike)とヴァンズ(Vans)はそれぞれ、継続的な没入型(イマーシブ)スペース、ナイキランド(NIKELAND)とヴァンズ・ワールド(Vans World)を構築したが、プレイヤーのエンゲージメントを維持するため、オリジナルコンテンツによる同スペースの絶え間ない刷新を余儀なくされている。「これは言うなれば、次世代のソーシャルメディアに近い」とドナート氏。「我々は現在、存在感(プレゼンス)に投資している。たとえば、せっかくインスタグラムを始めても、写真を5枚だけアップして、それで止めてしまっては、なんの意味もない。これは常に変わることへの、常にエクスペリエンスをアップデートすることへのコミットメントであり、ブランド勢のあいだでもこれに取り組もうとする姿勢が見え始めている」。
ブランド名を冠する継続的スペースがロブロックスのほかのアクティベーションよりも高いリフトであることは間違いない。だが、それだけでなく、これには極めて重要な存在になる潜在力もある。最近では、どの主要ブランドも、あらゆる有力ソーシャルメディアにプレゼンス(存在感)を保持するのが当然となっており、近い将来、継続的な没入型バーチャルスペースを持つことがブランドにとって同じく常識となることも十分に考えられる。
「ブランドの学習曲線における重要部分のひとつは、プラットフォーム内に独自のスペースを築くなら、長続きする要件について考える必要がある、という点の理解にある――つまり、我々がいかにしてこの世界を築き、投資し続けているのか、その点をよく考える必要がある」と、ロブロックスベースのデジタルプロダクション企業、スーパーソーシャル(Supersocial)のCEOヨナタン・ラズ・フリードマン氏は語る。「一度だけ手を出して終わりにするつもりなら、おそらく、既存のゲーム界内で試すに留めておくほうが身のためだろう」。
[原文:Breaking down the options: How brands are engaging with virtual audiences in Roblox]
ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)