ブロックチェーン 活用で、持続可能性を示すブランド各社

カスタマーは持続可能な商品をこれまで以上に求めるようになっている。そんななか持続可能な商品を実現するため、ブランド各社はブロックチェーン技術に賭けている。

ビットコインを支える技術として知られるブロックチェーン技術は、ブランド各社が共有する電子記録にも活用されている。これにより商品の出処を農家や工場からたどることができ、店舗までの輸送経路まで把握できる。

各社のトライアル

この技術は最近では食料品やアパレル、宝石業界まで分野を問わず利用されるようになっている。ウォルマート(Walmart)では食品の追跡にブロックチェーン技術を活用してきた。同社は2年前に豚肉の追跡を中国で、スライスされたマンゴーの追跡を米国で試験運用している。

また、今年5月にはダイヤモンド企業のデビアス(De Beers)が「トレーサー(Tracr)」というブロックチェーンのツールを導入。このツールで同社はダイヤモンドの採掘からカッティング、研磨までの過程を追跡することで、その過程で暴力を助長するプロセスがないことを確認している。ファッション業界では昨年、デザイナーのマーティン・ジャールガード氏がスタートアップのプロビナンス(Provenance)とともにデジタルプラットフォームで衣服の原料から消費者の手に届くまでの過程を追跡するプログラムの試験運用を開始した。

ブロックチェーン技術を使う各社はここ1年、メディアを通じてその活用方法を宣伝している。たとえばウォルマートは、やがてカスタマーが同社のブロックチェーンのソリューションを利用できるようにする計画を明らかにした。

信頼醸成のために

ブランド各社はブロックチェーン技術によって消費者の需要に応え、持続可能性、安全性を向上させようとしている。持続可能性はマーケティングにおいても重要な効果をもたらす。商品取引上の透明性に関する履歴は、ブランドストーリーの構築、そして消費者からの信頼感の向上においても有利に働く。あらゆる取引が可視化された台帳を共有することで、カスタマーに対して商品が安全で、法律および倫理に沿った形で調達されたことを確約できる。

「これからはオンラインのマーケットプレースに対する信頼感が低下していくだろう。商品や販売者の質を検証するのが加速度的に難しくなっているためだ」と分析するのは、フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、サチャリタ・コダリ氏だ。「質の高い商品と販売者は、差別化において最重要に位置づけられるようになる」。

ウォルマートの食品安全と健康部門のバイスプレジデントを務めるフランク・ヤナス氏によると、同社は現在ブロックチェーン技術を使ってベリー類や鶏肉、牛乳など、25種類の食品の追跡を行っている。同氏は、食品の安全性は競争上の問題ではなく(ウォルマートは、クローガー[Kroger]やドリスコル[Driscoll]、ユニリーバ[Unilever]らいくつかの小売業界と同様、IBMのブロックチェーンプラットフォームを利用している)、消費者からの信頼を醸成することが重要だと語る。

9月第3週にニューヨークで開催されたブルームバーグ(Bloomberg Media)のバリューオブデータ(Value of Data)カンファレンスでのインタビューで、同氏は「カスタマーの求めるものは変化している。食品の出処、栽培方法や飼育方法、オーガニックかどうかといった情報がより必要とされており、当社は消費者からもっとも信頼される小売業者となるため努力している」と述べている。

可能性を秘めた技術

IBMブロックチェーン(IBM Blockchain)のゼネラルマネージャーを務めるマリー・ウィーク氏は、商品の出処をカスタマーに証明し、信頼性と持続可能性を示したいと考えている小売業者にとって、ブロックチェーンは可能性を秘めた技術だと語る。

同氏は「調達において『持続可能な農家を支えたい』『地元の小売業者を支えたい』といった意思決定につながる事例が実際に起きており」、小売業者や消費財の販売企業は、公正取引をはじめとする企業の社会的責任への取り組みの一環としてブロックチェーン技術を使い続けていると指摘する。

ウォルマートが使用しているブロックチェーン技術を使った食品追跡プラットフォーム以外にも、IBMはマースク(Maersk)とともに、8月に「トレードレンズ(Trade Lens)」というブロックチェーンを基盤とした配達ソリューションの提供を開始した。IBMは利用している具体的な企業名こそ明かさなかったが、世界で90の製造業者と小売業者がこのソリューションを活用しているという。

現時点における課題

消費者からの信頼を醸成するという触れ込みの一方で、ブロックチェーン技術はいまだ生まれたばかりの技術だ。ブランドやサービス提供者は、エラーが発生したときの検知技術など、いまだにデータ品質の問題に対処している。また、ブロックチェーン技術はあくまで消費者からの信頼を形成するためのより大きな戦略の一要素であり、追跡している商品を使ったからといってブランドリフトにはつながらないのでは、という見方も存在する。

「直接、ブランドエクイティにつながるとは思わない」と、フォレスター・リサーチのコダリ氏も、ブロックチェーン技術について語る。「だが、新しいことを可能にするための技術にはなりうる」。

実装の段階でも懸念が存在する。とりわけ大量の商品に物理的な追跡デバイスをどう埋め込むのかという問題は大きい。

これについてチーターモバイル(Cheetah Mobile)のブロックチェーン商品スタジオ、ブロックチェーンウェイブラボ(Blockchain Wave Lab)でグローバルブランド戦略ディレクターを務めるジョシュ・オング氏は次のように指摘している。「複数の国にまたがった非常に複雑な現実世界のサプライチェーンでは(追跡の)実装はややこしい。高価なバッグに追跡用のチップをどう埋め込むか、チップの安全性をどう確認するか、といった問題が存在する」。

SUMAN BHATTACHARYYA(原文 / 訳:SI Japan)