2020年5月にFacebookショップ(Facebook Shops)が発表された当初、このツールは中小企業がFacebookで商品を直接販売するためのツールとして想定されていたが、いまでは一部の大手ブランドもその恩恵を受けている。
2020年5月にFacebookショップ(Facebook Shops)が発表された当初、このツールは中小企業がFacebookで商品を直接販売するためのツールとして想定されていたが、いまでは一部の大手ブランドもその恩恵を受けている。彼らは、Facebookショップが人々を自社のWebサイトに誘導し、商品を購入させるショールームとして役立つと気付いたのだ。
Facebookは、Facebookショップの利用企業に対し、ペイパル(PayPal)、Shopify(ショッピファイ)のショップ・ペイ(Shop Pay)といった支払いオプションを用意しているほか、自社のWebサイトに誘導することも認めている。
ブランドたちはこれを利用し、Facebookがアプリ内での取引を推奨しているにもかかわらず、Facebookショップを取引の場所ではなく、ファネル上部に位置する顧客へのマーケティング施策のために活用しているという。
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「コンバージョンには適さない」
ミッソーニ(Missoni)、オリバー・ピープルズ(Oliver Peoples)などの高級ブランドを扱うファイブストーリー(Fivestory)のeコマース責任者、カルロス・ジョージ氏は「Facebookとインスタグラムのショップは、ブランドのイメージを伝えるのに適している。たとえるなら、名刺やムードボードのようなものだ」と話す。「しかし、コンバージョンにはそれほど適していない」。
ジョージ氏によれば、現状Facebookショップ経由の売上はファイブストーリーの売上全体の10%にも満たないが、毎月、サイト訪問者の最大20%がFacebookからやって来るという。
eコマース支援/デジタルマーケティングエージェンシーのアイフル(Eyeful)の顧客には、急成長中のファッションブランドが名を連ねており、その一部はFacebookショップをShopifyで制作した自社サイトと統合している。また、どのブランドも2020年における自社サイトの売上が、前年比で3桁成長を記録したブランドばかりだが、Facebookからのトラフィックは、最大でも全体の1.4%というブランドもある。
これらのブランドでは、いずれも2021年に入ってから、Facebookショップ経由で商品が売れた事例はまだ見られていない。だがそれでも、彼らはFacebookショップを維持することに価値を見いだしている。アイフル・メディア(Eyeful Media)のデジタル戦略担当シニアディレクター、ライアン・ヒギンス氏は「統合するにも、やめるにも費用は一切かからない」と話す。「念のため、釣り糸を垂らしておくことができる」。
SNSでの購入は意外に少ない
SNS上での商品購入は、消費者にとってはまだ新しい習慣だ。リサーチ企業のビズレート・インサイツ(Bizrate Insights)主導のもと実施された、2020年6月のeマーケター(eMarketer)の調査によれば、過去1年間にFacebookで何かを購入したことがある人は、18.3%、インスタグラムは11.1%だった。また回答者の70.4%が、過去1カ月のあいだ、どのSNS上でも買い物をしていないと述べている。
それでも、自らのフィールド上で購買行動を促進しようと、プラットフォームはショッピング機能の追加を急いでいる。Facebookもほかのプラットフォームと同様、マーケットプレイスからライブストリームショッピング、インスタグラムリールのショッピングタブまで、サイト上での取引を促すために機能を追加してきた。
ちなみに、マーク・ザッカーバーグ氏は2021年3月18日のClubhouse(クラブハウス)でのディスカッションで、当時アクティブなFacebookショップは100万超、さらに毎月2億5000万人以上がショップと積極的に関わっていると述べていた。
成功しなければほかに移るだけ
プラットフォーマーは、SNSを活用したコマースを促進しようと躍起になっているが、ブランドにとってFacebookは、顧客とコミュニケーションを取るための選択肢のひとつでしかない。ただ、少なくとも現状は、Facebookショップはブランドにとって魅力的な存在になっているようだ。
メディアコンサルティング企業、ロックウォーター(RockWater)の創業者、クリス・アーウィン氏は、「ある著名な顧客は、Facebookやインスタグラムでの販売に関心を持っている」と話す。というのも、SNSでの販売を行えば、潜在的な顧客(とそのデータ)との距離を縮めることができるからだ。なおこの人物は、大規模なライセンスビジネスを持っており、SNSチャネルでも精力的に活動しているという。
また、ブランドがFacebookショップをはじめているのは、参入障壁が低いためだと前出のヒギンス氏は述べている。「ほとんどのブランドは、少なくとももぎ取りやすい果実、つまり手軽な売上が得られると考えている。もしうまくいかなければ、ほかのものに移るだけだ」。
[原文:Brands use Facebook Shops as a showroom, but not as a conversion platform]
ERIKA WHELESS(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:村上莞)