「アトリビューション詐欺の実態は、『馴れ合い』の横行」:元エージェンシー幹部の告白

エージェンシーやブランドの数値偏重は過大な要求を生む。

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は元ベテランエージェンシー幹部に、クッキーボミング(cookie bombing)といった非道な手口がキャンペーンの数値をつり上げる常道として横行する現況について、話をうかがった。

なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

――キャンペーンメトリクスを水増しするための一般的な手口は?

アトリビューション詐欺(スキャミング)、クッキーボミングともいうんだが、それがいまだにはびこっている。アトリビューションモデルの大半は相変わらず、ラストクリック/タッチをベースにしている。つまり、消費者がコンバートする前に目にした最後の広告だけが評価される。たとえそれが、実際にはコンバージョンを促していなくてもだ。消費者が見てようがいまいがお構いなく、ひとつの広告が大量のコンバージョンを促した、あるいはCPA(コストパーアクイジション)を下げたかのように見せる。

――もう少し具体的に

私が消費者で、何らかの商品のリッチメディア広告を見るとする。モバイル機器でそれを見て、その美しいモバイル広告に惹かれる。続いてFacebookで同じ商品の別の広告を目にし、そこではじめてeコマースサイトに移動する。ただ、そこで買う前に、PCで同じ商品のディスプレイ広告のリターゲッティングを受けるとする。すると、それまでに見ていたモバイル広告とソーシャル広告の貢献度はカウントされず、最後のバナー広告だけが評価される。この間隙を巧みに突くのがクッキーボミングで、いかにもそのバナー広告だけがコンバージョンを促したように見せるわけだ。

――ですが、そのクッキーボミングは以前から行なわれています。なぜいま、それが腹立たしいと?

そりゃそうだろう、昔もいまも変わらず、クッキーボム/アトリビューション詐欺のせいで、大量の広告費がドブに捨てられているんだから。あくまでも書面上は効果的に見える、というだけの理由でだ。それだけじゃない、消費者はますます多くの時間をモバイル機器に費やしているというのに、その動きがすぐには反映されず、広告費がモバイルに十分には流れて行っていない。

――その責任は誰に?

ブランドマーケター側からの業界図(メディアランドスケープ)に関する根本的教育が足りないのが、そもそもの原因だ。ブランドマーケティングマネージャーを名乗る人間は確かにいるが、実際に何をするかといえば、毎週、チャンネルが出してくるコンバージョン数を示すスコアカードを集めて、Excelシート1枚にその結果をまとめ、自社のCMO(最高マーケティング責任者)に渡すだけだ。

私がこれまでに仕事をしたブランドの多くがそうだったんだが、彼らのボーナス構造(bonus structure)はこのスコアカードに基づいている。要するに、スコアカード上のコンバージョン率が高ければ高いほど、良いとされる。となれば、ブランドはエージェンシーに高い数値を求めるし、エージェンシーは当然、それに応えてクライアントに良く思われたい。

本来、エージェンシーは「いや、違います。必要なのはモバイル戦略です」などと言って、クライアントを教育すべきなんだが、実際には、エージェンシーも同じ穴のムジナでしかない。頭にあるのは、クライアントに喜んでもらいたい、その一点だけだからだ。

――そして、エージェンシー自身のボーナス構造も同じようなものだと?

まさしく。前週よりもCPAが良いことを示すスコアカードをクライアントに送れれば、クライアントのご機嫌を取れる。結果、エージェンシーも書面の数字をつり上げることしか考えなくなる。

――結局、ブランドマーケターがエージェンシーに対し、手段を問わず、高い数値を残すことを要求している、と?

私が思うに、多くの場合、ブランドマーケターは[エージェンシーが何をしているのか]知っているくせに、あえて気づかないふりをしている。数値が良ければ、自分の上司に与える印象も良くなるからだ。

――そのせいでもっとも損をしているのは?

マーケターは馬鹿を見ている。消費者の目に晒されない広告に大量に出費させられているわけだから、大損だよ。見るに値しない広告、美的に劣る広告、ブランド再生を促さない広告、もっといえば、実際に見られてもいない広告――クッキーボムによって、ラストタッチ/クリックアトリビューションだけのために、そこに突っ込まれた広告。それらは、マーケターにしてみれば、広告費の無駄遣いでしかない。

しかも、より良い広告を出そうと努めているパブリッシャーやベンダーにとっても、もっとクリエイティブなものを作りたい、広告をもっとユーザーフレンドリーにしたいとがんばっているすべての関係者にとっても、結果的にマイナスになる。書面上、その広告がアトリビューション的にパッとしなければ、どんなに見栄えが良くても、エージェンシーはまず買わないからだ。短期的思考以外の何ものでもない。

――その手の広告数は、現在どの程度?

[パフォーマンスドリブン]ディスプレイ広告の50~75%がそれに当たる。つまり、大半の広告費がアトリビューション詐欺の食い物にされている。しかも、これは基本的に、モバイルでもディスプレイでも、コンバージョンメトリクスに関わるすべてに当てはまる。

Googleの何百万ドルという広告費がインターンが誤って載せただけの「広告」に流れてしまったときとよく似ている。数値だけ見れば、その「広告」はほかの、とてもよく出来たバナー広告よりもはるかに効果的だったわけだ。

少しでも良いものを作ろうと、みんなが手間と金をかけて必死に努力しているのはよく知っているからね、現状には高い危機感を覚えている。とにかく、クッキーボミングがなぜ書面上は非常に有効になりうるのか、その理由がこの状況にはっきりと現れている――ハイテク業界はこう騙せ、という一例だよ。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)