eコマースへ「AR」導入を試みるブランド、レゴなどの事例

AR(拡張現実)は、広告における主戦力になっているとはいいがたい。だが、顧客がモバイル購入の前に製品を試すためのツールとして、ARを利用するブランドが増えている。

目新しさを狙ったAR利用から、モバイルの比重が大きくなってきたリテール体験にマッチするテクノロジーの使い方への転換が進んでいるのだ。それに伴い、黎明期の現段階においては、ARコマースはスケールよりも、むしろPR、ポジショニング、知識の蓄積のために使うべきだという認識が浸透した。

ベネフィット・コスメティクス(Benefit Cosmetics)、スピード(Speedo)、レゴ(Lego)といった各社が、ARを自社のコマース戦略に取り込んでいる。

ARに対する期待

「ARは将来、コマースと小売業界全体に大きな影響を与えるだろう。現在、主要なブランドがARで試行錯誤しているのがその証拠だ」と、ベネフィット・コスメティクスでマーケティング責任者を務めるルー・バレット氏はいう。「オフラインとオンラインの媒体を首尾よく統合し、買い物体験をアップデートさせたブランドが成功を収めるだろう」。

ベネフィット・コスメティクスは、自社のロイヤルティアプリ「ワオ・ブラウズ(Wow Brows)」に搭載するAR機能を開発中だ。この機能は、どんな形の眉が自分の顔に合うかをARで試すことができるというもの。形が決まったら、ユーザーはそれを描くのに必要な製品を、アプリから直接買うこともできるし、店舗に行ってアプリを同社の美容部員に見せ、製品を用意してもらうこともできる。

アプリのリリースからはすでに18カ月が経過しているが、AR機能はまだテスト中だ。ベネフィット・コスメティクスは、まずは米国版のアップデートを目指している。「大々的なARツールのリリースはまだ行っていない。我々は、人々が機能をどう使うのかを理解し、必要な修正を施すことを重視している」と、ベネット氏。「このアプリは、過去12カ月で最大のARへの投資になった」。

内でやるか外でやるか

ベネット氏によれば、近い将来にインスタグラム(Instagram)やSnapchat(スナップチャット)でARプロダクトをリリースする予定はないが、長期的な投資の可能性はある。同様の姿勢をみせるのが、水着ブランドのスピードだ。同社は昨年、iPadを使ってゴーグルをバーチャル試着できるサービスを実店舗に導入した。一方、アイランドレコーズ(Island Records)スタジオカナル(StudioCanal)といったブランドは、プラットフォーム開発にこだわり、後方部分に投資している。

FacebookやSnapchatでツールを使用してレンズやカメラエフェクトを導入するなら無料ですむが、ARアプリの開発には予算と時間が必要だ。

「アプリ内機能としてのAR導入は、独自プラットフォームでの利用よりも、技術的見地からみてパフォーマンスに優れている。デバイスの演算能力を活用できるためだ。一方プラットフォームは、開発上の障壁がないため、用途が多いのが強みだ」と、ARスタートアップのポプラー(Poplar)で最高技術責任者を務める、ローリー・エインリー氏は語る。

オンオフの垣根を超えて

レゴは、大人用アパレル製品「レゴウェア」の販売にARを導入している。同社はSnapchatのSnapcodeからアクセスできる「ARストア」を開設。コードをスキャンすると、ARストアが開き、そこで同社のストリートウェアを購入できる。

ARストアは1日限定のポップアップで、Snapchatのレンズから直接購入する意思がユーザーにどれだけあるかを試す目的も兼ねていた。制作を手がけたのは、ソーシャルエージェンシーのウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)だ。

「我々のコアビジネスは、つねに実物を使った遊びと、想像力を駆使してブロックをクリエイティブに組み合わせることにある。デジタルや、ARポップアップショップといったものは、あくまでその延長線上だ。レゴウェアのローンチに際し、(アパレル企業の)カブーキ(Kabooki)とこの実験を行うこと楽しみにしている」と、レゴ・グループのソーシャルメディアイノベーション責任者、レア・サンデル氏は述べた。

「どんなシーンにも応用可」

ARへの投資と、eコマースにおけるARの役割が増大した背景には、スマートフォン搭載カメラへのARテクノロジーの統合が進んだことがある。たとえば、GoogleレンズはAndroidヘッドセットのフラッグシップモデルのカメラに統合された。また、Appleも先日、ARKitがiPhoneやiPadのユーザーにより身近なものになるよう、アップデートを行った。

「ARコマースは、顧客が商品を実際に手にする前に、それについて理解し感想を持ちたいと思っているかぎり、どんなシーンにも応用可能だ」と、マーケティングエージェンシーVMLY&Rのイノベーション担当責任者、グレイシー・ペイジ氏はいう。「だからこそ、現在は主に顧客のアイデンティティに関連する商品で利用されている。ARは、人々に何かを試す機会を与えてくれる」と、同氏は語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)