※この記事は2021年4月16日に掲載された記事の再掲です。
AppleとGoogle、加えてFirefoxは、サードパーティCookieの廃止に向けて動いている。また、欧州のGDPR(一般データ保護規則)など、サードパーティCookieを抑制する新たな法規制の施行もあり、リターゲティング広告は今後、極めて困難になると見られている。
※この記事は2021年4月16日に掲載された記事の再掲です。
2020年における、コロナ禍による実店舗売上の激減を受け、ブランド勢は顧客を獲得するべく、デジタル広告、なかでもリターゲティング広告にかつてないほど依存するようになった。ただ、リターゲティング広告は、長らく消費者を訝しがらせてきた。「一体全体どういうわけで、私がいまトイレットペーパーを求めていることがわかったのだ…」といった風に。
一方、AppleとGoogle、加えてFirefoxは、ブランドが顧客をリターゲットする主要手段として利用しているサードパーティCookieの廃止に向けて動いている。また、欧州のGDPR(一般データ保護規則)など、Cookieを抑制する新たな法規制の施行もあり、リターゲティング広告は今後、極めて困難になると見られている。
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当然、リターゲティング広告に依存するブランドは、苦境に立たされることになる。サードパーティCookieがなくなれば、ファーストパーティデータか、リテールパートナーのセカンドパーティデータに頼るしかない。Googleの代替案に期待する向きもあるが、同社がどの程度ブランドに味方してくれるのか、詳細はまだわかっていない。そのため、誰もが対処方を模索していると、バイヤーたちは述べる。
変化を求められるブランドたち
「現在、多くのブランドが『プライバシー第一主義のマーケティングが何を意味するのか』、そして『この新たな規制/変化によって何が壊れるのか』ということについて、必死に研究している」と、ピュブリシス・メディア(Publicis Media)のヴェリファイドグローバルテクノロジー部門VP、シェリー・ピンソノー氏は述べる。
当然、サードパーティCookie以外の識別子を使えば、リターゲティングはできる。しかしその場合、これまでのマーケティング体制を根本から変更する作業が必要になると、企業のマーケティング支援を行う、マーケットスミス(Marketsmith)のチーフインフォメーションオフィサー、カリーナ・ポログルート氏は指摘する。
ポログルート氏は「リターゲティング広告は死なない。しかし、これまでとは違うテクノロジーに頼る必要があるだろう」とも述べる。「リターゲティングを行うには、Cookieではなく、ユニークIDかデバイスIDなどを利用する必要がある。とにかくブランドは、現在自分たちがどのようにリターゲティングを行っているか、その仕組みを確認したほうが良い。たとえば、デバイスレベルのIDを供給するDSPを使っているなら、ひとまず大丈夫だ。しかしそうでないなら、手法を見直すべきだろう」。
ファーストパーティデータの可能性
Googleは代替識別子も、ユーザーレベルのプロファイルも、今後一切開発しない旨を発表している。その代わりに導入するのが、同社自慢の新テクノロジー、FLoC(Federated Learning of Cohorts)だ。これは特定の行動/購買習慣を有するユーザーを「群れ(cohort)」として括るもので、ブランドは個人ではなく、この集団をターゲティングできるようになる。FLoCのROI(投資利益率)は、サードパーティCookieを用いたリターゲティング広告と95%同じであると、Googleは述べている。しかし、その計算式や根拠は明らかにされておらず、懐疑的なブランドもいる。
一方、高級バッグブランド、カーラ(Caraa)の創業者兼CEO、アーロン・ルオ氏は、サードパーティCookieとFLoCの違いをさほど気にしていない。というのも、同社はすでにファーストパーティデータ重視の戦略に移行しているからだ。コロナ禍発生後、カーラはすぐさまマーケティングチームの主眼を切り替え、数百もの新規eメールアドレスを獲得している。ファーストパーティデータには手に入りにくく、かつサードパーティCookieに比べて規模は劣るが、質の高さを考えると価値があると、ルオ氏もバイヤーたちも口を揃える。
データエージェンシー、マインドシェア(Mindshare)の米チーフデータストラテジーオフィサー、シェーン・マクアンドルー氏も、「ファーストパーティデータを使えば、オーディエンスの規模は小さくなるが、インパクトは大きくなる。失うものより、得るもののほうが大きい」と述べる。「ファーストパーティデータは、消費者からの許可を得たうえで直接得るものだけに信用性が高い。それゆえ、ビジネスを推進するうえでの効果やインパクトの点では、サードパーティデータよりもはるかに強力だ」。
セカンドパティーデータへの期待
また、パートナーから得られるデータもある。サードパーティデータの減少に備え、ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)といった大手リテーラーは、すでに自らを商品販売の場というだけでなく、有用なデータ供給者としてもブランドに売り込みはじめている。ターゲットの2020年におけるピッチデックでは、顧客から収拾できるデータとともに、データに飢えるブランドへのセールスポイントとして、自社メディアプラットフォーム、ラウンデル(Roundel)が訴求されていた。
(リテーラー勢にとって、「データ供給」というアプローチは、ここ数年でD2Cモデルに切り替えたブランドたちを呼び戻すうえで、効果的な戦略だ)。
「ブランドたちは、リテーラーが提供する、セカンドパーティーデータベースのメディアをはじめ、コンテキストターゲティング、そしてIDソリューションやコホートベースのソリューションを試しはじめるだろう」と、ピンソノー氏は述べる。「さらにいえば、より価値の高いデータと自社のファーストパーティデータを組み合わせることを期待して、セカンドパーティデータ市場に傾倒するブランドが、出てくるかもしれない」。
一方カーラなど一部ブランドは、サードパーティCookieに代わる何らかの手段が、今後必ず出現すると見立てている。
「Googleの戦略については何ともいえないが、彼らは収益の大半を広告で得ている。同社は、代替識別子を用意しないとしてはいるものの、重要な財源をみすみす手放すとは思えない」。
[原文:Brands search for retargeting alternatives as third-party cookie demise looms]
DANNY PARISI(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)