小売業界やブランドは何年にもわたり、プロモーションの宣伝や割引コードの送付にSMSを利用してきた。しかし、このツールを新しい方法で使用する企業が増えている。
タキシードのレンタルに特化したファッション企業ザ・ブラックタックス(The Black Tux)は、エグゼクティブ層との関係を作り上げるためにSMSを使用している。同社の共同創設者でCEOを務めるアンドリュー・ブラックモン氏は最近、同社でもっとも活動的な顧客1万人に、自分の個人用電話番号を記載したメールを送付した。同氏は、これらの顧客に対して、ザ・ブラックタックスを利用してくれたことに感謝し、専用のプロモーションコードを教えて、ブランドについての質問やコメントを自分に送るよう呼びかけた。これらの顧客のうち数百人からすでに返信があったと、最高マーケティング責任者を務めるマット・サットン氏は述べ、そのひとりは同社からレンタルしたタキシードを着て登場した結婚式のミュージックビデオのリンクまで教えてくれたと語る。ほかにも、同社のブランドがどれだけ好きかということを伝える人たちや、本当にブラックモン氏なのか? と問い合わせてきた人たちもいたという(同氏はこれらの人たちに自撮りを送り返した)。
ブラックタックスの新しいキャンペーンは、顧客が小売業者からメッセージを受け取ることを選択するという一般的なSMSマーケティングから脱却したものだ。SMSはメールより簡明で、人々はスマートフォンを使用する頻度が高いため、メッセージをすぐ見る傾向がある。マーケターは特別価格や新商品の発表などさまざまな目的にSMSを使用しているが、ブラックタックスが示したように「今ならひとつ買えばひとつ無料!」と告知する以外の目的でSMSを使用する企業が増えてきている。たとえばメンテッドコスメティクス(Mented Cosmetics)は商品に関係するクイズを顧客に送っている。アクティブウェアブランドのティル・ユー・コラプス(Til You Collapse)は、写真、動画、レビューなどのユーザー生成コンテンツをSMSで収集し、自社サイトで公開している。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
小売業界やブランドは何年にもわたり、プロモーションの宣伝や割引コードの送付にSMSを利用してきた。しかし、このツールを新しい方法で使用する企業が増えている。
タキシードのレンタルに特化したファッション企業ザ・ブラックタックス(The Black Tux)は、エグゼクティブ層との関係を作り上げるためにSMSを使用している。同社の共同創設者でCEOを務めるアンドリュー・ブラックモン氏は最近、同社でもっとも活動的な顧客1万人に、自分の個人用電話番号を記載したメールを送付した。同氏は、これらの顧客に対して、ザ・ブラックタックスを利用してくれたことに感謝し、専用のプロモーションコードを教えて、ブランドについての質問やコメントを自分に送るよう呼びかけた。これらの顧客のうち数百人からすでに返信があったと、最高マーケティング責任者を務めるマット・サットン氏は述べ、そのひとりは同社からレンタルしたタキシードを着て登場した結婚式のミュージックビデオのリンクまで教えてくれたと語る。ほかにも、同社のブランドがどれだけ好きかということを伝える人たちや、本当にブラックモン氏なのか? と問い合わせてきた人たちもいたという(同氏はこれらの人たちに自撮りを送り返した)。
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ブラックタックスの新しいキャンペーンは、顧客が小売業者からメッセージを受け取ることを選択するという一般的なSMSマーケティングから脱却したものだ。SMSはメールより簡明で、人々はスマートフォンを使用する頻度が高いため、メッセージをすぐ見る傾向がある。マーケターは特別価格や新商品の発表などさまざまな目的にSMSを使用しているが、ブラックタックスが示したように「今ならひとつ買えばひとつ無料!」と告知する以外の目的でSMSを使用する企業が増えてきている。たとえばメンテッドコスメティクス(Mented Cosmetics)は商品に関係するクイズを顧客に送っている。アクティブウェアブランドのティル・ユー・コラプス(Til You Collapse)は、写真、動画、レビューなどのユーザー生成コンテンツをSMSで収集し、自社サイトで公開している。
ポストスクリプト社もテスト開始
ブランドと連携しているプラットフォームも、SMSを使用する新しい方法を試みはじめている。パーソナライズしたSMS送信サービスを提供するポストスクリプト(Postscript)は、Shopify(ショッピファイ)を利用する多くのブランドと提携しているが、コンバージョンフローと、買い物客からの質問への回答に関するテストを昨年開始した。最初のテストに参加した企業のひとつは、男性向けボディケア事業のドクタースクワッチ(Dr. Squatch)だ。同社はポストスクリプトを使用して、たとえば「夫の臭いを改善したい」といった顧客からの質問やリクエストに個別に返信している。
ドクタースクワッチはこれまで、このようなリクエストに対して、デオドラントなど関連商品の割引コードを返送してきた。しかし現在の同社は、フレグランスのカスタムセット(価格としてはこちらのほうが高価)を用意し、SMSでそれを宣伝することができると、ポストスクリプトの共同創設者でプレジデントを務めるアレックス・ベラー氏は説明する。ポストスクリプトはこの構想のもと、これまでに10社程度のブランドと、この取り組みにおいて提携し、参加企業も毎月少しずつ増えている。
1対1のコミュニケーション
ザ・ブラックタックスは2013年の創設以来、200万人近い顧客を集めてきた。サットン氏とブラックモン氏は今年、事業をさらに推進するため、パーソナライゼーションを中心とする新しいマーケティング戦略を構築した。たとえば、新規の顧客には、ブラックモン氏からそのメールアドレスに、ブランドの誕生秘話やブラックモン氏自身の写真が含まれたメールが送られる。また、同社の結婚プランニングサービスを利用した花婿には、付添人がタキシードを確保し「準備完了」になるとテキストメッセージが送られる。同社は3月、SMSマーケティングツールを提供するアテンティブ(Attentive)とともにSMSの試験運用を行い、約1万1000人の参加者から、どのメッセージがもっとも多くの返信を得られるかをテストした。
サットン氏は次のように述べている。「当社はSMSには非常に気を遣っており、厳しい基準で評価している。すなわち、すべてのメッセージが有益であり、すべてのメッセージは、たとえ文字数が限られていても、ブランド特有のなんらかの言葉が含まれ、少し意外でパーソナルに感じられるものであることだ」。
インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)でマーケティング、小売、テックの報告のシニアディレクターを務めるジェレミー・ゴールドマン氏は、ザ・ブラックタックスがブラックモン氏の電話番号を顧客と共有したことを称賛している。「これは、キャンペーンの観点から優れた効果がある。同氏がここで提供している1対1のコミュニケーションは、多くの顧客が受けられるものよりも本質的にユニークなものだ」と、同氏は述べている。
多くの企業がSMSの利用を決めているのは、それがよりプライベートなものだからだとゴールドマン氏は語る。無数の企業からの連絡と一緒くたにされるメールのメッセージとは異なり、SMSのメッセージはより直接的で、「スパム」として排除されることもない。SMSを使用することで、「顧客は企業からのメッセージを、家族や、自分が信頼する連絡先からのものと同じように扱うことになり、ちょっとした競争上の優位性がある」とゴールドマン氏は述べている。
課題はコストと「配信中止」
同時に、SMSには課題もまた存在すると、同氏は付け加える。テキストメッセージを1通1通送信するコストは、一般的にeメールを送信よりも高くなり、顧客は通常、「配信中止」と送信することでSMSの受信をやめることができる。また、企業はテキストメッセージをほかの企業と同じ間隔で送信するという罠に陥りやすいともゴールドマン氏は述べる。「見た目が似ているコンテンツは少し危険だ。どの企業も同じようなテストをしているように見えてしまうのだ」と同氏は述べている。
しかし、小売業者がSMSで注目を集めることは不可能ではない。「どのような種類のキャンペーンであれ、乱雑さを打破するという側面は非常に重要だ。それを達成できれば、多くの企業のなかで突出できる」と、同氏は述べている。
[原文:Brands like The Black Tux are rethinking their SMS strategies]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu