AppleはARキット2、そしてiOS 12をリリースした。アップデートのキーとなった機能は、アプリを使わずとも、モバイルのウェブブラウザ経由でARを体験できるようになったことだ。これによってARの活用法がさらに幅広くなるとマーケターたちは述べる。
AppleはARキット2、そしてiOS 12をリリースした。ARキットを最初にリリースしてから1年になる。ディベロッパーたちが拡張現実(AR)を使ったアプリ開発をすることができるこのツールは、イケア(Ikea)やパトロン(Patrón)そしてウェイフェア(Wayfair)といった会社によって活用されてきた。
アップデートのキーとなった機能は、アプリを使わずとも、モバイルのウェブブラウザ経由でARを体験できるようになったことだ。これによってARの活用法がさらに幅広くなるとマーケターたちは述べる。この新しい機能は、6月からすでにベータ版テストを行ってきたマーケターたちも存在しており、モバイルにおけるAR体験をアップグレードし、スケールする可能性を抱えていると考えている。
「オペレーティングシステムの中核となるほどに、AR機能を高めようとしている」と語ったのは、デジタル・エージェンシーのスペース150(Space150)でイノベーション部門責任者を務めるマーク・ジェンセン氏だ。スペース150は、iOS12とARキット2のベータ版テストを行ってきた。彼によると、ユーザーはウェブページ上で、写真をクリックして、そこに写っている物体の3Dモデルをスマートフォンにダウンロードすることができ、3Dで見ること、そしてARで見ることができると述べている。
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開発が進むAR広告
ビジネス系パブリッシャーのクォーツ(Quartz)が抱えるエージェンシーであるクォーツ・クリエイティブ(Quartz Creative)のシニア・クリエイティブディレクターであるマイケル・ドーラン氏は、この機能のおかげでインフィニティ(Infiniti)のAR広告のローンチが助けられたと語った。インフィニティはクォーツ・クリエイティブがAR広告を扱ったはじめてのクライアントである。
インフィニティの広告は新しい2019インフィニティQX50をARで見ることができるというもので、それまではクォーツのアプリでしか体験できなかったが、今回のアップデートのおかげでより幅広いオンラインオーディエンスにリーチできるようになると、ドーラン氏は言う。
「こういった体験を試みようとするブランドにとっての課題は、これまで常にスケールだった。というのも基本的にはこういった機能はアクセスすることができなかったからだ。(インフィニティに対して)我々は、もちろん現時点では(AR機能がリーチするオーディエンスは)非常に限られたものになるけれども、非常に早いペースで成長するだろう、と伝えることができた」とドーラン氏は語った。iOS12にアップグレードしないユーザーにとってもVRではインタラクティブ体験として機能するという。
興味を示すクライアント
しかし、ARはいまだ、新しいツールとしての注目を甘んじて受けている状態だ。クォーツのアプリのなかでは、この広告は10%のクリックスルー率を見せており、ユーザーたちは平均して2セッションを行うことが分かっている。毎セッションごとに平均して、約3.8分の時間を費やしているという。これは5月と6月のデータだ。オンラインではこれよりもさらに高いKPIを予測している。
ARキットのアップデートによって、AR体験がテキストやソーシャルメディア、そしてeメールでもシェアできるようになる。テーブルをユーザーがスキャンすれば、それを同じ部屋にいる別のユーザーに送ることで、デバイスはふたりがテーブルに対してどの位置に存在しているかを理解するという。
ジェンセン氏のエージェンシーのクライアントのなかには、ARを試すことに興味を示すところも出てきている。特にARのためだけに新しいアプリを開発したり、すでに保有しているアプリにAR機能を追加するようなリソースやスケールを持っていないリテーラーに多いという。
解決すべき新しい課題
スペース150はすでに、ARキット2を使った6つのプロジェクトを今後数カ月の間に発表する予定だとジェンセン氏は言う。ARを使ったアプリを3M、ジムボリー(Gymboree)、カンブリア(Cambria)といったブランドのために開発。そしてこれらのアプリも、新しいARキット2の機能を活用してAR機能を高める計画をしている。2Dオブジェクトのトラッキング、よりリアルなレンダリング、そして着信やメッセージ受信などでアプリ利用が中断されても、ユーザーがアイテムをどこに置いたか記憶しておく、といった機能がその例だ。
こういったアップグレードは、ソーシャルプラットフォームの外におけるGoogleとのAR合戦の一環でもある。Googleもブラウザ・クローム(Chrome)を使ってAR機能をデスクトップとモバイルに導入しようと試みている。
Appleの今回のアップデートによってARの進出の障害となっていた壁がさらに壊され、メインストリーム化が進むだろうとジェンセン氏は言う。「アプリをダウンロードして、それからどうやってアプリを使うのか学習してという行為をユーザーがしないといけない状況を考えると、(ARは)もっと直感的になるだろう」と語った。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)