各ブランドは今年、 コネクテッドTV により多くの広告資金を投入しようとしている。広告購入代理店のタタリは、TV広告についてデイリーハーベスト、メイドイン、ロージーズなどのブランドと協力しているが、各ブランドがTV広告に投資する金額が増え続けていると述べている。
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各ブランドは今年、コネクテッドTV(インターネット回線に接続されたテレビ端末)により多くの広告資金を投入しようとしている。
広告購入代理店のタタリ(Tatari)は、TV広告についてデイリーハーベスト(Daily Harvest)、メイドイン(Made In)、ロージーズ(Rothy’s)などのブランドと協力しているが、各ブランドがTV広告に投資する金額が増え続けていると述べている。同社によれば、2021年に新たにTV広告を開始したクライアントがTVに出資した合計金額は、11月と12月に、この年で最高の800万ドル(約9億1200万円)に達した。
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成長し続けるD2Cブランドのマーケターたちは、全般的にTVへの支出は増えつつあると、米モダンリテールに語った。その理由の一部は、iOSの変更と、GoogleのサードパーティーCookieの廃止が近づきつつあることだ。しかし、フロイド(Floyd)やアスレチックグリーンズ(Athletic Greens)などいくつかのD2Cブランドは、より従来型のリニアなTV広告をテストする前の実験として、CTV(コネクテッドTV)に投資すると語っている。これに対してロク(Roku)などのコネクテッドTVデバイスのメーカーは、より多くの分析機能や、キャンペーンへの支援を提供することで、D2Cブランドからさらに多くの広告資金を引き出そうとしている。
減少しつつあるCPMの相殺
フロイドのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるレイチェル・ブラウン氏は、2021年まで同ブランドがおもに、「インスタグラムのブランド」と認識されていたと、米モダンリテールに語った。同社はそれより以前、広告予算の80%をFacebookに使っていたと、ブラウン氏は語る。
「どんな良いことにも終わりがあるように、Facebookのコンバージョンは、特にiOS 14のリリース後に低下した」とブラウン氏は述べている。
結果として、同社は今年Facebookの予算を増やすことを予定していない。その代わりに、予定していた支出をTV広告の拡大に振り分けようとしている。同社が最初にTVに注目しはじめたのは2020年の末のことだ。「ほかのホームウェアブランドがTVを使用していることから、当社も注目するようになった」とブラウン氏は述べている。同社のスマートCTV広告予算は2021年に総マーケティング予算の20%だったが、2022年には30~35%に増やすことを計画している。そして1年間CTVでの広告を試したあと、フロイドは今年後半にリニアTV広告放送を計画している。
そのため、今年はFacebookの予算を増やす予定はない。その代わり、フロイドは予定していた支出を、テレビのさらなる規模拡大に振り向ける。同社が最初にTVを検討し始めたのは、2020年末のこと。「他のホームウェアブランドが使っていることから、我々のレーダーに引っかかった」とブラウン氏は言う。今年、フロイドはスマートCTVの広告予算を、2021年のマーケティング予算全体の20%から、2022年には30~35%に引き上げている。そして、CTVに慣れてきた1年後、フロイドは今年後半にリニアTV広告を放映する予定だ。
フロイドは現在、セルフサービスのTV広告プラットフォームであるMNTNを使用して自社製のスマートTVキャンペーンを制作し、それをストリーミングプラットフォームにも推し進めようとしている。同社の最初の広告は2021年半ばに公開されたが、この広告で同社はフラグシップ商品であるベッドフレームを中心に紹介し、そのモジュール化されたコンパクトな設計に脚光を当てた。このキャンペーンで同社のCTVへの投資に対する回収は「Facebookと同程度で、Googleより多少低かった」とブラウン氏は述べている。
次に同社は、家庭用品市場に興味を持つ層を皮切りとして、より多くの層への広告をテストしようとしている。MNTNでは、ブランドが対象とする層を選択できる。たとえばアスレチックウェアでは、高級ジムのメンバー、スニーカー愛好家、またはランニング用品を購入する客を対象として選ぶことができる。
ブラウン氏は、同社の次のコマーシャルはベッドフレームだけでなく、ソファやテーブルといった新製品を紹介し、何種類もの異なるナレーションを使用すると語っている。
「当社のウェブサイトを訪問した視聴者のリターゲティングもはじめている」と同氏は述べる。「フールー(Hulu)やYouTubeのTV広告は当社ではうまく機能しなかったが、CTVでは選択した期間について、IPアドレスからコンバージョンをより的確に追跡できる」とブラウン氏は説明している。
コネクテッドとリニア、両TVを活用
同様に、D2Cのサプリメントブランドであるアスレチックグリーンズも2021年初頭にCTV広告のテストを開始した。同社はCTVから以前に得られた教訓に基づいて、2021年9月にリニアキャンペーンを開始したと、同社のパフォーマンスマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるリンゼイ・ノイエス氏は語っている。
「当社はTVによって徐々にサイトトラフィックと、ブランドへの認知が増加することを確認した」とノイエス氏は述べる。特にCTVは現在、同ブランドの総合的なマーケティングチャネル構成のなかで増大しつつある部分だ。
アスレチックグリーンズは、一般的に15秒の広告が「顧客に訴求して行動を促進するためにより適切である」ことを発見したと、ノイエス氏は述べている。「当社は新年の抱負に合わせるため2021年12月末に新しいスポット広告を開始し、これまでのところ確固とした成功を収めている」と同氏は付け加えている。
同社は2022年、CTVとリニアTVの両方の広告を引き続き拡大していくことを計画している。
タタリのクライアント開発担当バイスプレジデントであるトッド・ゴードン氏は、ほかのチャネル、特にFacebookとインスタグラムでコンバージョン率が低下していることから、マーケティング予算をコネクテッドとリニアの両方のTVに移行するブランドは増え続けていると語っている。
「各ブランドがTVに興味を抱いている理由のひとつは、ブランド名の正当性と、総合的なハロー効果によりブランドの認知を得られることだ」とゴードン氏は述べている。しかし、ブランドを紹介し、観衆からのアクションを求めるための時間がわずか15秒から30秒しかないことは課題として残っていると、同氏は語っている。
TVプラットフォーム側の反応
ロクの広告販売マーケティングおよびパートナーソリューション担当のバイスプレジデントを務めるダン・ロビンズ氏は、ストリーミングプロバイダである同社は今後数カ月に需要の増大を期待していると語った。2021年11月に投稿された第3四半期の収支報告で、同社は「プラットフォーム」の収益が、同社の広告部門も含めて82%増加し、5億8250万ドル(約664億円)に達したとしている。
同社は2021年、ロクはブランドと直接連携してロクのキャンペーン展開を行うロク・ブランド・スタジオ(Roku Brand Studio)を立ち上げたと、ロビンズ氏は語る。2021年後半、同社はショッピファイ(Shopify)アプリのベータ版をリリースし、現在はオリポップ(Olipop)などのブランドで試験的に導入されている。「中小企業がTVキャンペーンを自社の既存のeコマース運用にうまく統合できるようにする構想だ」とロビンズ氏は述べている。このプログラムはロクの広告購入プラットフォームであるワンビュー(OneView)に統合されており、広告主はスポット広告が放送された時間におけるブランドのウェブサイトやアプリの訪問回数を測定できる。
ロクはこの1年、広告主やブランドと協力し、たとえば広告付き映画や番組のスポンサーになるなど、バンドル広告にも取り組んできた。たとえば2021年の夏、ロクはウイスキーブランドのメーカーズマーク(Maker’s Mark)をスポンサーとして、オリジナルのコメディトーク番組「ザ・ショー・ネクストドア(The Show Next Door)」をデビューさせた。
「また、より多くのマーケティング担当者が、地域の店舗やオンラインの在庫状況を反映した広告をターゲットにしている」とロビンズ氏は説明する。ロクは今年、ターゲット設定、最適化、アトリビューションの改善も試みるという。
実際に各D2Cブランドは、2022年にはCTVへの投資をさらに増やすと述べている。フロイドのブラウン氏は、同社がこのチャネルが成長するにつれて優先順位を上げていくことを計画していると語る。「当社はTV広告の規模の拡大に伴い、これらのスポット広告を支援してくれる代理店と協力することになるだろう」。
[原文:Brands like Athletic Greens and Floyd are doubling down on connected TV]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)