ブランドが自社製品をAmazonで販売したいと思っていなくても、その製品がサードパーティセラーによって売られている可能性は非常に高い。このような独立系の小売業者(たいていブランドの正規販売代理店ではない)が現在、多くのブランドにとって頭痛の種になっている。
ブランドが自社製品をAmazonで販売したいと思っていなくても、その製品がサードパーティセラーによって売られている可能性は非常に高い。このような独立系の小売業者(たいていブランドの正規販売代理店ではない)が現在、多くのブランドにとって頭痛の種になっている。
報道によると、Amazonは2017年6月、自社の「フルフィルメント by Amazon(以下、FBA)」プログラムを通じて、膨大な数のサードパーティセラーと契約を交わしたという。その内容は、サードパーティセラーが抱えているブランド製品の在庫をAmazonが正規の価格で買い取り、自ら販売するというものだ。
ビルケンシュトックの抵抗
この動きに激怒したのが、サンダルブランドのビルケンシュトック(Birkenstock)でCEOを務めるデイビッド・カーハン氏だ。同氏はビルケンシュトックの販売代理店に対して書簡を送り、同ブランドのサンダルをたとえ1足でもAmazonに売ってはならないと警告した。
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「私は25年以上この業界にいるが、今回のAmazonのように、ある小売業者が別の小売業者から特定のブランドの在庫をこれほど大量かつ積極的に調達しようとした話は聞いたことがない。ブランドがそのような販売方法を望んでいないにもかかわらずだ」と、カーハン氏は記している。
だが、ビルケンシュトックの努力もむなしく、同社のサンダルはいまもAmazonで売られている。この状況は、Amazonで自社製品が販売されることを望んでいない多くのブランドにも当てはまる。Amazonは、ある製品の人気が高まると、卸業者やサードパーティセラーからその製品を調達する、と述べるのは、コンサルタント会社フランク・N・マジッド・アソシエーツ(Frank N. Magid Associates)の小売担当シニアバイスプレジデント、マット・サージェント氏だ。こうした状況でブランドが取りうる最適な選択肢は、Amazonと提携して自分たちのリスクを減らすことなのかもれない。
「Amazon問題は副産物」
巨大小売企業のAmazonが強引に我が道を進んでいる現状では、Amazonと提携しないリスクは大きい。自社ブランドの製品をAmazonで売っているサードパーティセラーが、質の悪い製品画像や誤った製品説明を載せていたとしても、Amazonと提携していなければ対処のしようがないからだ。そう指摘するのは、小売エージェンシーのマーケットプレイス・イグニション(Marketplace Ignition)の創設者、エリック・ヘラー氏と、Amazonサービシズ(Amazon Services)の責任者を務めたあと、現在はAmazonの顧客管理に関するコンサルティングを手がけるバイ・ボックス・エキスパーツ(Buy Box Experts)のパートナーであるジェイムズ・トムソン氏だ。
したがって、ブランドは少なくとも「Amazonブランド登録」に登録しておく必要がある。そうすれば、自社をAmazonで唯一のブランドオーナーとして登録し、すべての製品について正しい情報を提供できるようになる。したがって、製品の画像や説明の正確性が確保される、と両氏は指摘する。
ただし、ブランド登録には限界がある。
「Amazon問題の根本的背景には、ブランドの流通問題がある」と、トムソン氏はいう。「ほとんどの企業では、eコマースの責任者と実店舗の販売責任者が競い合っている。ブランドはそうした緊張のなかで、流通戦略全体を制御する必要がある。Amazonの問題はいわば副産物にすぎない」。
増加するサードパーティセラー
2017年前期には、Amazonが販売した製品個数の半分以上をサードパーティセラーが占めた。また、Amazonが2016年にサードパーティセラー向けサービスで上げた売上は230億ドル(約2.5兆円)近くに達し、前年の160億ドル(約1.7兆円)から増加したことが、スタティスタ(Statista)社の統計データからわかっている。
このようなサードパーティセラーは、Amazonマーケットプレイスに登録しており(メンバーは「セラーセントラル」というポータルを利用する)、FBAも利用できる。そしてほとんどのサードパーティセラーが、FBAを利用することを選ぶだろう。なぜなら、Amazonが自社に代わって発送業務を行ってくれるうえ、FBAのメンバーは最初から「プライム」マークを表示できるからだ(「プライム対象商品」として製品ページに表示されるほか、決済ページに「プライム」ロゴが表示される)とヘラー氏は説明する。
Amazonは、マーケットプレイスによって、品揃えを拡充しながら、マーチャンダイジングをアウトソースできる。一方、小規模な小売業者も、Amazonサイト上で注目を集められるようになる、とサージェント氏はいう。
頭を抱えるブランドたち
しかし、ブランドにとっては、Amazonマーケットプレイスは自社製品の流通管理を難しくする存在だ。たとえば、ナイキ(Nike)は6月、限られた種類の製品をAmazonで直接販売することを決定した。その理由は、サードパーティセラーがAmazonで同社の製品を販売しているからだ(なかにはコピー商品もある)。また、ヘアカラーブランドのマディソン・リード(Madison Reed)は、自社サイトのほか、QVC(24時間テレビショッピングを放送する専門チャンネル)、セフォラ(Sephora)、アルタ・ビューティー(Ulta Beauty)のみで自社製品を販売していたが、Amazonでも販売をはじめた。理由はやはり、サードパーティセラーの存在だ。
Amazonは、2016年に開始したブランド登録プログラムで、サードパーティセラーに対して一部有力ブランドの製品を販売することを禁止した。たとえば、マイクロソフト(Microsoft)やバーバリー(Burberry)といったブランドだ。だが、このプログラムに登録していないブランドは、いまでも非正規の販売代理店に悩まされている。
しかも、ブランドがサードパーティセラーから製品を試し買いし、彼らの倉庫がどこにあるのかを確認することはできない。サードパーティセラーがFBAを利用している場合、発送はAmazonが行うからだとトムソン氏はいう。
「ブランドがAmazonから逃れることはほぼ不可能だ。誰でもサードパーティセラーとして(Amazonに)アカウントを登録し、ブランドを装えるのだから」と、トムソン氏は指摘する。「ブランドが自社ストアだけで製品を販売していれば、流通を管理できるかもしれない。だが、製品が転売された場合はどうだろうか。セラーセントラルを利用すれば製品を転売できるし、専門の転売業者(正規の販売代理店以外から製品を大量に入手する業者)であれば、新しい『ベンダーエクスプレス』プログラムを利用できるのだ」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)