動画会社ミックマック(MikMak)の提供する「ショッパブルビデオ」サービス、「ミックマックアタッチ(MikMak Attach)」と呼ばれる新機能は、ブランドがソーシャルな動画視聴を直接販売に結びつけることを可能にする。ユーザーはインスタグラムやSnapchatを離れる必要がなくても商品購入できるようになる。
インスタグラムの「ストーリー(Story)」やSnapchat(スナップチャット)に、24時間で消えるコンテンツを投稿しているブランドは、エンゲージメントだけでなく販売の増加も期待できるようになった。
バーチボックス(Birchbox)やドクターブラント・スキンケア(Dr. Brandt Skincare)、ゴープロ(GoPro)、ビューティーブレンダー(Beautyblender)、シアモイスチャー(SheaMoisture)といったブランドが、動画会社ミックマック(MikMak)の提供する「ショッパブルビデオ」レイヤーを試験運用している。
これは、ユーザーがインスタグラムのストーリーやSnapchatのスナップアドに掲載されたブランド製品を手軽に購入できるようにするものだ。「ミックマックアタッチ(MikMak Attach)」と呼ばれるこの新機能は、ブランドがソーシャル動画を直接販売に結びつけることを可能にし、その際、ユーザーはインスタグラムやSnapchatを離脱する必要がない。
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なにしろ、ユーザーはただ、ストーリーやスナップ・アドを視聴後にスワイプするだけ。すると、すぐさまブランドが所有するeコマースサイトに直接つながり、ポップアップウィンドウが表示される。そこで、「カートに追加(Add to Cart)」をタップすると、アイテムはブランドが所有するeコマースサイトのカートに入るのだ。たとえ、セッションの途中で取引が終了しても、カートにはアイテムが残っているので、ユーザーは通常のWebで精算でき、ブランドはあらためてそのアイテムをユーザーに薦めることもできる。
求められるマネタイズ
ブランドや小売業者はソーシャルメディアへの投資を増やしているが、エンゲージメントはその成果を測定する指標のひとつでしかない。ブランドはマネタイズをますます重視するようになっている。
たとえば、バーチボックスとドクターブラント・スキンケアはどちらも、ストーリーに製品ページをリンクさせると同時に、ライク・トゥー・バイ(Like2Buy)やダッシュ・ハドソン(Dash Hudson)のような企業とも手を組んでいる。両社ともインスタグラムをハックして販売増加につなげるサービスを提供する企業だ。ミックマックが提供しているものは、ライク・トゥー・バイやダッシュ・ハドソンのものと同様、基本はハッキングであり、各ブランドはソーシャルメディア投稿の閲覧と実際の購買行動とのギャップを埋めるために、これらを活用している。
インスタグラム自体、2016年11月から、認証されたアカウントがストーリー内に製品ページへのリンクを挿入することを認めている。一方で、サードパーティーによるソリューションをまだ取り締まってはいない。プラットフォーム側がそれを執行すれば、ミックマックのようなビジネスはすぐに廃れてしまう。一方、各ブランドは、ミックマックアタッチに勝機を見出している。
直接販売が500%も増加
バーチボックスでソーシャルおよびコンテンツのシニアマネージャーを務めるローレライ・オルフェオ氏はこう語る。「動画コンテンツは、すべてのチャネルでコンバージョン率が上がっているので、我々もそこに多くの投資をしている。インスタグラムではストーリーにリンクを追加できるが、それでは、ユーザーを我々の製品ページへ誘導するうえでスムーズな体験にはならない。ミックマックアタッチはこうした取り組みを次のレベルに引き上げてくれる」。
ドクターブラント・スキンケアでは、ミックマックアタッチのベータテストを4月頭から実施しているが、ストーリーにミックマックアタッチを追加して10日で、インスタグラムからのコンバージョンによる直接販売が500%も増加したという。一方のバーチボックスは、4月半ばにストーリーにミックマックアタッチを追加したばかりで、最新のストーリーが投稿されたのは4月25日(米国時間)からだ。
ドクターブラント・スキンケアのデジタル担当バイスプレジデントであるリサ・ラギリ氏にとって、ミックマックアタッチはとても有用だ。ブランド側は過去の動画コンテンツを再利用して販売増加につなげられるので、日々の動画コンテンツの寿命が延びるうえに、コスト効率もよいからだ。おまけに、レイヤーはどんな長さの動画もホストできるので、時間制限もない。
「既存コンテンツを再利用できるところがなおさら面白いと思う。単なるマーケティング動画を、インタラクティブな体験に高められる」と、ラギリ氏は語る。
ミックマックのビジネス戦略
プラットフォーム側でも、ソーシャルコマースを優先課題にしつつある。インスタグラムは、2016年11月に20のブランドでテストを行ったあと、2017年3月に「ショップ・ナウ(Shop Now:今すぐ購入)」ボタン機能の拡充を発表した。ミックマックアタッチは、5月中はベータ版のままだという。
ミックマックの創設者でCEOのレイチェル・ティポグラフ氏は、次のように述べる。「この方程式のなかで、我々のアプリがトロイの木馬にはならないことがわかった。すべてをコントロールするのはプラットフォームだ。だから、我々が採るべき戦略は、どこにも依存しないパートナーとなることだ」。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via MikMakdotTV, 米DIGIDAY