アパレル業界全体で、各ブランドは新たな実店舗に資金を投入している。スイムウェアブランドのミノウ(Minnow)のような小規模D2Cブランドから、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)やパクサン(Pacsun)といったグローバルな大手ブランドまで、最近では多くの企業がニューヨークの5番街やモール・オブ・アメリカ(Mall of America)など、小売において主要な目的地となる場所に新店舗をオープンしたり、あるいは新規出店を発表している。
しかし、こうした出店が発表されているなかで、世界の小売市場は減速の兆しを見せている。中国の現状は?
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
アパレル業界全体で、各ブランドは新たな実店舗に資金を投入している。スイムウェアブランドのミノウ(Minnow)のような小規模D2Cブランドから、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)やパクサン(Pacsun)といったグローバルな大手ブランドまで、最近では多くの企業がニューヨークの5番街やモール・オブ・アメリカ(Mall of America)など、小売において主要な目的地となる場所に新店舗をオープンしたり、あるいは新規出店を発表している。
しかし、こうした出店が発表されているなかで、世界の小売市場は減速の兆しを見せている。中国では、広州で9.7%にまで上昇した空室率に対処するため、小売業の大家が割引を提供している。カナダでは、小売売上高が過去3カ月でわずか0.2%増と伸び悩んでおり、カナダ市場の全般的な停滞を示している。同様に、米商務省によると米国の6月の小売売上高の伸びは0.2%にとどまり、インフレによる支出の落ち込みが続いている。
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長期戦略を見越しての出店計画
では、なぜブランドはまだ新店舗に投資しているのだろうか? スイムウェアブランドのミノウの創業者モーガン・スミス氏によれば、世界の小売市場の小さな変動をあまりに気にしすぎることは、ブランドの長期戦略の邪魔になるという。ミノウはカリフォルニアに2店舗を構え、今年後半にはサウスカロライナ州チャールストンに3店舗目をオープンする予定だ。ミノウは2016年以来、資金調達やベンチャー企業の支援なしに92%D2Cビジネスで黒字経営を続けてきた。最初の2店舗は2020年と2023年にオープンし、すぐに利益を上げている。
スミス氏は、もう1店舗出すことはつねに頭にあったという。最初の2店舗は4カ月のポップアップとしてスタートし、維持できると確信してから常設店舗に移行した。チャールストンの3店舗目は、チャールストンがブランドの本拠地であることから、ポップアップから始めるのではなく、そのまま長期リースにする予定だ。スミス氏は、小売業の成長が鈍化しても、ブランドの小売戦略と予算があればもう1店舗を維持できると確信しているという。
「直感は重要で、この店舗は私たちにとって理にかなっている。すでにここにコミュニティを築いているからだ」とスミス氏。「2020年10月にミノウ1号店をオープンしたが、ちょうどCovidのまっただなかで、当社はまた別の厳しい時期を乗り越えてきた」。
小売売上高の鈍化によって、米国のすべての地域が等しく打撃を受けているわけではないことが救いだ。コリアーズ(Colliers)の6月のレポートによると、チャールストンの小売業は過去10年間で30%以上成長し、人気のキングストリートのショッピングエリアの空室率は四半期ごとに減少している。
オンラインにはない実店舗の利点
小売テック企業アケネオ(Akeneo)のチーフストラテジー・マーケティングオフィサー、クリスティン・ナラゴン氏によると、一部の大規模ブランドが店舗数を減らしている一方で (H&Mは昨年約300店舗を閉鎖した) 、小規模ブランドは顧客獲得のためだけであっても、実店舗での存在感を高めることで利益を得ることができる。
ナラゴン氏は「大きな話題になっている、買い物客にとって重要な『デジタルの棚』」についてこう語る。「だが、私たちの調査では、消費者がオンラインチャネルだけでなく対面でもブランドと交流していることが毎年確認されており、デジタルのみに限らないオムニチャネルの商品体験戦略の重要性が浮き彫りになっている。買い物客がいるあらゆる場所で製品のストーリーが紹介されていなければ、顧客に明言した顧客体験の約束を果たしていないことになる」。
6月に行われたアケネオの最近の調査によると、米国の消費者の84%が、店舗で購入する前にオンラインでリサーチすることを好んでいるとわかった。
ロフラーランドール(Loeffler Randall)もまた、今夏に実店舗をオープンしており、共同創業者のブライアン・マーフィー氏は7月初めにGlossyに対し、eコマースはそれ自体が頭痛の種であり、比較的単純な実店舗の方が魅力的だと語っている。
「何事にもコストがかかる」と同氏は述べた。「オンラインの方が安いと言いたいところだが、eコマースを適切に運営するには多くの費用が必要だ。Shopify(ショッピファイ)や(他のプラットフォームを)使えばすぐにできるが、うまくやろうと思えばかなりのコストがかかる。一方、実店舗はそれほど高価なものではないし、現時点ではそこで何をすべきかわかっている。強力な小売チームがあるので、それほどリスクはない」。
スミス氏も同様の意見だ。
「オンラインショッピングは、iOSのアップデートやFacebookの変更でいつでも変わる可能性がある」とスミス氏。「少なくとも店舗には、何年も変わらない実績のある戦略がある。出店にはとても時間がかかるので、景気に関する不穏なメッセージにあまり多くの注意を払う価値はない。開店する頃には景気がまた変わっているかもしれないから」。
[原文:Brands are still opening stores despite retail growth slowdowns]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)